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なぜ自転車を売っていた会社がペットフードの販売を始めたのか


どんなことを伝える記事か

こんにちは、株式会社エイチームコマーステック代表の望月と申します。
昨年立ち上げた新規事業が間もなく一周年を迎えるため、事業が生まれた背景やストーリーを公開することにしました。

本記事が、これから新規事業を作りたいと思っている人や、現状の生活の中になにかしらの課題感を持っている人のヒントになると嬉しいです。

自己紹介

私は名古屋のIT企業、エイチームグループの子会社であるエイチームコマーステックの代表をしています。

私達は「ココロが動く買い物を」をミッションに、より良い顧客体験をどう提供するのか仲間と日々奮闘しています。
現在は、自転車通販サイト「cyma」と国産ヒューマングレードドッグフードの通販サイト「Obremo」を運営しています。

※cymaは2023年3月に会社分割し、株式を譲渡しました。

我が家のワンコたち

「Obremo」誕生の背景には、我が家のワンコたちが密接に関わっているため、紹介させてください。
我が家には2匹のチワワがいます。

左が藤、右が虎徹

5歳になる虎徹(♂)と、もうすぐ3歳になる藤(♀)です。
虎徹は今日まで全く病気をしない健康ワンコなのですが、藤は生まれつき体が弱く、生後10ヶ月のときに子宮内膜症を、1歳半のときに環軸亜脱臼という先天性の病気を発症し、それぞれ手術と入院を経験しています。

ある日感じた、ドッグフードへの疑問

きっかけは、藤のおしっこでした。
それまでも我が家は、ドッグフードへの関心はある方でしたが、このときはまだ動物病院で勧められるフードが適切だと信じていました。
初めての入院から帰った日、動物病院で勧められたフードを食べた藤が、いつものトイレでおしっこをしたのですが、その後、同じトイレを使う虎徹が珍しくトイレ以外でおしっこをしてしまったのです。

退院直後で元気のない藤

幼犬時代にトイレを覚えてからほとんど失敗しなかった虎徹が、その後何度もトイレ以外でおしっこをしてしまいます。
不思議に思い、虎徹を観察していると、藤がおしっこをした箇所のニオイを嗅ぐとトイレから出てしまうことがわかりました。
改めて私も藤のおしっこのニオイを嗅いでみると、とても強いニオイを感じ、虎徹が同じトイレを使うことを嫌がった理由がわかりました。
同時に、排泄物からここまで強いニオイが出るフードが、ワンコにとっていいものなのか…?という疑問を持つようになりました。

調べて分かった、ドッグフードの現状

ドッグフードがどのような材料を使用して、どのように製造されているのかについて客観的な情報はなかなか見つかりませんでした。
そんな中、会社の仲間から一冊の本を紹介してもらいました。

この本には、今まで私が知りたかったドッグフードの材料や製法に加え、ワンコの健康への問題など知らなかった問題が多く書かれていました。
また、調べを進めると、法律上で厳しく衛生基準が定められている「食品」は人間が食べるものしか対象となっておらず、ワンコが口にするフードの製造にはそこまで厳しいルールがなかったのです。
自分が家族のように愛するワンコに毎日与えるフードなので、安心できる品質のものを見つけたいのですが、調べれば調べるほどそれが難しいことがわかってきました。
そんな中、「探すより自分たちで作ったほうが早いのでは?」という思いと、「同じように困っている飼い主さんがいるのでは?」という思いが強くなり、会社の新規事業として扱えないかを考えるようになりました。

事業化に向けた準備

エイチームでは、3ヶ月に一度「A+」という新規事業コンテストがあります。
A+は社員全員が新規事業を会社に提案することができ、採択されれば最短で事業化できる機会です。
安心できる品質のフードを作って販売することを、飼い主としての立場ではなく、事業として扱う価値があるかを経営の目線で判断してもらうため、同様の課題感を持っていた仲間と一緒にエントリーし、調査を開始しました。
調べてみると、ペットフード市場は3,000億円程度の規模があり、コロナ禍で在宅時間が増えたことにより新たにお迎えするケースが増えており、成長していることがわかりました。
また、私達が安心の目安として考えていた「国内製造」「ヒューマングレード」「原材料100%開示」「合成添加物不使用」を満たしたフードを提供する会社はほとんどなく、事業化の必要性が高まっていきました。
その後、無事にA+を通過した私達の新規事業は、「Obremo」というブランド名でスタートしました。

