マンション標準管理規約 第15条(駐車場の使用)

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条文

(駐車場の使用)
第15条 管理組合は、別添の図に示す駐車場について、特定の区分所有者に駐車場使用契約により使用させることができる。
2 前項により駐車場を使用している者は、別に定めるところにより、管理組合に駐車場使用料を納入しなければならない。
3 区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う。

コメント

第15条関係
① 本条は、マンションの住戸の数に比べて駐車場の収容台数が不足しており、駐車場の利用希望者(空き待ち)が多い場合を前提としている。
  近時、駐車場の需要が減少しており、空き区画が生じているケースもある。駐車場収入は駐車場の管理に要する費用に充てられるほか、修繕積立金として積み立てられるため(第29条)、修繕積立金不足への対策等の観点から組合員以外の者に使用料を徴収して使用させることも考えられる。その場合、税務上、全てが収益事業として課税されるケースもあるが、区分所有者を優先する条件を設定している等のケースでは、外部貸しのみが課税対象となり区分所有者が支払う使用料は共済事業として非課税 とする旨の国税庁の見解(「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について(照会)」(平成24年2月3日国住マ第43号)及びこれに対する回答(平成24年2月13日))が公表されているため、参照されたい。
② ここで駐車場と同様に扱うべきものとしては、倉庫等がある。
③ 本条の規定のほか、使用者の選定方法をはじめとした具体的な手続、使用者の遵守すべき事項等駐車場の使用に関する事項の詳細については、 「駐車場使用細則」を別途定めるものとする。また、駐車場使用契約の内容(契約書の様式)についても駐車場使用細則に位置付け、あらかじめ総会で合意を得ておくことが望ましい。
④ 駐車場使用契約は、次のひな型を参考とする。

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     駐車場使用契約書

 ○○マンション管理組合(以下「甲」という。)は、○○マンションの区分所有者である○○(以下「乙」という。)と、○○マンションの駐車場のうち別添の図に示す○○の部分につき駐車場使用契約を締結する。当該部分の使用に当たっては、乙は下記の事項を遵守するものとし、これに違反した場合には、甲はこの契約を解除することができる。
        記
1 契約期間は、平成 年 月 日から平成 年 月 日までとする。ただし、乙がその所有する専有部分を他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、本契約は効力を失う。
2 月額○○円の駐車場使用料を前月の○日までに甲に納入しなければならない。
3 別に定める駐車場使用細則を遵守しなければならない。
4 当該駐車場に常時駐車する車両の所有者、車両番号及び車種をあらかじめ甲に届け出るものとする。
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⑤ 第3項は、家主同居型の住宅宿泊事業を実施する場合は、対象としていないと考えられる。
⑥ 車両の保管責任については、管理組合が負わない旨を駐車場使用契約又 は駐車場使用細則に規定することが望ましい。
⑦ 駐車場使用細則、駐車場使用契約等に、管理費、修繕積立金の滞納等の規約違反の場合は、契約を解除できるか又は次回の選定時の参加資格をはく奪することができる旨の規定を定めることもできる。
⑧ 駐車場使用者の選定は、最初に使用者を選定する場合には抽選、2回目以降の場合には抽選又は申込順にする等、公平な方法により行うものとする。
 また、マンションの状況等によっては、契約期間終了時に入れ替えると いう方法又は契約の更新を認めるという方法等について定めることも可能 である。例えば、駐車場使用契約に使用期間を設け、期間終了時に公平な方法により入替えを行うこと(定期的な入替え制)が考えられる。
 なお、駐車場が全戸分ある場合であっても、平置きか機械式か、屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等により利便性・機能性に差異が あるような場合には、マンションの具体的な事情に鑑みて、上述の方法に よる入替えを行うことも考えられる。
 駐車場の入替えの実施に当たっては、実施の日時に、各区分所有者が都 合を合わせることが必要であるが、それが困難なため実施が難しいという 場合については、外部の駐車場等に車を移動させておく等の対策が考えら れる。
⑨ 駐車場が全戸分ない場合等には、駐車場使用料を近傍の同種の駐車場料金と均衡を失しないよう設定すること等により、区分所有者間の公平を確保することが必要である。なお、近傍の同種の駐車場料金との均衡については、利便性の差異も加味して考えることが必要である。
 また、平置きか機械式か、屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等による利便性・機能性の差異や、使用料が高額になっても特定の位置の駐車場区画を希望する者がいる等の状況に応じて、柔軟な料金設定を行うことも考えられる。

解説

 平成9年に改訂されるまでの中高層共同住宅標準管理規約だと、この条文は「管理組合が特定の区分所有者に対し駐車場使用契約により専用使用権を設定することを承認する。」となっている。分譲時に専用使用権の分譲販売がされていない限り、駐車場に専用使用権という言葉を使うと、専用使用権を解除することができなくなる可能性もある。専用使用権を分譲した場合はその専用使用権を解除するためには使用権者の同意が必要(判例参照)。

 コメント⑤の「いわゆる家主同居型の住宅宿泊事業」に関しては標準管理規約第12条を参照。

参照条文等

標準管理規約 第29条(使用料)
 駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
標準管理規約 コメント第12条関係
いわゆる家主同居型のみ可能とする場合の例
(略)
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合に限る。)に使用することができる。
平成10年11月20日最高裁(抜粋)
被上告人が南西側駐車場の専用使用権を消滅させられることにより受ける不利益は、その受忍すべき限度を超えるものと認めるべきである。したがって、消滅決議は被上告人の専用使用権に「特別の影響」を及ぼすものであって被上告人の承諾のないままにされた消滅決議はその効力を有しない。



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