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「権利について考える」 ということ。

代表理事の井上です。

2022年度の開校に向けて準備を進めているヒロック初等科設立準備チームの皆様の、スクール憲法草案プロジェクトにオブザーバー参加をしました。


哲学研究家の桐田敬介さんから、ドイツの哲学者 ハンナ・アーレントの「革命とは、憲法をつくることだ」という思想や、アメリカとフランスにおける革命の違い、憲法は共に作るもの「Constitution」ということ、権利と自由についてなど、深いインプットをいただき、「学ぶって楽しいなぁ。」と新鮮な気持ちで参加させていただきました。

オブザーバー参加とは言え、フィードバックとして発言も求められており、多様なフィールドでの教育実践者の皆様と話し合う時間も、尊重し合いながらも鋭い指摘やアドバイスが惜しみなくその場に提供される、濃い時間だったと思います。

さて、自由や権利を守るためのスクール憲法草案づくりということでしたが、今回は大人たちだけで話し合われていたこともあり、子どもたちは権利についてどう考えるのだろう、ということが何より気になりました。

そこで早速、Co-musubiの小学5〜6年生のグループと、中学生のグループで、「10歳から読める・わかる いちばんやさしい 日本国憲法」なども参考にしながら、「権利」や「こども権利条約」などについて簡単に確認した後、もし自分たちで「こども権利条約」をつくるとしたら、何を盛り込みたいかを彼らだけの力で話しあってもらいました。


中学生たちは、権利を話し合う中で、憲法や権利などしっかり学校で学ぶ必要性を感じていました。
そして最後には、「とはいえ、学校に期待しても今は変わらないから、自分で学びはじめようと思った。」と、他人頼りにしない姿勢に、明るい未来を感じました。

小学生たちは、4週間をかけて少しずつ話し合いを進めていったのですが、当初は自分に関する権利について視点があったところから、徐々に自分以外の子どもたちへ、そして国内外の厳しい環境にある子どもたちへ視点が移っていきました。
なにか違いによって差別が生まれないように、誰一人取り残されない基本的な人権が守られる生活が送れるように、と真剣に話し合う中で「生きることが幸せって感じる権利」があったらいい、という発言までみんなで力を合わせ届いていました。
子ども達の想いに、深い優しさと清らかさを感じました。
特にこの発言をした子は、「厳しい状況にある子どもたちのことを考え、胸が痛んだ。」と話してくれました。
それほどまでに真剣に考えた子どもたちのこのプロセスを、我々大人も大切に考えたいと心に刻みました。

今回、彼らの話し合いを通じて、特に2つ大きく気づいたことがあります。

1つ目は、「権利を話し合うと、すでにあるものに近づいていく。」ということ。
これは、中学生たちの話し合いで気づいたのですが、誰かが決めたルールという認識のうちはどこか他人事に感じていたものが、自分たちで決めようと向き合う中で納得が生まれ自分事となる。
結果としては、並んだ言葉はすでにあるところに近づいたり戻っていくもの。
憲法というものは、時が経ってその時代の人々の心から離れてしまい、もう一度話し合おうとした時に、結果として近づく、または戻っていく様な普遍的なものである必要があるのだ、という気づきを得ました。


もう一つは、「権利を話し合うことで、心が救われる」ということ。
小学生たちの話し合いの中で、ある子が、学校で友達が複数人から「あること」でからかわれ、その後に学校に来ることが難しくなったことから、「からかわれない権利」が必要だと思う、と発言しました。
するとその日の最後に、他の子がその子に対し、「僕も同じことでからかわれたことがあったから、今日、気持ちが軽くなりました。ありがとう。」と笑顔でお礼を伝えていました。

権利を話し合うことは、子どもたちがどこかで傷ついた心を癒やし、君の権利を大切にしていいんだよ、と勇気づけられる機会になるのだと実感しました。

このできごとで、「権利の話し合いをし続けてよかった。」と、心から思いました。

彼らはきっとこの先、自分も他者もどちらの権利も大切にしながら、きちんと言うべきことは言い、やる権利もやらない権利も選び、困難にある人には寄り添おうとするだろう、と感じました。

さてさて、子どもたちからは「もっと権利について話し合い続けたい。大人の人も混ざって一緒に話し合いたい。」とお願いがあったので、もし「子どもたちと一緒に真剣に話し合いたい!」(教えてやろうではなく、フラットな姿勢で)と思ってくださる方はご連絡ください。


