心理系大学院予備校選び①(9つの着目点)
社会人は効率重視すべし
そもそも予備校に行くべきか、の議論がある。後ほど詳細は述べるが、いわゆる「予備校」(受験の有償サポート)の費用は、オンラインで個人が実施している数千円レベルから、大手予備校の¥60-70万レベルまである。
私の場合は心理学部出身でないので、心理学のどこが入試頻出か否かの勘所がまったくなかった。その状態を1年で大学院に合格するレベルに引き上げようというのだから、短い時間で効率よく学ぶ方法を知ることが重要である。
勉強し始めのころにネットで検索すると、「私は参考書3冊だけで合格した」とか「独学で3校合格」とかのマウント取りのコメントが検索で出てくる。そのくらいでも受かるのかなあと甘く見たり、予備校や参考書に投資することを気にしてはいけない。特に時間も限られる社会人の場合は、一人でコツコツやることが好きな人以外は、何かしらのペースメーカーが必要だ。自分一人では、過去問の論述や研究計画書の添削はどうしようもない。
学費を払いこんでしまう前に
大学入試と異なり、心理系大学院受験予備校はそれほど選択肢はない。なので、気になるところは自分で見学なり、相談会なり、オンライン動画をみるなどしてしっくりくるところを選べばいい。
ただ、費用はどこもそれなりにするのに、意思決定するだけの院試の知識がないと適切な判断はできない。当時の私にはこの点を教えてくれる人がいなかったので、これから予備校選びをする方の“転ばぬ先の杖”になれればと思い、下記に9つの着目点を記す。
予備校選び 9つの着目点(*は重要度)
①勉強スケジュールと費用
これから受験するまでの半年、あるいは1年かけて、何が必要で、何をどのくらい学ぶべきかを示してくれる。それに対していくら費用がかかるかが明確である。
②勉強法指導
科目ごとの勉強の仕方を教えてくれたり、適切な参考書を示してくれる。上記のスケジュールに合わせて、この時期までにこれができるように、というのが望ましい。
③講義のわかりやすさ*
講義や映像がわかりやすいかは、特に心理学初学者にとっては重要。入試対策だけで周辺説明を端折りすぎると、心理学自体に興味が持てなくなり、理解がしづらくなる。また講師によるレベル差も大事なポイント。ただ、心理学初学者にとって、わかりやすいかどうかを見極めるのは難しい。
④アウトプット機会**
インプットした知識をミニテストや宿題、模擬試験などのアウトプット機会を定期的に設けてくれる。
⑤過去問添削***
院試の過去問には解答はないため、自分の解答の正誤判断や添削をしてもらえるかどうかが重要になる。特に試験科目に心理の論述や小論文がある場合は、絶対条件とも言える。
⑥研究計画書(志望理由書)の指導**
試験当日より前に出願時に提出する研究計画書は、研究論文の第一歩であり、大学院に入ってから研究ができるか、どの程度する気があるのかを教授陣に測られる、合格において重要な位置づけとなる。これの書き方と添削して、自信を持って仕上げるように導いてくれる。志望理由書も面接時に間違いなく問われる内容のため、事前に添削してもらえることが大切。
⑦大学院及び院試、大学院生活の情報がある
大学院がいつ頃試験を実施し、募集・倍率はどのくらいで、社会人はどのくらいいて、教授はどういう人がいて、過去問はどういうのが出て、面接ではどんなことが聞かれてといった情報を持っていて、大学院生活をしているOBOGの話しを聞く機会がある。
⑧個別の相談
知識の理解を始め、勉強の進め方、志望校選びなど、日々悩みが出てくる。これを直接やメールなどで気軽に相談に乗ってもらえる(人がいる)。また講師との距離感が近いのが望ましい。
⑨受験生同士の交流
一緒に院試を目指す仲間のつながりが持てること。これは人によるが、私は対話が好きなので互いに状況や悩みを共有できる受験生仲間(しかもある程度の年齢層)との交流機会が欲しかった。
以上、大学院に合格できた現在、改めて予備校選びをするとしたら確認したいポイントを挙げた。まだ院試や大学院に対する情報がほとんどない状態で、限りある広告やwebサイト、ネットでの評判だけで大きな投資をするのは危険だ。
このあと、私が知り得る範囲でいくつかの予備校をこれらの観点で主観的に評価するので、参考にしていただければ幸いだ。
【追記】予備校が持つ情報は最新か?
noteを書いているうちに、ふと予備校の院試情報のアップデートに疑問を感じるようになった。我々は予備校に対して、常に最新の院試情報を持っていると思い込んでいる。ただ実際に情報を収集しようとすると、意外と知っている人がいないことに気づく。講師陣は既存のテキストや参考書に基づいて教えるから情報のアップデートが少ない。もちろん過去問を見ているが、その肝心の過去問自体がアップデートされていなかったり、偏った大学院のものしかない。つまり以前の情報をもとにしたものである可能性が高い。
ところが現実はどうか、と言えば、大学院側で試験を作成する教授が変更になれば試験問題の傾向は変わる。教授の顔ぶれは会社の異動と同様にちょいちょい変わるのだ。また2018年に始まった公認心理師資格試験以降、試験問題が公認心理師資格を意識した問題が増えている。また、臨床心理士指定校からはずれ、公認心理師対応に絞る大学院が増えている。こうしたここ数年の大学院側の変化を指導内容や過去問分析に活かしている予備校は意外と少ないように感じる。結局、一番直近の試験内容を知るのは現役の受験生しかいないので、その情報をどこまで取ろうとしているか、が鍵になる。
受験生の受験後のアンケートは河合塾KALSがかなりしっかりやっている。この情報は河合塾KALS各校で閲覧できる。
しかし謝礼欲しさに実際に書いてみるとわかるが、結構細かくて面倒くさい。この項目を丁寧に書いてあればかなりの情報になるが、割と適当に書いている人が多い。これは事務的に情報収集する大手よりも、講師が受講生と距離が近い少人数制やオンライン系の予備校で、試験後もコミュニケーションをとっているようなところのほうがホットな情報を持っていると感じる。ただしそういうところは受講生が少ないので、得られる情報も限られるというデメリットもあるが。