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悪戦苦闘のアルバイト生活

Cometa伊勢志摩の建築工事が暗礁に乗り上げた2023年夏。本来であれば秋位からは開業をしてと考えていたのですが、とりあえず3か月は遅れることが確定してしまい、その期間は少なくとも現金収入がないことが確定してしまいました。
これまでは工事監督と、果樹の植え付け、雑草取り、伐採した木材を薪への加工などをしていたのですが、それも当分お預けになりました。せっかくできた暇な時間なので、今後の自分の力になることに使わなくてはと思い、ハローワークでホテル・旅館業の求人募集に応募することにしました。

湯快リゾートのカットマン


そうして人事面接を経て採用されたのが、湯快リゾート志摩彩朝楽の厨房です。せっかくホテル・旅館の仕事をするのだったら、料理の腕があがれば、Cometa伊勢志摩のオーナーシェフとして、後々役に立つのではないかという考えでした。

まずは朝6時に出勤します。7月1日からの採用だったので、初日はお客さん100人から始まりましたが、もうすぐ夏休みというタイミングで、毎日毎日お客さんがどんどん増えていき、あっという間に毎日お客さんが400人っていうトンデモナイ状態が続くようになりました。

業務内容は最初の2週間こそはてんぷら揚場、すし場などをちょこちょこやってはみたものの、徐々に肉・野菜カットマンという、厨房で使用する肉・野菜を各持ち場へ届けるための下ごしらへのカットを包丁でするというポストに落ち着いていきました。

湯快リゾートでの仕事は、基本的に各パート用に書かれている指示書にそって実施するようになっていて、例えばとりの天ぷらであれば、とりの胸肉2kgを解凍して、1個20gに切り分け、和風だしと水半々の汁に30分漬けたあとに、ざるで汁を切り、天ぷら揚場の冷蔵庫に入れておくという感じで、細かく指定されています。またお客様一人あたり3個食べるとして、60g✖お客様の人数分の用意をすると指定されていて、そこから昨日残っている在庫分を引いて、本日分を用意するといった感じで準備をするものでした。

指示書にそって、まあ100人だとそこそこ簡単ですが、これが400人となると、当然4倍の時間がかかるわけですね。湯快リゾートでは基本的に仕事が無限責任なのですよ。定時がくれば次の人に仕事をお任せするという仕事ではなく、あくまで指示書に書いてある食材を全部処理し終わったらお仕事終了ということなので、終わらなければどんどん仕事の時間が延びていくのです。

最初のうちは鶏肉どこ~? どのざるを使うの? 和風だしが切れていてみつからない~ などなど、指示書には書いていない項目でつまづくわけです。そんでもって他のポストの人に聞いても、けっこう知らなかったりするんです。めっちゃ分業がしっかりしているので、なんでも知っている人がいない。というかそもそもガンガン従業員が入れ替わっていくし、さらには日本人がどんどん少なくなって、モンゴル人や、中国人だらけで、日本語が通じない。

肉の切り方って縦でも横でも良いわけじゃないですよね。志摩彩朝楽がオープンした時からずっと働いているベテランの山田さんが、べらんめい口調で、色々と教えてくれたおかげで、なんとか少しづつできるようになりました。

湯快リゾートの仕事ってきついから、ほとんどの新規採用者が1週間とか2週間でやめていっちゃう訳です。3日同じポストをやったら、もうそのポストのベテラン扱いで、次に入ってきた人の教育係を任されたりするんですよ。そんなことできるわけありません。結果としてけっこう重大なポイントを教えてもらえてなかったり、覚えてなかったりで、結果として数々のトラブルが発生し、厨房長(この人が厨房で唯一の社員さん)が切れるというのが繰り返されていました。

湯快リゾートの食事風景

湯快ダイエット

仕事が全部終わらないと帰れませんので、朝6時に仕事に入っても、下手をすると午後2時くらいまで仕事をやる羽目になってました。それまで昼食は食べられませんし、仕事に追われて水分すらもとるのを忘れているうちに、ガンガン体重が減っていきました。

