アカイさん

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最近の記事

西洋教育史概説のおもいで

私は教育学部を出ているのだが、そこに「西洋教育史概説」という授業があった。私は、教育学部にいる者として西洋の教育史を知っておくことは重要だと思っていたし、この科目が教員免許状取得のための単位にカウントされるということもあって受講したのであった。今回はそのおもいでと今にどう繋がっているかを語ろうと思う。 結論から言うと、この授業はまったく西洋教育史の概説ではなかった。 担当教員は川本隆史先生。ロールズ『正義論』の翻訳で有名であり、博士論文は『現代倫理学の冒険』。この時点で明

    • 左翼の自分が教育について語ってみた!!!!!!!!!!!!!!!

      あたりまえといえばあたりまえだが、教育というのは単に社会に役立つ人材を育成するためだけにあるのではない。企業内での人材育成ならばともかくも、公教育や生涯学習というのは社会に役立つ人材を育てる以上の機能があるのだ。それは人権保障としての側面である(堀尾輝久『教育入門』『人権としての教育』他)。言い方を変えると社会に役立てるためではなく社会から守るためにも教育は行われるということである。 ところで、社会というとあいまいなのだが、具体的に何から子ども(教育の対象は子どもだけではな

      • 構成主義への愛憎

        構成主義とは教育には構成主義という立場がある。Wikipediaを引くとこうだ。 「構成主義(こうせいしゅぎ)は、学習者たちがある対象について、彼ら自身による(それぞれ違った)理解を組み立てるようなかたちで教育すべきである、あるいは学習者たちの中に既に存在している概念を前提に授業を組み立てる必要がある、というジャン・ピアジェが発達心理学をもとに考案した学習・教授理論を指す。」 これだけだとワケがわからんと思うが、この構成主義という立場が何を敵にしているのかを理解すると、わ

        • 資本論(第一部)を思い切って要約してみた③

          さて、結局3回に渡ってしまった資本論(第一部)要約の試みも今回が最終回である。 ところでこうして要約を書いたのは、より多くの人に資本論の内容に触れてほしいからである。しかし単なる教養として「ふーん」で済ませられてしまうのは、本意ではない。肯定でも否定でもよいが、資本論からわれわれの日々の生活を考えるタネを掴み取ってほしいのである。 むろんそのタネは人によってさまざまだが、私が学びとってほしいことは例えば、我々の生きづらさは我々の気持ちの問題ではなく、社会構造の側に原因があ

          資本論(第一部)を思い切って要約してみた②

          前回に引き続き、資本論第一部を極力簡潔に要約しようという試みである。 前回は、極力簡単に……といいつつも抽象的な議論が目立ち、よくわからなかったという方もいると思う。残念ながら、資本論の第一章〜第四章あたりは原理原則論なのでどうしても抽象的になってしまうのである。 それに比べれば、今回要約する第五章以降は具体的な話が多いので、比較的わかりやすいのではないかと思う。それに、私がぜひ読んでほしいのも第五章以降である。なぜならそこに我々の生きづらさを解明するヒントが多数隠されて

          資本論(第一部)を思い切って要約してみた②

          資本論(第一部)を思い切って要約してみた①

          最近、リアルの友人から「結局のところ資本論って何が書いてあるんだ?」と聞かれることが多いので、以下にてごく簡単に第一部の要約を試みようと思う。なお要約の方針は以下のとおりである。 ・人々の生活に直接的に関わる部分を中心にまとめ、込み入った議論(第一章に顕著)は最低限にする。その結果として論理が飛躍していると感じられる箇所もあろうかと思うが、致命的な部分を除き、何卒ご容赦ください……。 ・できるだけ資本論そのものに立脚してまとめる(例えば、主に後世の解釈で用いられる「物象化

          資本論(第一部)を思い切って要約してみた①

          あなたの「コミュ力」は測定できるのか?

          はじめに人間のスキルを測定しなければならない局面はますます増えています。 企業の採用試験においては「コミュニケーション力」(コミュ力)の測定が重要。よりよい特別支援教育のためには「知能」や「多動性」の評価が必要。研修の前後で受講生の「主体性」が増したかを測定し研修効果の評価が必要。このような具合です。なおこれらの例からわかるように、測定というのは人材開発や教育の問題とも不可分です。 しかし重要なのは、こうした心理的なスキルというか、人間の内面を測定することは、物理的なもの

          あなたの「コミュ力」は測定できるのか?

