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ロバの独白

くちびるも、指先も、震えてしまう。

言うのが怖い、見られるのが怖い、目が合うのもあなたが誰かに笑うのもわたしを気持ち悪がることも。並べ立てて仕舞えばあなたをぐしゃっと呆気なく潰してしまいそうな感情の鉄のような重みも、ぜんぶ、怖い。

不安が止まらないからずっと泣いてしまいそうなのだ。今ここで気を許せば目頭が熱くなってきっと堰を切ってしまいそうだから口にも出せない。息を吐き出すことができない。

美しい空や花吹雪を見て苦しさを覚える日が誰にでもあると思う。そんな日が誰にとっても長く続かないことをいつも思っている。祈っていた。それでもこんなのってないよ、と思ってしまう。エゴの塊のようなことを言うけれど余命宣告された方がマシだ。冗談でも悪いと思うあなたはきっと正常な感覚をしている。わたしだって壊れているわけじゃない。絶望しきっているわけじゃない。

好きなだけでなんでこんなに死んでしまいたくならなければいけないのだろう?普通の人より何倍も好きになってくれる可能性が低いから?彼女があんなにも自分とは違って綺麗だから?

どれもそうでどれも足りなくて国語の問題みたいだ、捨ててしまいたい、破り捨てて。今こんな言葉を吐き出している今も目に水膜が張っているわたしは心底から無様で大嫌いです。自分を好きになれないのに好きな子を愛せるはずがないってわかってるんだよ、

死んでしまいたいわけじゃない、ただ眠りにつきたい、体の端から白く冷えて凍えてしまいそうなほど寒い場所で一人きりで眠りたい、好きな子との夢を見たい。でもそんなことも長くは続かないってそれは分かっているし、夕焼けた雲に黄色がかった日のあたる美しさを知らないままで死にたくはないんだ。心が乾燥してひび割れてしまう前に好きだと言えるのだろうか。

人として好きだと思えない自分のことを好きな子に好きになってもらおうだなんて押し付けがましいから頑張ろうと思うのに、今バスの空から思わず見上げてしまった秋の空が涙のように涼しく薄い色をしていたせいだ、どうして泣いてしまうんだろう。馬鹿みたいに辛い 一生インフルエンザで寝込んでいたい。

あたしが好きな子のことを思う気持ちはあくまで恋で愛じゃなくて だって愛なら好きな子がもし結婚したら祝福できるはずだもん 呪ってしまう 呪ってしまうよ

良い子になれないし天使にもなれない そんなものなれなくていいけど、自分で自分の思いを綺麗だと思えない時点で愛な訳ないし好きな子にもそう思ってもらえるわけがないじゃん、至極当たり前のことだ。本当に泣きそうだ。

泣きそうになった時に浮かぶのが泣いてもいいよではなくて泣いても好きになってはもらえないよという呪いなの親の呪いでもあるけどしんどいな

今口を開けば押し付けがましい褒め言葉を言ってしまいそうなのだ、もう。好きという思いは待ってくれないで湧き水のごとく増えてしまうのに、せき止めるダムは無いのだから、姿を見るたびに泣きそうになってしまってほんとうにどうしようもないので逃げてしまいたい。


もしわたしがカメラを手に取ったとしたら、視界をよぎっただけで孤独感が胸にひた寄せるほど寂しい写真を撮ってしまいそうだ。


言えない。


とっくに限界を迎えていて、それでも好きだとバレてしまうのが本当に、何より怖い。考えただけで五臓六腑に寒気を伴った痺れが走って、指がかすかに震えてしまう。気持ち悪いと思われたくないのだ。我儘でどうしようもない。それなのに留めようがない。

取るに足らない存在だとも、気持ちの悪い存在だとも、可哀想な存在だとも思われたくない。私の持つ醜さに直面して失望しないで欲しい。私自身、私の醜さを何度も見てきているというのにこれ以上に怖いことがあるのだ。絶望しそうだ。

私の使う生ぬるい絶望ということば、それに対してもひどく吐きそうな気がしてしまうな。絶望だとか愛だとか、十五年も生きていないくせに大きな言葉を語るなよ。ちっぽけな世界で満足していたのに、どうして彼女に出会ってしまっていきなり広い宇宙にひとりぼっちで取り残されたみたいな気持ちになるんだ、ならなくちゃならないんだよ、とすこし、思う。

業そのものみたいなあたしの存在をきらわないで、ゆるしてほしい。出来れば目を見て話させてほしい。

わたしがあなたを好きだと知ってしまっても。

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