ウイルスが潜む

「何をしているの?」と彼は彼女に聞いた。彼女はスマートフォンを持っている。そして、手の中を真剣な表情で覗き込んでいる。
「ツイッター」と彼女は言う。ツイッター――この休むことなく生成される情報の壁、私たちの「リアル」じゃないリアルタイムを押し付けてくるタイムラインに、彼女は夢中なのだ。

タイムラインの構造、フォローした人物の情報によって構築される。フォローするか否かは、自身の裁量次第である。したがって、「自分の好きな人」の情報だけがタイムラインを流れる。

なんだって? リアルタイム? これが「リアル」だって?

自身の殻に閉じこもり、欲しいものだけ並べられたおもちゃ箱。その更新にあくせくし、周りが見えなくなった人たち。子どもですらない大人。再び、新人類か?

だから彼は、ウイルスをばら撒くことに決めた。大変心苦しいのだろう。しかし、標的は無差別である。お前らが欲しい情報――自身の興味関心「でない」情報、お前らが目を背けたいが事実としてお前らの周りに広がっている情報を、お前らの「リアル」の外側に絶対的に存在する情報を、お前らはウイルスとして処理してしまうであろう情報を、俺がお前らの「リアル」に届けてやる。脱構築? これは、サイバーテロだ。

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