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直に煮る

とうとう、最低気温が10℃を切る日が出てきて雨も多くなり、紅葉も始まり…わたしが住む地域もすっかり秋になった。

ファーマーズ・マーケットではかぼちゃがフルラインナップ状態。
したがってトマトやズッキーニや茄子はどんどん姿を消して、春と似たような氣候で出てくる葉物が顔を出す。

わたしの手持ちの「秋茄子」もあともう少しだけ。

この夏は、枝豆を4回も食べられた。
友人から大好きな茗荷を何度もいただき、薬味に寿司に酢漬けに味噌漬けにとたっぷり楽しめた。

デッキファームで作ったハーブは乾燥したり、チェリートマトはセミドライにしてオイル漬けにしたり、水煮やソースの「トマト仕事」もいっぱいやった。梅干しも梅酒も作れた。
冬向けの保存品もしっかりできたし、成果たっぷりの夏だった、と言える。

そしてこの夏、わたしがハマったのは「直煮」だった。

出汁を使わず、一種類、もしくは二種類の調味料とときに油、そして水だけで調理する方法だ。

特にハマったのは「茄子の田舎煮」
油で下炒めした茄子を、水と醤油だけで煮込む「直煮」だ。

支配人もわたしも大好きで、シンプルなのにコクのある味付けで、ごはんはもちろん、お酒も進む。
柔らかく炊けた茄子からしみだすジンワリしたうまみは、醤油だけではなく、茄子のうまみも加わっていると思う。

これまで、いなわら亭の「茄子のごちそう」といえば「揚げ茄子のにんにく醤油和え」で、これは「茄子は肉」と断言できるくらいにベストマッチの味。これまでは夏の間に何度も作っていた。

でも、それを軽々と超えたのが「茄子の田舎煮」だ。

何度でも食べたくなる、味わい深さ。
茄子のトロッとした口当たりと、ちょっとパリッとした皮のコントラストがたまらない。

もう何度、作ったことだろう。

わが家は冬には茄子を食べないので(「季節のものを食べる」という原則があるため)、夏の間はとにかく、茄子とトマトを食べまくる。
そして、この夏に最多出動だったのが「茄子の田舎煮」だ。

このレシピはTwitterで知ったのだが、スレッドを追っていくと茄子農家さんや自家菜園で茄子を作っている「たくさんの茄子を食べる」人たちが「よく作ります」とリプするほど、人氣のあるものだった。

とにかく、かんたん。
ちょっと手間がかかるのは最初に茄子を炒めるところだが(わたしはムラが出ないようにひとつずつ焼き目をつけていくから)、難しいことは何もない。

調味料と水を入れたらちょっと目をつけて、焦げないように煮詰めてやることくらいだろうか。

熱々でも、冷めても、どちらも美味しい。
汁氣がない上に動物性の油を使っていないので、お弁当にも向くかもしれない。

見た目は正直、どんくさいけれど、薬味などはのせないほうが美味しい。
そのままを味わうのが、最上の料理だと思う。

この「茄子の田舎煮」の似たような感じで、「豆腐の直煮」も作った。
「八杯豆腐」というものだそうで、水・酒・醤油で豆腐を煮ただけのもの。

わたしはお豆腐が茶色くなるまでしっかりと煮たものを、クズ引きした汁と一緒にごはんにのせて丼仕立てにしていただいた。

大根おろしを多めに、ちょっとおろし生姜ものせて。
あっさりと煮たものでも美味しいと思うので、そこは個人の好みになると思う。

これがまさに「素朴な美味しさ」だった。
こういうのって昔から食べられていたんだろうなぁ…と思える、シンプルな味。でも「茄子の田舎煮」と同じように、ごはんに合う。

豆腐だけでも、お酒のお供にぴったりだ。
葛粉の効果もあるから、寒い日に熱々をいただけばお腹もよく温まると思う。

そして、秋といえば…のかぼちゃ。
これも以前とは違って「塩煮」にするようになった。

ざっくり皮をむき、一口大に切ったかぼちゃを面取りして鍋に並べて適当に塩を振り、30分ほど置く。
塩の粒が溶けてかぼちゃが汗をかいたら、鍋の底から1センチ弱の水を入れ、水がなくなるまで弱火でコトコト炊くだけ。

以前はお出汁にみりん、醤油などで味付けした、いわゆる「煮付け」にしていたが、この「塩煮」を作るようになってからは、一切やらなくなった。

この「塩煮(これも直煮の一種だと思う)のほうが、ずっと美味しいから。

ただし、かぼちゃはよく追熟させて熟れたものを使う。
生り口の茎が完全に乾いた状態になるまで、しっかり乾燥させて、熟成する。
生り口に湿り気がある状態だと、まだ若い。

煮崩れをふせぐために、ちょっと面倒でも面取りするといいと思う(ピーラーを使えばすぐできる)。
種は水で煮出すと出汁になるから、味噌汁にできる。種が充実していたら、干してから炒って食べるもよし。

日本かぼちゃだけではなく、皮をむいて下ごしらえしたハニーナッツ・スクワッシュでも美味しくできた(ハニーナッツの皮は食感がイマイチなので、ピーラーでむきすぎないようにむく)。

バターナッツは甘みが薄いので今ひとつだけど、甘みがあって身にしまりがあるかぼちゃなら、このやり方で行けると思う。
友人からいただいたブルースキン・スクワッシュも熟成してから炊いたら上手くいった。

今年も友人から「Commyちゃんと支配人のために」と、ひと夏を育てたかぼちゃをいただいたので、今から「塩煮」でいただくのが楽しみだ。

塩だけ、醤油だけ、使っても調味料はふたつまで、あとは水か、必要なら植物油だけ。
…の「直煮」は、今後もぜひ、レパートリーを増やしたいと思っている。

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