長くなりましたが、中学生たちの「権利」についての話し合いを、以下にざっくり書き出しましたので、よかったらご覧ください。

最後までお読みくださり、ありがとうござました。


【中学生たちの話し合い】

・現状、子どもの権利が実質的に低い気がする。けれど、大人と子どもの権利を対等にしたら問題が起きる気がする。大人、こども、それぞれの良さを生かした権利条約を作ればいいんじゃないか。

・子どもも大人もそれぞれを尊重した権利条約をつくるなら、子どもも権利や憲法の基礎を学ぶ必要があると思う。

・子どもが権利を学ぶ権利を条約に入れたほうがいい。

・確かにわかっているようでわかっていないので、権利を学ぶことに加え、憲法や法律もこどもの頃からもっと学んだほうがいいと思う。

・上記の案は、すでにそうしてきただろうけれど守られていない現状があるから、どうしたら決めたことをみんなで守られるかを考えないと、これ以上社会は変わらない気がした。

・誰でも自由に服を選び着れる権利があるのに、今の学校の制服はそれに反しているので、もっと考慮すべきだと思う。

・時代によって変わるものもあると思うので、僕たちはまだ子どもだけれど、大人になっていくにつれて内容を決めていく側になっていくので、僕たちが子ども時代に必要だと思うことを大人になって入れようとしても、その時代の子どもたちが違うことを必要としているかもしれないから、いつの時代も子どもに憲法や権利を知ってもらうのが大事だと思う。

・子どもが未来を担っていくために学びは必須だけれど、学ぶことに制服があるかないかはなんにも関係ないから、制服はいらないと思う。

・憲法や法律、権利などの勉強をもっと深く学べるような授業にしたほうがいいと思う。

・他者の意見を聞いて変わることがあるので、自分だけでこの世界にいるわけじゃないから、他の人に出会いいろいろな人の意見を聞いてルールなどをつくる機会が必要だと思う。

・学校の授業は理解度に差が出る。学校はその差を放置している。「あとは自分でやってくださいね」と放任する。学ぶ権利はみんなにあるんだから、一人では限界があるから、大人の助言が必要な子に配慮する必要があると思う。

・可能ならば、すべての権利や憲法などを明文化し直した方が良いのではないか。時がたつにつれて人々の中で緩んでいく。

・知識を得る、他者の意見を聴く、体験から学ぶこと、こうやって肉付けしながら学び考えることが大切なので、このように対話をしながら学ぶ権利が大切なのではないか。

・人権侵害にあたる行為は、先生でも保護者でも犯してはいけないと明文化し、全員が認識すべきだと思う。

・意見を交換しあえるよう、人が集まり出会える権利をつくるといいと思う。


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【感想】

・権利を考えることは難しいと思った。

・今回は子どもの権利を考えたが、対象を絞られても、どこから話していいのかわからなくて、最初に切り出せたTくんがすごいと思った。
自分が思ったことをいざ話そうと思うと、自分はどもってしまうんだ、ということに気づけたことも学びだった。
気づけたってことは、これからは意識できるなって思った。


・学校で知識を学ばされて、そういうものなんだな、面倒だなと思うけれど、本質的な意味を理解することで、そのことを学んでいる意味や学ぶことによって起こることがわかるから学びたいと思えるので、このように本質的な意味を理解する経験は大事。
自分だけで学ぶと狭い視野になるけれど、多様な環境の人と話すことで、その人の状況を知ろうとできるし、他の人の意見も取り入れることができるから、いろいろな人と話し合いながら学んでいくって大事だなと思った。


・これからの社会を担う僕たちの世代が、権利についてもっとわからなくてはいけないので、願いとしては学校の授業を増やしてほしいけれど、そんなことを言っても変わらないから、自分で少しずつ学んでいこうと思った。

・授業のように、権利をただ知るだけだとつまらないと思う人のほうが多い。
自分がこうしたほうがいいと思うことを世の中に反映できたら、すごいし面白いことだと思うので、教えるだけの授業じゃなく、自分たちで考えることが大事。
教育を受ける権利は勉強することだけを指していないはず。
僕は将来教師になりたいんですが、権利や憲法を「教える立場」ではなく「一緒に考える教師」になりたいと思いました。



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