空耳図書館だより「図書みくじ」第2弾 2022年3月11日に寄せて
先週の3月11日は1月の新春企画に続き、空耳図書館・図書みくじの第二弾を開催しました。空耳図書館の専用FBではメンバー6名が選んだ一冊を「抜粋一文」と共に掲載していますので、どうぞおみくじを引くようにお楽しみください。
今回は「希望」をテーマに推薦図書をご紹介しています。個人的にはまだ昨日のことのようですが、東日本大震災から11年が経ちました。10年目になる昨年はメンバーと共に宮沢賢治『春と修羅 序~私といふ現象は』(助成:文化庁文化芸術活動の継続支援事業:ササマユウコの音楽活動)を映像でお届けしました。疫病と関東大震災の時代を生きた宮沢賢治の言葉から、今の時代を考えるような時間でした。
今回はページの中から「希望」の一文を探す中で希望とは何かを考え、他のメンバーが見つけた一文からは様々な対話が生まれていきました。いわゆる「希望」とは、約束された前途洋洋の明るい未来などではなく、自らの内外で生じるさまざまな想定外との向き合い方、その柔らかな思考や発想の転換に他ならないのだろうと思います。芸術が与えてくれる希望もある。いや芸術こそ希望だと、言い換えてもいいのかもしれません。どんな本の中にも(その気になれば)希望の一文を見つけ出すことができるように、本を人生に置き換えて考えてみてはいかがでしょうか。
空耳図書館では引きつづき、「空耳図書館のはるやすみ2022」として中原中也「サーカス」の映像版をYoutubeチャンネル『空耳図書館のおんがくしつ』にて、3月21日(月)正午・春分の日にお届けします。
中原中也は奇しくも宮沢賢治が生前に唯一残した詩集『春と修羅』を神田の古書街で見つけ愛読していました。そして自らも生前に一冊の『山羊の歌』という詩集を残しています。その詩集に収められたこの『サーカス』は、特に『春と修羅』の「原体剣舞連」に影響を受けたと言われています。岩手と山口、共に30代で肺を患い夭折した孤高のダダイスト/詩人たちが当時出会うことはありませんでした。ふたりが出会っていたら?と夢想することもありますが、時代に早すぎた感性が必然のように響き合っていくオンガクのような詩の力を感じます。何より、彼らがこの世を去った後もこの2冊の詩集は疫病・震災・戦争を体験した激動の20世紀を生き抜き、あらたな震災・疫病、そして海の向こうの戦争の時代を生きる100年後の私たちに届いている。
これこそが「希望」だと思うのです。
〇空耳図書館メンバー(50音順)
新井英夫(野口体操、身体表現(体奏))、石橋鼓太郎(音楽人類学)、板坂記代子(布・手仕事、身体表現)、小日山拓也(美術、手作り楽器)、ササマユウコ(サウンドスケープ)、三宅博子(音楽療法)
〇空耳図書館ディレクター:ササマユウコ
ワークショップ等のお問合せ soramimi.work@gmail.com
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