仕事が終わるとビュッフェの朝食の残り物をまかないとして食べられるので、ここでどかーんと大食いをするせいで、夕食はほとんどいらないって感じだったのも、体重減少に拍車をかけたみたいです。

さらには月水金は食材仕入れの日で、この日には大量の冷凍食品とか、野菜とかが運び込まれるのです。ブラジル産牛肉30kg段ボール10箱とかね。これらを冷蔵庫や、冷凍庫の奥側に入れて、前に入荷したものを手前に並び替えるという作業とかを、冷凍庫の中に入ってやる仕事があるのです。気温ー20度の中、20分くらい、汗だくで段ボールの積み替えをしていると筋力がついていきますよね。そうするとますまず必要カロリー量が増えていって、体重が落ちるのです。

結果として、7月―9月の3カ月で10kg体重が落ちて、75kgから65kgへと大変身することになったわけです。体重が減っただけでなく、筋肉量の増えました。わたしはこれを湯快ダイエットと名付けました。

スーパーセンターPLANT

志摩市にある大型スーパーセンター

湯快リゾートで3カ月の契約期間を全うしたあと、改めてハローワークに行き、今度は魚を調理できる仕事を探したところ、スーパーセンター(スーパーマーケットとホームセンターの両方って意味だと思う)PLANTの鮮魚売り場を紹介してもらいました。

PLANTでは従業員のほとんどが数年レベルで働き続けている人ばかりでした。湯快リゾートでは3か月でわたしは経験年数で上位4番目になってましたからね。PLANTではその後6カ月働くことになるのですが、鮮魚売り場ではわたしよりも後に配属された人はいませんでした。つまりは全員が先輩って訳です。

全期間を通じて、担当としては握り寿司で、シャリマシーンが造るシャリの上に、ネタを載せる作業がメインでした。
朝一番にたまご、蒸しエビ、つぶ貝の単品をつくり、8個セットの「ふじ」を作り、10個セットの「かえで」を作り、季節の寿司を作り、15個セットの「まんぷく」、豪華版11個セットの「とくせん」、最後に18個セットの「1180円」を各8~15個くらい作るってお仕事でした。

PLANTの寿司売り場

PLANTの場合には仕事は有限責任で、上記の作業が全部終わらなくても、12時になったら帰るっていう感じで、わたしが仕事がのろくって、まだまだ全部できなくても、ベテランさんが必ずフォローをしてくれるし、そもそも準備や、後片付けなどはほとんどベテランさんがこなしてくれていました。

失敗をしても、そんなにすぐに仕事を覚えられる訳がないでしょとか、それぞれの仕事をよくわかっていて、聞けば他の担当でもすぐに教えてくれて、いやー湯快リゾートとこんなに違うんだなあって、ものすごく良い勉強になりました。

鮮魚コーナーのチーフは自身が魚をさばきつつも、全体の差配ができていたし、寿司コーナーのチーフは正社員じゃなくバイトながらも10年選手で、握り寿司、巻寿司、ちらし寿司、さらには仕入れや、在庫確認まで完璧にできる人で、わたしはこころの中で「ミス・パーフェクト」って呼んで、尊敬をしているくらいでした。

PLANT社には労働組合があり、PLANT社自体がきちんと労働者を保護しなければいけないという思想のもとに労働者を使っているのが、湯快リゾートとの大きな差を生んでいるんだろうなあと思いました。

最後の2週間は鮮魚コーナーのチーフ自ら、わたしの包丁さばきの訓練をやってくださって、本当に面倒見の良い職場だったなあと感謝の気持ちでいっぱいになりました。流石に3月に入って、いよいよCometa伊勢志摩が営業開始ってタイミングになってしまったんで、アルバイト修行は終わりになりましたが、湯快リゾートとPLANTで色んな事が学べたなあと思います。

PLANTの鮮魚コーナー
志摩ではぶだいをいがみって言います

特にPLANTは本当にとりあえずなんでも揃う生活のよりどころなので、これからもお客さんとしてひいきにしていくつもりです。

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