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高品質なカーボン・クレジットを求めて

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誤解されやすい、カーボン・クレジット。適切に使用すれば、1.5℃目標も夢じゃない!正しい理解をお手伝いします。
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2022年11月の記事一覧

ビジネス界が注目すべき2つのレポート

今年のCOP27では、気候変動対策への取り組みに対するアカウンタビリティ確保が、特にビジネス界にとって重要なテーマとなったことは論を俟たないでしょう。 2週間の会期中に、数百の報告書が発表されましたが、その中でも、個人的に、ビジネス界が最も注目すべきと考える報告書を2つ紹介します。 1.の「HLEGレポート」は、グテーレス国連事務総長の要請を受け、カナダの元環境気候相キャサリン・マッケンナ主導で作成されたもので、「グリーンウォッシュを排除し、産業、金融、その他非国家主体が

ブルーカーボン活用のススメ

11月に入ってからは、気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)を追っかけておりました。エジプトはシナイ半島の南端に位置する、一大リゾート地「シャルム・アル・シェイク」にて、11月6日から2週間の予定で開催されていました。 当然のように会期は延長され、週末にもつれ込み、日曜日の未明にようやく合意に達しました。今回のCOP27は、ホスト国が温暖化の影響に脆弱なアフリカ開催ということもあって、特に気候災害の「損失と損害」への対応が焦点となり、「損失と損害」に関する新基金の

6条8項の議論

これまで、6条2項及び6条4項について、どんな議論がされる予定なのか、どんな議論が進んでいるのかをご案内してきました。 ですが、6条にはもう1つ、8項という条項があり、これもCOP27で議論される予定になっています。2項及び4項の陰に隠れて目立ちませんが、「非市場アプローチ」を規程するものです。 対となる「市場アプローチ」というのは、6条2項及び4項で扱っている「市場メカニズム」のことです。 CO2の削減・除去・吸収量という環境価値を「カーボン・クレジット」という金銭価

6条交渉の進捗状況

COPで気になる気になる〜はカーボン・クレジット。 開幕時にも、ご案内しておりました。 第2週は、大臣レベルが終結して交渉テキストを作成する段階に入ります。ですので、第1週最終日に予定されている補助機関会合の閉会プレナリーまでに、各項目の審議を終わらせる必要がありました。 その内容はもちろんクレジットだけでなく、緑の気候基金(GCF)や地球環境ファシリティ(GEF)、気候変動の悪影響に伴う損失損害資金制度(ロスダメ)などもあります。いやぁ、各国の交渉官の皆様大変ですねぇ。

カーボン・クレジット辞書の最高傑作?

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、2022年3月31日に非国家主体によるネット・ゼロエミッション誓約に関するハイレベル専門家グループ「High-Level Expert Group on the Net-Zero Emissions Commitments of Non-State Entities」を設立しました。 このグループは、企業、投資家、都市、地域などの非国家主体によるネット・ゼロ・エミッションの誓約について、より強力で明確な基準を策定し、その実施を加速するこ

Energy Transition Accelerator (ETA)

ケリー米国気候問題担当大統領特使、ロックフェラー財団及びベゾス・アース・ファンドが11/9、Energy Transition Accelerator (ETA)という仕組みを発表しました。話題になっているようで、プレスリリースを確認してみました。 1.5℃目標を達成し、世界中で発生している気候変動による極端現象を回避するためには、再生可能エネルギーに対する前例の無い規模の投資が必要であるとの認識の下、特に途上国におけるエネルギー転換を加速させるための民間投資を促進させるこ

パリ協定6条4項の議論内容は?

今回のCOPで着目している、カーボン・クレジット関係の議論。 何が決定されるべきかについては、UNFCCCが10月25日に発表した、非公式文書(決定用素案)に記載があります。 なお、「6条4項」とは「京都議定書におけるクリーン開発メカニズム(CDM) の後継版となる、新たな国連管理下のクレジット制度」について規定している条項です。 UNFCCCがパリ協定における「市場メカニズム」として正式に認め、自らが管理している「カーボン・クレジット」のことで、京都議定書の下ではCDM

COP27前のクレジット動向を確認(2)

COP27が始まって、メディアでもひととおりの報道が始まりました。 今回は、適応(Adaptation 7条)及び損失と損害(Lost & Damage 8条:通称ロスダメ)が主な論点であり、だからこそ、その議論の進め方に当たって、資金の出し手と受け手の間で意見の食い違いがあり、会議のスタートが遅れるといった、毎度おなじみの光景も見られました。 ですが、私の論点は「カーボン・クレジット」ですので、6条が本丸です。 何を決定すべきかについては、UNFCCCが10月25日に発

COP27前のクレジット動向を確認(1)

昨日から始まった、COP27。 仕事しながら、公式サイトでプレナリーのライブ映像をラジオ感覚で聴いていましたが、特筆すべき点は何も無し。(当たり前ですが) ただ、ベラルーシからの代表団が呼ばれたのに「ダレモイナイ」 「なかなかやるなぁ」 その前にウクライナが「ロシアが、全面的な戦争を仕掛けているため、排出量などの算定が難しくなっている。ウクライナ侵攻が気候変動対策での国際協力を貶めている。」と批判したので、さて、どう反論してくるのか、と期待したのですが。 閑話休題、実