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がんばらない食卓と柿酢の話

帰省前に掃除した部屋に戻ってきたら、居心地が良くて、さっそく昼寝した。「荷物を片付けたら、もう少しレイアウトを変えようかなあ」なんて考えながら。

性分なのか、私はどうもアレもこれもやろうとしてしまうところがある。今日にしがみ付いてしまって、睡眠が疎かになることも少なくはない。少し前までは休みいっぱいに予定を詰め込んでいたけれど、日程に余裕を持って組み、帰省先から戻った日は『頑張らない』と決めていた。

今は意識的にゆったり過ごして、身体をメンテナンスする時間を大事したい。


戻ってきた日の午後

15時過ぎに帰ってきて、暫く昼寝をしていたらもう日が暮れていた。帰省前に頑張ったおかげで、冷蔵庫には調味料しか残っていない。だからのんびりと近所のスーパーに出かけた。

買い出し用のリュックには、洗って乾かした牛乳パック、卵パック、食品トレーが詰まっている。帰省前にスーパーの拠点回収に出しに行こうとしたら、雨が降ってきたのであっさり諦めたのだ。
でもまあ、よく考えたら買い出しついでに持っていく方がよっぽど効率がいい。帰省前にアレもこれも頑張ろうとしていたけれど、はなから後回しにすれば良いことだった。

置いてあったリュックを背負ってサクッと出かける。
『準備してある』って素晴らしい!
そんな風に思えた。

買い出し、そして夕食の支度

この日は鉄分補給に「鶏レバーを食べよう」とだけ決めていた。
出かける前に米を炊こうかと準備しかけたけれど、「寿司パックでも買えばいいか」と思い直して正解だった。寿司ではないけれど、『ぶっかけとろろ蕎麦』が目に入った瞬間、まさにその時の気分にしっくりきたからだ。

何事も直感を大事にしたい。ピンとくると何でも嬉しいものだ。

ちなみに自炊する献立にはあまり拘らない。
質素で良いし、シンプルな調理方法で済むものを選ぶ。
凝ったものはたまに奮発して、その道の人に作ってもらったものを食べられると幸せだと感じるタイプである。

ゴーヤと鶏レバー炒め

お目当ての鶏レバーは、夏野菜のゴーヤ、エリンギと共に塩胡椒で炒めた。鶏レバーの臭みやゴーヤの苦味は気にならないので、特に下ごしらえもしない。人に出すものでなければ、料理も本当に気楽なものだ。

ゴーヤと鶏レバー炒め

とろろ蕎麦

蕎麦は付属のつゆ、とろろ、そしてわさびを混ぜればそれで完成。と思ったけれど、少し欲が出て納豆と青ネギも買い足した。もちろん青ネギも既に刻まれているものを選んだ。

なんとも便利な世の中だ。そうやってやらなくて済むことがあると、その分、別のことをする余裕が生まれてくる。
折角なので、納豆をホワホワに仕上げることにする。

酢納豆

納豆は勿論のこと、「納豆に酢を加えて食べると、納豆に含まれる鉄分やカルシウムの吸収が向上する」といった栄養学的な健康情報は、ここでは割愛する。

『旅先で見つけたお酢を開封する良いきっかけになった』というお話だ。

子供の頃は梅干し以外の酸っぱいものが苦手だった。けれど、美味しいと思えるものが格段に増えた今は、大人になるって素晴らしいと思っている。

お酢も好きになったものの一つである。
メジャーどころはリンゴ酢、黒酢、米酢あたりだろうか。とはいえ、私自身は特に拘りがあるわけではない。

それよりも、旅先で、その土地にちなんだものを見つけると、嬉しくなって連れて帰ってきてしまう。(もちろん購入する)

この機に開封したのは、以前に奈良で見つけた『柿酢』である。

柿専門店の純柿酢 / 石井物産株式会社(奈良県五條市)

奈良の柿

奈良と言えば『柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺』と歌われるし、柿の葉で包んだ押し寿司の『柿の葉寿司』だって知名度があるのではなかろうか。

実際、奈良は柿の出荷量が全国。主要品種の『刀根早生とねわせ』の発祥地としても知られている。古くから『御所ごせ柿』をはじめ、様々な品種が生み出されてきた。

と、そんな話は私がするよりは、『奈良特産品振興協会』のHPを見た方が、よほど詳しいことがわかるし、確かな情報だ。
というわけで以下略。

さらに、ここではこの柿酢の風味についてレポートする気もさらさら無く、パッケージに書いてあったキャッチコピーを紹介するに留めたい。
何しろ頑張らない食卓の話なのだ。

柿専門店の純柿酢
水を一滴も使わず、
柿と酵母だけでつくった
無添加の「果実酢」です。

「柿の専門 柿酢」(製造者:石井物産株式会社)のパッケージより

原材料名には「柿(奈良県)」とだけ記載されている。正真正銘の無添加。
その透き通った液体に清々しさを感じる。

柿酢を灯りにかざしてみた

で、この柿酢を取り出した目的は、納豆に加えるためだ。
納豆にお酢を少量加えて混ぜると、ふんわりと泡立ってくれる。

オヤツならこのまま食べればいい。
けれど今回の目的は、あくまで『とろろ蕎麦』のトッピングである。手抜きの夕食に、欲を載せるべく用意したのだ。

ホワホワに泡だった納豆

手抜きついでに、蕎麦もそのまま、プラスチック容器を使用するインスタント感満載の食卓で良いかなと思っていたけれど、なんとなく写真を撮っておくかと思い立った。そうすると見た目だけでもそれっぽくしたいという欲が現れる。

既に茹でられた蕎麦につゆを馴染ませてほぐして皿に流し入れる。付属のとろろ、泡だった納豆、刻まれた青ネギをわちゃわちゃと乗せれば完成である。

ようし食卓へ運ぼうかとしたところで、ふと全体的に茶色い気がして、急遽トマトのくし切りを添えた。

「乗せるだけ」プレートはやみつきになりそう

見た目もさることながら、きっと栄養バランスも良くなったに違いない。
小難しいことを考えるより何より、カラフルであれば大体オッケーなはずなので、これで良し。

頑張らない食卓の効能

蕎麦を茹でたり、長芋を擦りおろしたり、青ネギを刻んだり。
それぞれは別に大した作業ではないけれど、どんなことでもチリツモで、それだけ時間も消費されていく。

その作業そのものによって達成感を得られたり、気を紛らわしたり、黙々と集中する題材になったりして、それはそれでいい。

けれど一度解放されてみれば、別のことができるということにも気づく。
例えば、わざわざ皿に盛ってみたり、偶々たまたま開封するタイミングが重なった柿酢と奈良の柿について調べてみたり、といった事が。

そうして、こんな風に1つ記事を書いてみる、という時間が得られるのだ。

飲み物はコンビニで買ったパックのジャスミンティー

次に同じ献立を用意したとしても、きっと私はもう2度と写真は撮らないだろう。皿に盛らず、プラスチック容器をそのまま利用する。
そして柿酢について語ることもない。

ほんの少しのことでも「しないこと」を見つけると、別のことができるようになる。毎日が同じことの繰り返しで飽き飽きしてきたら、そのルーティンを観察して、やらずに済むことを見つけてみるといい。

「やらずに済む」という選択肢も、今の生活が豊かだからこそ得られるものだろう。それだって、噛み締めればそれなりに旨みを感じられるものだ。

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