実際にフードを作ってみてわかったこと

私達が求めるフードを作るには、素材の仕入れや製造設備、製法に至るまでかなり高いレベルを要求されるため、生産を請け負っていただける工場がなかなか見つかりませんでした。
商品がなければ事業は開始できないため焦りが募っていきましたが、それでも、フードの品質を妥協することだけは絶対にしませんでした。
根気強く探していくと、ようやく求める要素を全てクリアした工場と出会い、そこからはトントン拍子で試作品の生産まで進んでいきました。
試作品を目の前にした私達は、世の中で売れているフードを一通り購入し、比較してみることにしました。
まずニオイが全く違いました。
一般的なドッグフードは、袋を開封すると特有のきついニオイに思わず顔をそむけてしまいますが、Obremoのフードは出汁のいい香りがする、人間の食べ物のようなニオイでした。
また、それぞれを水に浮かべてみると、違いは一目瞭然でした。
一般的なドッグフードは長期保存と食欲増進を目的として、フードを油でコーティングしているため、水に浮きます。
一方でObremoは必要最低限の油しか使用していないため、フードの中の空洞に水が染み込み、沈んでいきます。

他社のフード。水に浮き、時間が経過しても形があまり変わらず、水が黄色く濁っていきます
Obremoフード。水に沈み、時間の経過とともに分解していきます。水はあまり濁りません


実際に販売を開始してみてわかったこと

2021年8月に販売を開始したObremoは間もなく一周年を迎えます。
これまで販売したフードは累計で40万食を突破し、多くの飼い主様やワンコからの支持を頂いています。
私達のコールセンターには日々多くの飼い主様から「フードの選び方がわからない」「ワンコの体調に不安がある」といったご相談を頂きます。
私を含むわずか数人で感じていた課題が、ここまで世の中の飼い主さんにもあるということに驚いていると同時に、この事業を開始してよかったと心から思います。
まだまだ始まったばかりの事業で、飼い主様やワンコへの提供価値にも改善の余地が沢山残されていますが、我々の本質的な思いが間違っていなければ、いずれ問題なく解決できると思っています。

自転車屋さんがペットフードを取り扱う理由

最後に、この1年で最も多く頂いた質問「なぜ自転車の次がペットフードなんですか?」にお答えします。
単刀直入に申し上げますと、自転車とペットフードに関連性はありません。
もちろん、cymaを通して蓄積されたECの運営やシステム構築の知見が生かされていますが、共通で使用できるアセットのようなものはありません。
ただし、参入の基準としての類似点はあります。
それは、「顧客が明確な問題を抱え、既存のプレイヤーがそれを解決できていない」という点です。
自転車は、お店が大型ショッピングセンターやロードサイドに入っているケースが多く、近隣に住んでいる方を除き、商品選びや購入後の持ち帰りが大変な商材です。
一方で、組み立てに専門技術が必要で、かつ物流との相性が悪いため、これまでたくさんの車種を取り扱い、自宅配送まで完結させるECはほとんどありませんでした。
そんな中、cymaは約10年をかけて独自の物流網を築き、取扱車種を200種類以上に広げ、資格を持ったプロの整備士が完成させた自転車を顧客の自宅に配送できるサービスに成長しました。
Obremoも同じく、家族同然の愛犬に与える安心できるフードが少ない、見つけにくいという問題に対して、自らそのフードを生産・販売することで解決に向けて動いています。
私達が取り扱う事業や商材は、ミッションである「ココロが動く買い物を」実現することを軸に選定しています。
そのため、今後も一見すると一貫性のない商材を扱う可能性はありますが、それは顧客と向き合った結果だとご理解いただけますと幸いです。

最後に

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Obremoは、世の中の飼い主様とペットの絆を深めるために、今後ますますサービスを磨いていきます。
どうぞご期待ください!