          「仕事が辛い」になるべく合理的に答えてみる

          この記事は「仕事が辛い」と考える皆様にできる限りのエールを送ろうとするものである。 しかし、凡百の自己啓発本にあるような「気にすんな!」「〇〇と思い込め!」というようなただの精神論はもう聞き飽きているだろうから、できるだけ合理的な答えを提示しようというのが、本記事のこだわりである。 それではQ and A方式でいってみましょう。 そもそもどうして人は働かなければならないのですか?端的には生きるためです。このことは狩りや牧畜、農耕といった直接に生存に関わる労働を考えればわ

          「仕事が辛い」になるべく合理的に答えてみる

          対話編(その1 マルクスと心理学 序)

          「タイトルの通り、自分同士で対話をすることによって現在の問題意識を整理し、今後の活動につなげていこうと思うわけだが」 「ずいぶんと痛い企画だ。こんなのを面白がって読む人がいると思っているのか?」 「だから自分同士の対話と言っているじゃないか。もちろん読んでいただければ嬉しいが、本来的には自分のためだと思っていただきたい」 「なるほどエゴの塊の記事というわけか。もっともTwitterなんかも、誰かに向けたというよりも、エゴの塊のようなツイートばかりだが……」 「おいおい

          対話編(その1 マルクスと心理学 序)

          フェティシズムってなに?

          このタイトルでエッチな内容を期待したみなさん、残念! この記事はマルクスのいうところのフェティシズム(呪物崇拝、物神崇拝)という概念について述べた文章です。なお内容については『資本論』第一部第一章「商品」に全面的に立脚しています。 ものの価値はどこにある?さて、私たちは日頃から次のような会話をよく繰り広げています。 「この家電製品には3万円を払う価値がある!」 「このワインの価値がわからないなんて君は子供だなあ」 このように、もの(もっというとそれは、市場で取引され

          フェティシズムってなに?

          結婚式場のプールは泳げるのか問題

          昨日、知人の結婚式に行ってきました。 その式場にはプールがあり、高級感はあったのですけれど、私としては「このプールで泳ぐことは可能なのか?」ということの方が気になってしまいました。 というわけで以下ではそのことについて考えたいと思います。 法令上の問題人は水たまりがあれば即泳げるわけではありません。ましてやそれが、なんらかの法人が責任を負って運営する水たまりであれば尚更です。 というのも、すぐに想像されることとして、プールにしても温泉にしても、人が裸(半裸)で入る以上

          結婚式場のプールは泳げるのか問題

          在日朝鮮人の帰還事業って?

          2021年10月14日、日本史上初の試みが行われました。 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府を相手取った民事訴訟です。 https://news.yahoo.co.jp/articles/57a19b04c6fdf6a53caf9c241c5d13929abe1af7 そんなことできるのか? という声もあろうかと思いますが、訴状が受理され公判は行われたわけで、公的に一定程度認められた訴訟です。(なぜ訴えられるのかという理屈は本論の趣旨ではないので割愛します。) なぜ

          在日朝鮮人の帰還事業って?

          ポエム

          沖縄の漆喰シーサーは、今ではすっかり人気のお土産品だが、これは家をつくって瓦屋根をふくときに、余った漆喰や割れた赤瓦で作るものだった。瓦屋根をふくのは、生活に必要な仕事であって、別にみんながみんな好きでやっているわけではないだろう。しかしその大変な仕事の「余力」から、漆喰シーサーのような別に作っても作らなくても構わないものが生み出され、瓦屋根ぶきの仕事をした人や見る人を癒していると思うと、ますますこのシーサーがいじらしくなってくる。 人間は生きていくうえでいろいろな面倒ごと

          共産主義ってなに?

           2021年9月25日、突如「共産主義」がTwitterのトレンドに入るという事件が発生しました。これは某・代々木の政党代表が、共産主義を擁護する以下のツイートをしたことが発端のようです。 https://twitter.com/shiikazuo/status/1441376803340238850  このツイートに対し、「日本共産党は未だに共産主義を信奉しているのか!」というような批判がTLに溢れることとなりました。私としては、そんなに言われて志位委員長も可哀相だなあ

          共産主義ってなに?

          第2章 理論と実践の分離

          「理論」と「実践」というのは、多くの二項対立の中でも最も頻繁に引き合いに出されるものの一つであろう。医科大学の座学で学んだ理論が、臨床実践にどれほど役に立つのか。研修で学んだことが、日々の仕事の成果をどれほど上げるのか。意識しているとしていないとに関わらず、我々は理論と実践の関係が問題となる場面に多々出くわす。 ところで、理論と実践の関係というとき、それは文字通りの「理論」と「実践」の関係ということを超えている。ある種の人間関係もこの枠内で論ずることができるのである。例えば

          第2章 理論と実践の分離

          第1章 反心理主義

          この世の問題の大半は人間の行動によって引き起こされている。 暴飲暴食によって健康は害され、天然資源の浪費によって環境破壊がもたらされ、資本家の苛烈なマネジメントによって労働者は苦境に立たされている。これらの問題を解決するためには、原因となる人間の行動を変えなければならない。 では、そうした人間の行動の原因とは何か。多くの人間は、「その人の心や意思」であるという。われわれは心の中で「食べたい」と思うから暴飲暴食するのであり、「腹が立つ」から他人への暴力を振るう、といった具合

          第1章 反心理主義