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【初心者向け】校正と校閲を学ぶ

こんにちは、コミュカル Mitzです。
コミュカルでは常に20以上の企業からコミュニティ企画推進の仕事を受けており、趣味系からビジネス系まで様々コミュニティに関わっています。
コミュニティには「メンバー同士の交流が目的」「情報収集が目的」「情報のアウトプットが目的」など様々な種類があります。
そんなコミュニティの中でも「情報のアウトプットが目的」の場合、アウトプットを行いたいメンバー同士が協力し合って書籍を作るという活動が盛り上がることもあります。

書籍を作るには様々な工程がありますが、今回はその中から「校正と校閲」について簡単に解説します。
(注意)私たちはコミュニティ形成の専門家ですが、書籍作成の専門家ではありません。ですので、「コミュニティメンバーで実施している執筆作業」というレベルが前提となりますのでご容赦ください。

参考までに、私たちがコミュニティ活動として書籍を出しているのは、IT業界のエンジニアやコミュニティが多く集まる技術書典です。

こんな方におすすめの記事です

  • 校正について知りたい初心者

  • 校閲について知りたい初心者


1.校正と校閲について

校正、校閲、どちらも「なんか聞いたことがある」という程度の人がほとんどかと思います。どちらも文書やテキストの品質を向上させるための重要なプロセスで、文章の誤りや不正確さを特定し、修正することを目的としています。ですが、校正と校閲では目的やアプローチが明確に異なります。

校正とは表記の誤りを正すプロセスです。
主な目的は、文章(表面上)が読者に対して読みやすさを実現し、文章自体の流れを向上させること。
・誤った文字や表記を修正する
・誤った文法を修正する
・文章のスタイルを整える
などです。

校閲とは内容の誤りを正すプロセスです。
主な目的は、文章(内容)が読者に対して正確な情報を明確に伝え、論理的な流れを持つことを確保すること。
・文章やテキストの論理的な整合性の確認
・コンテキスト(文脈、前後関係、背景、状況)の確認
・数値や事例等の正確性や事実確認
などです。

校正と校閲について要約すると
校正は文章の形式的な誤りを修正し、文章を読みやすく整えるプロセスであり、主に単語・文法・スタイルに焦点を当てています。
校閲は文章の内容と論理を確認し、正確さと理解可能性を向上させるプロセスであり、主にコンテンツの品質に焦点を当てています。

2.校正でやること

わたしたちが校正プロセスを実施する際に確認しているのは10項目です。

こちらについて簡単に解説します。

①誤字脱字

誤って入った文字や、本来入るべき文字が抜けているかを確認します。
- 誤字の例 -
誤った例:疲れているなら、早く帰りほうがいい。
正しい例:疲れているなら、早く帰ったほうがいい。
- 脱字の例 -
誤った例:書籍をお買い上げいたくと特典が付きます。
正しい例:書籍をお買い上げいただくと特典が付きます

②スペルミス

誤った綴りの単語や文字が含まれているかを確認します。
- スペルミスの例 -
誤った例:recieve したメッセージに返信します。
正しい例:receive したメッセージに返信します。
- 複数系の例 -
誤った例:I have two car
正しい例:I have two cars

③表記ゆれ

同じ単語やフレーズが文書内で異なる方法で表記されているかどうかを確認します。
- 表記ゆれの例 -
「サーバー」と「サーバ」
「5個と「五個」
「支払い」と「支払」

④文末表現

各文の終わりの表現が適切で、読み手に明確な情報を提供しているかどうかを確認します。
- 疑問を表した文章の文末例 -
「でしょう」「だろう」などの表現
- 断定する文章の文末例 -
「です」「ます」「だ・である」などの表現

⑤不要な繰り返し(重複)

同じ情報やアイディアが不必要に繰り返されていないかどうかを確認します。
- 同じ情報の繰り返し例 -
誤った例:新しいスマートフォンは高性能です。この新しいデバイスの性能は優れています。
正しい例:新しいスマートフォンは高性能です。
- 同じ形容詞の繰り返し -
誤った例:彼は親切で思いやりがある人です。その彼の思いやりがある性格は、多くの人に感銘を与えます。
正しい例:彼は親切で思いやりがある人です。その彼の性格は多くの人に感銘を与えます。

⑥年月日や年度の表記

書き手側の時点からみた相対的な表記にするのか、読み手側(異なる時点)でもわかりやすい絶対的な表記にするのかを確認します。
- 書き手側視点での表記例 -
「今月」「今年」「来年」
- 読み手側視点での表記例 -
「今月(2023年9月)」「2023年」「来年(2024年)」

⑦てにをは

語句と語句との関係が正しく伝えたい表現になっているかを確認します。
- てにをはの例 -
A.この書籍「が」いい
B.この書籍「で」いい
A.この書籍「が」ランキング1位です
B.この書籍「は」ランキング1位です
A.ぼく「は」執筆を開始した
B.ぼく「も」執筆を開始した

⑧句読点

句読点は文章の構造や意味を明確にするのに重要な要素です。正しい句読点の使用かを確認します。
読点 、 句点 。 疑問符 ? 感嘆符 ! 引用符 「」『』省略符 … など
- 読点のポイント -
・長い主語や目的語のあと
・「で」のあと
・読点を打たないと、文章の意味が変わってしまったり誤解されるとき
・文章の切れ目をはっきりさせたいとき
・文章と次の文章で対比や比較となるとき
- 句点は必ず文末に -
誤った例:近頃、書籍執筆はとても良い経験になる。と言われている。
正しい例:近頃「書籍執筆はとても良い経験になる」と言われている。
正しい例:近頃、書籍執筆はとても良い経験になる、と言われている。
- その他 -
セリフは「カギ括弧」
強調は”ダブルクォーテーション”

