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都会の呼吸

最近更新できていなかったけれど、こんな風にぽつぽつとあげるだけえらい、と自分を励まして書いています。

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今年の花粉症はなんだかおとなしい。

確かに目はかゆくて鼻水は出るけれど、昨年までのこの時期と比べると、びっくりするくらい鼻も目も穏やかだ。毎年春以外も鼻をかみながら過ごしているくらいのひどい花粉症持ちなので、今年は肩透かしを食らったような気分だ。

どうした花粉。いないといないでさみしいとかは全くないけど気にはなるぞ。


スギ、ヒノキ、マツ、ブタクサ、イネ、セイタカアワダチソウ、花粉が飛びそうなものはことごとく、すべからく守備範囲内だ。文字を見るだけで鼻がむずむずする。天敵たちに鼻や目を不用意ににさらした日には鼻水ずるずる、のどはいがいが、目は真っ赤っ赤という具合だ。ゴミ箱はかんだティッシュであっという間に埋め尽くされる。

僕の花粉センサーは少々過敏で、例年2月の頭に花粉症の症状が始まる。

梅の花が咲いたな~なんてのんきに考えていると突然何の前触れもなく花粉症はやってくる。突然鼻水ずるずる、顔が腫れぼったい、頭が痛いなどと言うと周りに風邪ひいた?などと言われるけれど、目とのどのかゆみから風邪などではないとわかっているので、ああまたあいつらがやってきたか、と重い気持ちになる。


学生時代もとにかく春が来るのが嫌だった。やれ卒業式と入学式だ、クラス替えだ、桜だとなるのはいいのだけれど、こっちは頭ガンガン鼻ズルズルだ。春一番が吹いてみんなが喜んでいるのを見ながら、冬の方がいいのにと思っていた。

花粉とテストの時期が被るのも嫌だった。鼻をかんでいると頭が痛くなる。耳が遠くなる。目がかゆくて集中が出来ない。

中学校一年生の春、もうろうとしながら受けたテストで解答欄をほとんどずらして書いてしまい、頑張って勉強していた得意科目で20点台をたたき出した。ずらして書いてしまったんです先生、理解を度合を測るのがテストでしょう、ずらして書いてしまっただけでずらさなかったら90点台ですよ先生と思いながら、花粉で気力も体力も削られていたので、「うへえ」と思いながら答案を眺めていた。

花粉症の時期になると箱ティッシュを机において、机のわきにある手提げ掛けに、かんだティッシュが入ったパンパンのビニール袋をぶら下げていた。


それにしても今年の花粉症は楽だ。

なぜだろうと考えていたら、住んでいる環境が変わったからだと気が付いた。中学高校時代は部活で毎日嫌でも外に出て花粉を吸いこみまくっていたし、大学時代住んでいた寮は森の中に建っていて、近くにはスギが大量に植わっていた。

東京のオフィス街は木は少なく、無機質な建物と舗装された地面に覆われていて花粉が少ないようだ。そういえば花粉が飛びそうな植物を通勤中に見かけない。


もともと都心は苦手で、空を隠すビル群も満員電車もできれば避けたいと思っていた。

人工的な空間で刺激的な時間を過ごすよりも、木に囲まれて落ち着いた時間を過ごしたいと思う。夜景を見てもその光の中で暮らす人の多さを想像してクラクラしてしまう。

都心の環境はあんまり好きではないのに、そこにいる人やそこから生まれるものにひかれて住んでいると時々苦しくなることがある。

ああ、だけど思いがけず都心の環境に助けられてしまった。

息苦しいはずの都会の春は、呼吸がしやすいのだ。

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花粉症が楽だというだけでこんな文章を書いてしまった。

少し浮ついているのかもしれない。

素直に書きます。出会った人やものが、自分の人生からどう見えるのかを記録しています。