資本論(第一部)を思い切って要約してみた①

最近、リアルの友人から「結局のところ資本論って何が書いてあるんだ?」と聞かれることが多いので、以下にてごく簡単に第一部の要約を試みようと思う。なお要約の方針は以下のとおりである。

・人々の生活に直接的に関わる部分を中心にまとめ、込み入った議論(第一章に顕著)は最低限にする。その結果として論理が飛躍していると感じられる箇所もあろうかと思うが、致命的な部分を除き、何卒ご容赦ください……。

・できるだけ資本論そのものに立脚してまとめる(例えば、主に後世の解釈で用いられる「物象化」の概念は取り上げない)。ただし説明の便宜上取り上げる例はその限りではない。

ちなみに、資本論ほど研究が蓄積された文章ともなると、ここでヘタに私がわかったような口を聞くことで界隈から袋叩きに遭うおそれがある。それは承知の上で、無学を自覚しつつまとめるものであるため、どうかお許しください。それではいってみよう!

まず、資本とは何か

資本主義社会は、いろいろな人が作ったモノを市場で商品として交換しあうことで成り立っている分業社会である。こうした分業が成り立っているため、私がコメ農家であったとしても、ブラジルの生産者がつくったコーヒーを飲み、スイスの生産者がつくった腕時計をはめる生活を送ることができる。

市場での商品交換は、やがて貨幣を生み出す。貨幣も実はひとつの商品にすぎないのだが、市場のほぼすべてのものと交換できる一般性があるため、市場で特殊な地位を得る。

もともと商品交換が成り立つのは主観的にでも商品に価値を認め、価値が等しいと判断されたもの同士を交換しているからなのだが、貨幣が登場すると価値はもっぱらこの貨幣で表されるようになる。

貨幣はこのように便利で、しかも価値そのものとみなされるようになっていくので、人は貨幣をたくさん集めたいと思うようになる。結果として、人は手元の貨幣をなんらかの手段で増やすことを考えるようになる。その方法はさまざまであるが、こうして自らを元手に増えるようになった貨幣のことを貨幣資本という。より一般的にはこうして自ら価値が増殖するものを資本というのである。

労働と搾取

では、どのようにして資本の価値を増殖させるのか。ひとつの方法は商業であり、これは地域ごとに物の価値が変わることを利用して「安く買い高く売る」ことで価値を増やすものである。また別の方法として金融があり、これは貨幣を貸して一定期間後に利子をつけて回収することで価値を増やすものである。

だが今日の資本主義社会で最も用いられる価値増殖手段は産業である。これは、原料を購入し、それを加工することで付加価値をつけ、それを販売するという価値増殖の方法である。いま「加工」から付加価値が生じるといったが、これはつまり人間のおこなった労働が価値を生んでいるということである。もちろん機械が原料を加工する場合はあるが、その機械もつきつめれば人間の労働で作られたものだから、やはり労働に還元できる。

ここでひとつの疑問が生じる。労働者は賃金を受け取っている。それが労働の対価だとすると、産業を営む資本家の手元には何も残らないはずではないか? 

これについては、労働者が売っているのは「労働力」、すなわち自分を好きに労働させていいという権利であり、労働そのものではないというのが回答となる。その結果、市場における労働力の価値と、それを使って労働させた時に生じる価値に差が生じるということがあり得る。それすなわち労働力の価値以上に労働者を労働させたときである。このとき発生する価値の差のことを剰余価値といい、剰余価値を資本家が自身のポケットにおさめてしまうことを搾取という。資本家は資本を価値増殖させるために、できる限り剰余価値を搾取しようとするのである。

なお、なぜ労働者が労働の対価をそのまま受け取れず、労働力を売るという手段をとらざるをえないのかという点に疑問が生じることだろう。それは端的にいえば、そうせざるを得ないからである。労働はその対象となる原料を必要とするし、加工のための道具を必要とする場合も少なくない。これらをまとめて生産手段というが、これら生産手段を労働者は持っていない場合が少なくない。それでは自力で価値を生めないので、仕方なく資本家に労働力を売って、資本家のもとで価値を生むしかないのである(そしてその価値は資本家のものとなる)。

ここまでのまとめ

うーん、ひとつの記事でまとめる予定だったのに、結局長くなり分割せざるをえなくなった。仕方がないのでここまでをまとめて続きは次回とする。

・商品を市場で交換していると、利便性の観点から貨幣が生まれるよ。そして貨幣は価値の指標となり、その有用性から蓄え増やしたいという欲求を生むよ。

・貨幣を増やす場合のように、価値が増殖するものを資本というよ。資本を増やすメジャーな方法は原料と労働力を購入し、原料を労働で加工した製品を売ることだよ。

・このとき労働力の価値とそれを使って労働させた時に生まれる価値に差が生じて、それが資本家のものになるよ。この価値を剰余価値といって、それを懐におさめちゃうことが搾取だよ。

ではまた次回!

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