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2023年8月の記事一覧

垂れり

鼻水が垂れり タラリと垂れり
鼻水をすすり ズズリとすすり
とめどなく かぎりなく
鼻水は垂れり タラリ ズズリ

行方をおもった

枯葉の行方をおもうように、はなれた言葉の行方をおもった。
真っ暗な眠りの中に潜り込めば、なぜだか自由に光が射して、それだけ追えば良かったのだけれど。
勇気を持って目をさます。何もわからず先を行く私のあとを追うように。

潮時

潮目が点滅を始めると慌てて泡を吹き始めた
さすがに潮時だろう
横縞な安全地帯を蟹が両手を掲げ渡って行く
彼らにとっての夜がようやく白々しく明ける

ぽつん

お祭りみたいなこの街に
ぽつんと落ちた
ぽつんといるよ

木漏れ日を螺旋状に掃き寄せる
雨粒みたいなひとしずく

靄がかかったこの街に
ぽつんと落ちた
ぽつんといるよ

碌でなし(子音母音分離重ね合わせ実験)ショートバージョン(動画)

※繰り返しの音などに不安を感じやすい傾向がある方は長時間連続して聴かないようにして下さい。
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声:VOICEVOX:冥鳴ひまり→https://voicevox.hiroshiba.jp
編集:こんちくけ→https://note.com/conchiqueke/all


言葉の子音と母音を分離し少しずら
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こんにちは、私 3

過去の誰かに私は生まれ変わり続ける
つまりこの世界の全ての誰かはかつての私だ

かつて大統領だった私が命令し
かつて兵士だった私が爆弾を投下した
そうしてかつて赤ん坊だった私が焼け死んだ

私だった妻が子を生んだ
こんにちは、私

湖に捨てに行く

抜け殻を食べる
空を掻きむしる
痩せ細った私を
湖に捨てに行く

水が跳ねるとどうだろう
きっと私は困るだろう
何も嬉しくないだろう

マヨネーズを啜る
空になすり付ける
肥え太った私を
湖に捨てに行く

丸木舟のような遺体が流れて行く
どうしようもなく移り変わる季節のように
損も得もなく揺れる
こちらではひとごとの様に人が溺れている
やがて魚の身に変わり沈む
所有された魚は干物になるけれど
噛み締められて湿った人に戻る
ひとつと、ひとつ
幸福な組み合わせを見つけた魚たちだけが
次の橋を渡る