たいち

詩を書いています。『現代詩手帖』投稿欄の選外佳作など、こちらに掲載しています。

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【詩】Cho (日本現代詩人会 投稿欄 佳作作品)

蝶  と いう ことばが すき そらみみ の ように 舞う 音 その やわらかい みちすじ を わたしの まなざし が 歩く あかるく あかく 流れ る 血 の ように Cho と わたし は つぶやく その こころもとない くち の かたち 息 が 宿を発ち 皮膚 が 目を閉じる 蝶 が 蝶のいきどまりに、満ちる 真昼の廃墟のように こんなにも 静かな 肺 とおく とおく しみわたる 青い謎の 底で わすれもの と なる この からだ わすれも

    • 【詩】サイン

      燃える、人間のからだ は 朝焼けの 降る 町 だ こころの ほとぎ に 雨が、たまって ((     )) 飛び越えて ゆく 傘 さかさま に なった ミサ 子どもたちは 高く、高く、舞いあがるブランコ で むすびめ を ほど き ことほぎ に なって 燃えちまえ 思うままに 空気 を、 吸って 脳の迂回路 に、 風が 吹いて おもいでたちの骨 に からまってた 鬼ごっこ が 今日、 飛んだよ 狼煙になった なま

      • 【詩】鬼ごっこ

        それは、なつのひの朝 とうかんかく に ならんだ 四角い 窓 ざらざらした 象牙色の 外壁 ベランダ の シャツ しろいシャツ まっしろい シャツ パパ と ママ の 影の あいだ 朝、 それは朝 傘の、いらない朝 その子ら の 氷ったまま の じゃんけん は 御天道さまに 照りつけられて こころのなかに 実った 果実を 投げるでも なく 手渡すでも なく 突きだした その手で じぶんの なかへ と ひとりは 目 をつぶって ガラス玉のように じゅんすいな ま

        • 【詩】車輪

          オリーブ畑が 風に雇われて 流動体の思い出になって 海を目指している なみなみとつめこんできた わたしの成長も 欠伸の中で 何気なく酸素を求めて、 いたこと、そこに、いたこと この坂道を 単純明快に下っていく 車輪の回転と共闘しながら まだ、反撃を夢見ている 太陽はモルヒネになって いま を  やわらかく 痺れさせていく ありったけの風の倍音は 鼓膜の夜を突き抜けて わたしのいま に なっていく (膝の出血のなま温かい寂しさに  母が微笑んでいたから、私は泣いていた

        【詩】Cho (日本現代詩人会 投稿欄 佳作作品)

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        記事

          【詩】オレンジ

          カトマンズは 香辛料の匂いがする ほつれていく コイン握る左の手  穂、連れていくよ まだ実らないままで 少年が素足で蹴るものは、生活。 1本のアスファルトは 未成熟な僕たち人間の 待ち合わせ場所だ できそこないの果実を 自転車に めいっぱいに載せて売る 老人 オレンジを  ひとつ 買って 皮を剥く かたい かたい  とっても かたい その表皮の奥の 果肉は  まるごと 真実だ それを 人間の僕は、 10ルピーで買って いまから いただきます 万年渋滞の大通り 無

          【詩】オレンジ

          【詩】大寒

          ぼたん雪が 落ちてくる からだを 大きな空き地にして 空を仰ぐ 目のなかで眠る 口が めざめ 歯を 剥き出しに して ゆっくり ゆっくり この眼球を 脱ぎ捨ててゆく いったいの獣 に なるのだ 夜は たぶん その胸の奥から 明けてゆく ※『現代詩手帖』2021年5月号 投稿欄 選外佳作

          【詩】大寒