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今こそ、愛する技術を学ぶときかもしれない

自宅でひとりでいる時間が増えてから、読書量が圧倒的に増えた。

外出していたころは月に4冊程度だったが、今では2日に1冊のペースで読み進めている。

先日は、こんな本を読んでみた。

たまたまSNSで見つけた本だったのだが、哲学的な話が好きなので迷わず購入した。


本の中で、著者のフロムは冒頭にこんな主張をしている。

「人は愛される努力をしようとするが、愛する努力をしようとしない。」

まさに僕も同じで、愛されるために何ができるのか?と考えたことがあったが、愛するために何ができるのか?と考えたことはなかった。

そう、愛することは技術なのだという。


じゃあ、どうやってその技術を身につけていくのか?というと、最低条件として必要なことがあると話す。

「愛する技術を身につける前提条件として、必要なのは”ひとりでいられる”能力。何もしないこと、今取り組んでいること、”今”に集中する力が必要になる。」

先のことばかりを考えるのではなく、今に集中できる人間ではない限り、人を愛することができないというのだ。

それは、人とのコミュニケーションに大きな影響を与える。端的に言えば、目の前の人の話を集中して聴くことができるか?というところ。

この主張には、少したじろいだ。

僕は自然と様々なことを考えてしまう癖がある。人の話も集中してい聞いているつもりだが、最近まだまだその余地があるように感じていて、反省していたところだったからだ。


ただ、同時に頭を過ぎったのは、今の環境こそ愛する技術の土台をつくるための習練にうってつけではないかということ。

嫌でもひとりにならざるをえないこの状況。「今」に集中できる環境としては、これ以上に最適なものはない。

様々なところから情報を得られ、いつになくスピード感を求められる現代。いい意味で、その現代から切り離された空間をつくることができる。

この時期にうまく自分と向き合い、ひとりでいられる習練をし、集中することを身につけた人は、状況が回復したときには立派な愛する技術の土台を身につけているのかもしれない。

もちろん、これだけで愛する技術を身につけられるわけではない。この先もいくつかのステップが存在するが、ここでは割愛させてもらう。


この本を読み終えて、僕は「愛」というキーワードを考えたとき、イメージするのは恋愛だけではなく、生きることそのものだと捉えるようになった。

日々の暮らしや仕事において関わるひと
たまたま寄ったコンビニの店員さん
宅急便を運んでくれるお兄さん
コミュニティのメンバーの皆さん
SNSでのフォロワーさん

すべての人に対して、僕らは愛を交換しているのではないかと思う。

実際にあるのは、ひとことのコミュニケーションかもしれない。でも、そこには言葉だけではなく、感情や気持ちといった様々なものをいっしょに届けている。

相手を思いやり、感謝の気持ちを伝えることって「愛」以外の何者でもないと思う。

フロムは本の中でこう述べている。

「愛とは、特定の人間にたいする関係ではない。愛の一つの”対象”にたいしてではなく、世界全体にたいして人がどう関わるかを決定する態度、性格の方向性のことである。もし一人の他人だけしか愛さず、他の同胞には無関心だとしたら、それは愛ではなく、共生的愛着、もしくは自己中心的主義が拡大されたものにすぎない。」

愛とは感情ではなく、態度である。そして、それは一人に向けるものではない。

ストレスフルな今だからこそ、僕らは愛する技術を手に入れて、愛の循環をつくることが必要なんだと思う。

そうすることで、世界が少しだけ優しいものになっていくのだから。

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