見出し画像

ブルーカーボン活用のススメ

11月に入ってからは、気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)を追っかけておりました。エジプトはシナイ半島の南端に位置する、一大リゾート地「シャルム・アル・シェイク」にて、11月6日から2週間の予定で開催されていました。

当然のように会期は延長され、週末にもつれ込み、日曜日の未明にようやく合意に達しました。今回のCOP27は、ホスト国が温暖化の影響に脆弱なアフリカ開催ということもあって、特に気候災害の「損失と損害」への対応が焦点となり、「損失と損害」に関する新基金の設立が決まりました。

これはこれで、エポックメイキングではあるものの、COP26で長期目標を事実上1.5度に強化したことや石炭火力の段階的削減に合意したことなどをさらに進展させる決定は無く、緩和に関してはグラスゴー合意を上回る決定は無かったことは報道されているとおり。

私の方は、市場メカニズム、具体的には、6条2項で取り扱う「ITMOs(6条4項で取り扱う国連管理以外のクレジット)」、6条4項で取り扱う「CER(京都議定書の下でのクレジット)」「6.4ERs(パリ協定の下でのクレジット)」及び「ブルーカーボン」を中心に情報収集しておりました。

6条2項及び6条4項については、ボリュームがありますので別途報告しますので、今回はブルーに絞ってご案内していきます。


シャルム・アル・シェイク会議では、気候変動枠組条約締約国会議であるCOPの下に、京都議定書及びパリ協定について話し合う会議(CMP及びCMA)も開催されており、成果文書も、それぞれ公開されています。

その中で、ブルーカーボンについては、COPの決定文書「Sharm el-Sheikh Implementation Plan」において、「13 海洋」というセクションに関係する記述がありました。

パラグラフ45
2022年の海洋と気候変動に関する対話の成果および主要メッセージを歓迎する。また、将来の対話を2023 年から開始することとし、締約国が隔年で選出する 2 人の共同進行役が、締約国およびオブザーバーと協議して対話のテーマを決定し実施し、非公式な要約報告書を作成。その後の締約国会議に併せて提示する責任を有すると決定した。

パラグラフ46
締約国に対し、国別気候目標及びその実施において、海洋を利用した行動を適切な形で検討するよう奨励する(国別貢献、長期戦略、適応コミュニケーションなどを含むがこれらに限定されない)。

Sharm el-Sheikh Implementation Plan XⅢ Ocean

このうち、パラ46の「海洋を利用した行動」に含まれると考えます。

ブルーカーボンを、国別削減目標(NDCs)に活用していくことが「国別貢献」であり「長期戦略」、ブルーカーボンを生み出すプロジェクトにより地球環境の劣化を防止すると共に生活環境を改善することが「適応コミュニケーション」ではないでしょうか。

その取組をテーマとして採り上げ、COPに報告していくことをパラ45は企図している、と考えたいですね。

国内では、令和3年度から「Jブルークレジット」が試行的に実施されていますが、令和4年度は18件が新たに登録され、21のプロジェクトに対してクレジットが認証されました。

実施したいと希望している事業者は多く、他方、購入希望企業も多いことから、来年度は、さらに登録数が延びるものと思われます。

令和4年度(2022年度)Jブルークレジット認証について【速報】

このように、徐々に国内で認知が進んでいるブルーですが、世界はさらに進展しています。それを加速させるものとして、「High-Quality Blue Carbon Principles and Guidance」というフレームワークが、COP期間中の11月8日に発表されました。

このフレームワークは、以下の団体による共同作業で開発されたとのこと。

・Salesforce
・Conservation International
・The Nature Conservancy
・the Ocean Risk and Resilience Action Alliance (ORRAA)
・Friends of Ocean Action/Ocean Action Agenda at WEF
・the Meridian Institute

「高品質なブルーカーボン・プロジェクトやクレジットの開発・購入の指針となる、これまでにないブルーカーボン・フレームワーク」だそうです。

この中には、5つの原則が示されています。
これらは、等しく重要で、優先順位は無いとのこと。

・Safeguard nature
・Empower people
・Employ the best information and carbon accounting principles
・Operate contextually and locally
・Mobilize high integrity capital

High-Quality Blue Carbon Principles and Guidance より

コアとなる便益(=海域の環境保全)と併せて、副次的な便益(=コベネフィット:生活環境の改善、住民のエンパワーメント)を重視したプロジェクトを実施すべき、というメッセージに見えますね。

ブルーカーボンは、東南アジアが積極的であり、来年のCOP28開催国であるUAEも強力に推進していくスタンスと聞いています。

やっぱり、日本は、世界が決めたルールに粛々としたがって行かざるを得ないのか。そんなことが頭をよぎるかもしれませんが、まだ大丈夫です。

世界においては、ブルーを生み出すプロジェクトと言えば「マングローブ」一色だそうです。他方、Jブルークレジットは、海藻・海草及び藻場の生成が主流。確かに量的には劣りますが、「多様性」では負けていません。

誰もが参加できる取組とするためには、様々な方法論があるべきです。
それらの発掘に、これから邁進していきたいと思っています。

興味、関心のある事業者の皆様。
購入、活用を検討したい企業の皆様

是非とも、お声かけください。
一緒に、海から日本を活性化していきましょう。

もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。