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コムラボ 10周年対談(6) 「足利だから」を諦める理由にして欲しくない

設立から10年を迎えた特定非営利活動法人コムラボ(以下、コムラボ)。マチノテスタッフ村上が役員3人へ「コムラボ的ものの見方」を探るインタビュー第6弾。今回が最終回です。(前回の記事はこちら

登場人物:
・山田雅俊(代表理事、創業者、足利市出身)
・増子春香(理事、創業者、足利市出身)
・出村哲朗(理事、2012年に加入、富山県出身)
・村上香純(マチノテスタッフ、足利経済新聞記者、秋田県出身)

今回のテーマは「コムラボが見据えるこれからの地域支援」です。

新型コロナのせいで「地域の問題は他人事ではなくなった」

村上:新型コロナウイルスで生活様式が大きく変わりました。地域を取り巻く状況はどのように変化したと感じますか。

出村:買い物や遊びを自分たちの住む地域の中で楽しむようになったと思います。遠方への外出は感染リスクが高まるからです。

村上:私も出かける頻度や移動する距離がかなり縮小した実感はあります。

増子:これまでは楽しむことをするなら遠方へ出かけることが定番でしたが、外出自粛などで多くの人たちが自分の住む地域に目を向けざるを得なくなりました。

今回、新型コロナによって地元で楽しいことを発見しようと思って初めて「地元に魅力的な場所が少ない」と感じた人もいると思います。

村上:目を向けざるを得なくなり、地域の現状に向き合った人も多いかもしれませんね。

増子:飲食店など「自分の好きだった場所がなくなってしまうかもしれない」ということを通して、地域の問題を自分ごととして感じる機会も増えました。そういう現状を目の前にした時、地域に住む自分たちに何ができるだろうと考え、何か行動を起こしたいと思う人が増えてくれると嬉しいです。

村上:地域の問題がとても身近になって、他人事ではなくなったと思います。

山田:私たちも「道に落ちているゴミを誰も拾わないから自分が拾った」くらいの感覚ですよ。

村上:どういうことでしょうか。

山田:コムラボは、大それたことを成し遂げようという気持ちはなく、目の前にある問題に気づいたから行動しただけです。

例えば、外出しようと家を出たら道にゴミが落ちていた。「誰だ、こんなところに」「仕方ないな」と思いつつ、拾いますよね。人によっては気づかない人もいますし、気付いても知らんふりをする人もいます。でも、その感覚はコロナによって、少し変化したと思います。

村上:コロナによって目の前の問題に気づきやすくなり、行動しようと思う人も増えたということでしょうか。

山田:社会全体を見渡しても、地域の課題は、いますぐに手をつけなければいけないほど、危機迫ったものになっています。ただ、実際に地域のために何かしたいという思いはあっても、1人でやるにはハードルが高いと考える人も多いです。

コムラボは、10周年を迎えてミッションを『地域の新しい「やりたい」を「できる」に変える』にしました。ポストコロナの地域社会で「やりたいけど、できない」と思っている人を支えるNPOになりたいです。

村上:地域のために何かをしたいというビジョンがある人にとっては、コムラボの支援を受けながら進んでいけることは心強いです。

10年間の活動を通してコムラボは根底から変化した

山田:コムラボは10年を経て「教育NPO」へと変わりました。

村上:メディアではなく?教育ですか。

山田:活動当初はITの専門性を地域へ活かすことを念頭に置いていましたが、今は地域の教育NPOだと考えています。

村上:教育NPOというのは具体的にどのような教育を行なっているのでしょうか。

山田:在宅ワーク講座や足利経済新聞など、新しい働き方ができる知識や技術を地域の大人へ提供する教育です。今風にいうなら「リカレント教育」です。

大人になるとやることが増えて学び続ける事が難しいです。やめる理由をたくさん作る事ができます。そこで、仕事をしながら、技術を高めていくための「大人が学び続ける場」を提供しています。仕事に対しては報酬を支払っています。ボランティアだと続けるのは難しいと考えるからです。

村上:地域に関わる手段は「ボランティア」のイメージがありますが、「ボランティア」としての担い手の育成は考えていないのでしょうか。

山田:ボランティアは持続的な活動を進める上で不都合が多いです。

村上:どういった不都合でしょうか。

山田:ボランティアでお願いすると、それに対してのフィードバックがしづらいです。お願いする側は「手伝ってもらっているだけでありがたい」と思い、口を出しづらい。ボランティア側もフィードバックを「手伝ってあげているのになぜ文句を言われるのか」と認識してしまいます。アクションの質を高めにくいです。もちろんボランティアが合っている活動もありますが、コムラボがやりたいことには合わないと思います。

村上:仕事であればそういった状況にはならないですね。

山田:はい。仕事として依頼した方が、こちらはフィードバックしやすいし、聞く側も話しを受け取ってもらいやすいです。

村上:ボランティアゆえの難しさですね。

出村:他にもボランティアの弊害はあります。「私も手伝います。何をしたらいいですか」と関わりが受け身になってしまうことです。能力を高めていくことを考えるのであれば、ボランティアより仕事として取り組む方が有意義だと考えています。

村上:教育という面で考えても、発展性がある働き手として関わる方が良いですね。

「足利だから」を諦める理由にして欲しくない

村上:コムラボのターゲットは「地域で新しい事がやりたい人」ですよね。

山田:はい。その中には「望まないUターンをした人」が含まれています。足利以外で経験を積み、足利へ帰ってきた人です。私もそうでした。

仕事や事業を積極的に行う「できる人」というのは東京で活躍し続ける人が多いですが、足利へ帰らざるを得ない事情を持つ人もいます。

村上:「足利に帰ってきたことでやりたいことができなくなった」となってしまうのは悲しいです。やりたいことが支援を受けながら挑戦できれば、足利に帰って来ざるを得なかった人も諦めなくていいですね。

山田:地域の新しい「やりたい」を叶えるための組織がコムラボです。何か新しい挑戦をしたい人が「できる」状態まで支援し、自走できるようにするのが私たちの役割だと考えています。

村上:コムラボの支援によって、これからの足利がおもしろいまちになっていくと良いと思います。これからの担い手を増やすということでは今後どのようなことをしていきたいですか。

山田:担い手を増やすことはもちろんですが、今いる担い手への報酬や教育をより強化して関わり続けられる仕組みを作っていきたいです。

村上:関わり続けられる仕組みづくりが重要と考えているのですね。

山田:はい。何事も続けることが大事です。地域の問題は短いスパンで変化するものではありません。地域活動は「続ける」というより「やめない」ために、どうすれば良いかを考える必要があります。

地域を野球に例えるならホームランはもちろんのこと、ヒットも狙ってはダメです。打席に立って送りバントで打線をつなぐ。とにかく打席に立つ機会を作る方が重要です。

コムラボは「せっかく打席に立つのだから、いっちょホームラン狙いで」と考えてしまう人に「いやいや、そこは手堅くいきましょうよ」と、ささやく存在になりたいです。

村上:私は足利に縁あってきましたが、「コムラボ」という居場所があってよかったと心から思います。私のように何かしたいと思う人が「コムラボ」に支援を受けながら、地域を明るくしてくれる一助になってくれるといいです。

山田:そうですね。何十年か後に「足利にコムラボがあってよかった」と思ってもらえる地域の未来を創りたいです。


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