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コムラボ 10周年対談(5) 地域に「まちの編集者」は必要だ

設立から10年を迎えた特定非営利活動法人コムラボ(以下、コムラボ)。マチノテスタッフ村上が役員3人へ「コムラボ的ものの見方」を探るインタビュー第5弾。(前回の記事はこちら

登場人物:
・山田雅俊(代表理事、創業者、足利市出身)
・増子春香(理事、創業者、足利市出身)
・出村哲朗(理事、2012年に加入、富山県出身)
・村上香純(マチノテスタッフ、足利経済新聞記者、秋田県出身)

今回のテーマは「地域メディア」です。

現在、コムラボは「足利経済新聞」を運営しています。2010年にインターネット放送局「足利テレビ」からはじまり、10年に渡って手段を変えつつ地域メディアを運営する目的を聞きました。

地域メディアを運営したからこそ実感した「地域情報の格差」

村上:「足利テレビ」を始めた時、地域メディアの価値や意義などを意識されていたのでしょうか。

山田:全く意識していませんでした。以前のインタビューでお話しした通り、私たちが活動をはじめたきっかけは「ノリと勢い」です。

増子:私は価値を意識しているというよりは、自分ごととして地域メディアの必要性を感じていました。自分自身が地域の情報を知らないことを分かっていながら、解決する術がほとんどなかったからです。自分が「欲しい」と思える地域メディアがあればいいなと思っていました。

以前から必要性は感じつつ、自分たちで「足利テレビ」を始めてから更に「地域メディアは必要だ」と思うようになりました。

村上:どのように感じられたのでしょうか。

増子:地域の情報を「発信する側」になると、今まで知らなかった情報に数多く触れるようになりました。活動を始める前とのギャップから、自分が今まで地域を知らなかったことをより痛感しました。また、「地域のことが市民へ伝わっていない」と地域情報の格差を思い知りました。

村上:地域メディアをはじめたからこそ、地域にまつわる情報の現状を認識されたのですね。

東日本大震災を通じて感じた「有事における地域メディアの必要性」

山田:2011年3月11日に起きた東日本大震災の経験は、地域メディアの意義を強く認識するきっかけになりました。

村上:東日本大震災は東北を中心に大きな被害がありました。その震災がなぜ足利での地域メディアを考えるきっかけになるのでしょうか。

山田:震災時、栃木県は東北に比べて被害は少なかったですが、足利でも壁の倒壊が起こったり、計画停電が実施されたりするなど被害がありました。もちろん被害の大小の違いはありますが、「足利も被災地だった」のは事実です。足利に住む人にとって生活に影響する状況でしたが、マスメディアが報道する情報はとても限られたものでした。

村上:県内情報を取り扱うメディアもありますし、その中で足利情報は十分に知ることができたはずでは。

山田:県域メディアの多くは宇都宮に本社があり、宇都宮都市圏で栃木県の人口に占める割合は50%を超えます。どうしても取り扱う内容が宇都宮中心の情報になります。これは多くの人に見て貰える話題性を意識するマスメディアの性質上、仕方がないことです。普段から、県内でも足利は僻地扱いです。東日本大震災では、県内でも相対的に北部の被害が大きく、福島県と隣接していたため、県域メディアでも、よりニュースになる北部を取り上げていました。

もう1つ悩ましいことがあって、足利の人たちは県域メディアをあまり見ないのです。そもそも栃木県に関心が薄く、東京から発せられる情報に興味が向いています。

村上:SNSはどうでしょうか。周辺情報がリアルタイムで知ることができますよね。

山田:当時はSNSがそれほど普及していませんでした。今のようにSNSが普及し、情報が溢れていたとしても情報の質としての問題があります。

村上:情報の質、ですか。

山田:情報が正確でない場合があるということです。SNSは主観と客観を混ぜて発信できてしまうメディアです。

村上:不正確な情報は不利益にもなりますよね。新型コロナウイルスが発生してから、「コロナウイルスの影響でトイレットペーパーが無くなるかもしれない」という投稿をきっかけに買い占めが起こりました。

山田:そうですね。SNSに投稿される情報は真偽が分からないものがあるので、正確な情報として受け取るにはリスクがあります。

足利経済新聞は事件事故を扱いませんが、足利に関わる人が地域に目を向けるきっかけになってくれれば良いと思っています。

日常生活における地域情報の意義

村上:災害や感染症流行などの有事の際、正確な地域情報が大きな価値を持つことは理解できました。ただ、足利経済新聞はさきほど「事件事故を扱わない」と聞きました。日常生活の中で地域情報を伝えることはどのような価値があるのでしょうか。

増子:「足利には何もない」と思う地域の人へ、新しいお店の開店情報を届けるのは、価値があると思いませんか。

村上:「何もない」と感じていたところから「おもしろい場所ができた」という印象に変わる人がいると思います。

増子:地域の人へ情報を届けることで、地域の見方を変える可能性を作りたいと思っています。おもしろいことが地域にあっても、周囲に知られていなければ、結局、地域の魅力は見えないのです。

村上:情報が多くの人に伝われば、その分地域の魅力も伝わりますね。

増子:情報が伝わることで「あのお店に行ってみよう」と地域の人が行動するきっかけになります。

村上:地域に関わるきっかけになるのですね。しかし、そもそも「足利に何もない」と感じている人が地域情報を積極的に手に入れようとするでしょうか。地域に興味のない人は、わざわざ地域の情報をチェックする習慣はないと思います。

山田:いくら情報を発信しても、読んで貰えなければ意味がありません。だからこそ、足利経済新聞はネットメディアと紙メディアで発信しています。日常的な情報発信で目に触れる機会を増やしていきたいです。

村上:地域情報が伝わりやすい仕組みづくりをしているのですね。

山田:そうですね。偶然「足利経済新聞」の記事を見て、足利の魅力に触れる機会はあると思います。そういった機会を経て、地域情報に触れることが習慣的になれば、「足利には何もない」という認識が少しずつ変わっていくのではないかと考えています。

地域メディアは「地域で働く場」づくり

村上:地域メディアを運営する1番の目的は「地域の魅力を伝えること」なのでしょうか。

山田:運営し始めた当初はそう考えていましたが、今はもう1つ目的があります。

村上:他にどのような目的があるのでしょうか。

山田:「地域の担い手づくり」です。地域の情報を伝えることは重要です。でも、情報を伝える人がいなければ、継続的なメディア運営はできません。現在、足利経済新聞では6名の記者が関わっていますが、人手はまだまだ足りません。

地域メディアは、地域で働く仕事を作る場でもあります。仕事として足利経済新聞に関わることで、地域の担い手を育成する「働きながら学ぶ場」を運営しています。

村上:地域の魅力を発信するだけではなく、地域の担い手を育成する機会にもなっているのですね。

山田:正しい情報を取材し、読者へ伝わるよう「言葉を当てはめる」ためには知識や技術がなければできません。伝える力を持つ地域の担い手育成が必要不可欠になります。市民の目線で地域の魅力を伝える「町の編集者」は今後大きな価値を持つと考えています。

村上:地域メディアの必要性や価値をさまざまな視点から知ることができました。ありがとうございました。

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