⑨ひらく(ひらがな表記)

ひらくとは、校正の用語で漢字をひらがなにすることです。漢字が多い文章は読みにくく、また固い印象にもつながります。漢字が存在していたとしても、手書きで文章を書く場合に意識せずひらがなで書くような単語や形容詞は執筆する文章においてもひらがなにすることが多いです。
- ひらく例(副詞 ※形容詞・形容動詞・動詞など) -
頂く ⇒ いただく
極めて ⇒ きわめて
更に ⇒ さらに
是非 ⇒ ぜひ
出来る ⇒ できる
何故 ⇒ なぜ
- ひらく例(接続詞) -
従って ⇒ したがって
尚 ⇒ なお
または ⇒ または

その他にも、補助動詞(~していく)、形容名詞(~するとき)、連体詞(いろいろな)なども同様です。
また、「たくさん」「なかなか」など、ひらがなで表記するのが一般的な語も数多く存在します。

⑩全角半角

テキスト内の文字の幅が全角(2バイト文字)か半角(1バイト文字)かどうかを確認します。
書籍内、文章内で統一させるなど、正しい文字幅の使用は、日本語のテキストにおいて見栄えや一貫性に影響を与えるといわれています。
数字・記号カタカナ・アルファベットについて確認しましょう。

3.校閲でやること

わたしたちが校閲プロセスを実施する際に確認しているのは6項目です。

こちらについても簡単に解説します。

①企業名、製品名、固有名詞、省略語

名称関連は誤ると信用度を損なってしまう可能性もあります。
前株なのか後株なのか、スペースが入るのか、先頭は大文字なのか小文字なのか、ピリオドありなしなど、必ず公式webページ等で最新情報を検索して確認しましょう。

②数値・単位・式・コード

各種数値やコードは読み手側が参考値・参考情報として使用することもあるため、非常に重要度の高い項目です。
プログラミングなどのコードは正しく動作するものなのか?参考情報として出した金額や売上高は正確なのか、速度の単位はキロなのかマイルなのか、表記した失業率は最新のものなのかなど、こちらも必ず最新情報から正確な値の引用や、事実確認を行いましょう。

③差別表現、特定への否定、LGBTQ

これらは近頃(2023年時点)の時代背景にあわせて意識が求められている項目です。誤った表記や誤解を招く表記がきっかけに炎上してしまう可能性もあるため、しっかり理解したうえでの確認が求められます。
人種、性別、宗教、性的指向、身体的能力などの属性に対する差別的な表記はないか、特定の個人やグループを否定的に表現していないか、性的指向や性自認に関連する用語について、誤解や偏見を招く表記になっていないかなどを確認しましょう。

④同音異義語

同じ発音を持つが異なる意味や用法を持つ単語やフレーズの確認です。誤った単語を設定してしまうと文章自体が誤った内容になってしまう場合もあります。
- 例 -
改定 / 改訂
回答 / 解答
開放 / 解放
最小 / 最少
春期 / 春季
制作 / 製作

⑤慣用句

慣用句とは、2つ以上の単語の組み合わせで、特定の意味を持つ1つの表現となる言葉のことをいいます。間違った単語を使ってしまう場合と、本来と意味を間違って使用してしまう場合があります。
- 間違った単語の例 -
誤:嗜好を凝らす
正:趣向を凝らす
誤:取り付く暇がない
正:取り付く島がない
- 意味を間違う例 -
割愛するの意味
誤:不要なものを省略する
正:惜しいと思うものを手放す
※自身の自己紹介を省くのは「省略」、人の紹介を省くのは「割愛」

⑥矛盾点

文書内の矛盾や不整合を特定し、修正する作業です。矛盾点が文書内に存在すると、読み手側の混乱を招き、文書の信頼性を低下させる可能性があります。
情報同士の整合性
文書内の情報が整合しているかどうかを確認します。
例)同一の対象への説明で、かたや「最新機種」と表記し、別の個所では「10年前の機種」と表記
論理的な一貫性
文書内の論理的な流れや論証が一貫しているかどうかを確認します。
例)温暖化の影響はほとんどないとされています。しかし、極端な気象変化が増加して世界中に影響を与えています。
時間軸の整合性
文書内の時間の流れや順序に関連する情報が矛盾していないか確認します。
例)2021年、書籍に関する新しい法律が導入。そして2023年現在、書籍に関する法律は議論中です。
数値や統計の一致
数値や統計データが文書内で一致しているかどうかを確認します。
例)2021年書籍売上高は150ドル、2022年書籍売上高は300ドル、累計売上高は250ドルです。

以上が、私たちの実施している校正チェックと校閲チェックです。

最後に

冒頭にも記載しましたが、私たちはコミュニティ形成の専門家ではありますが、書籍作成の専門家ではありません。ですので、「コミュニティメンバーで実施している執筆作業」というレベルとなっております。その点ご容赦ください。
また、具体的な文書の種類や書籍執筆のプロジェクト要件によって、必要なチェック項目が異なる場合もあります。ですので今回お伝えした内容がすべてに当てはまるわけではないと考えております。その点についてもご理解ください。

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