丸投げする前に知っておくべき“賢い賃貸管理”のポイント

投資用マンションの賃貸管理は、専門的・法律的な知識を必要とする部分が多く、はじめての方には難しく大変な業務といえます。多くの方は管理会社に業務の一定部分を委託している状況ですが、なかには管理会社に業務を丸投げしてしまうオーナーもみられます。しかし、それなりの管理費を必要とする賃貸管理業務をすべて他人任せにして、効率的で安定的な収益をあげられるのでしょうか。

今回は、投資用マンションの賃貸管理について、管理会社の力を上手に借りながら、効率的・安定的に運用していくポイントをご紹介します。

1 賃貸管理業務の現状

投資用マンションの賃貸管理を行っているオーナーは、その業務の一定部分を管理会社に委託することがほとんどです。その形態は、大きく分けて次の3つに分けられます。

  • 一部委託

  • ほとんどすべて委託

  • サブリース

 1-1 3つの管理形態

「一部委託」とは、入居者募集や契約など専門的・法律的な業務のみを委託し、ほかの業務はオーナー自身が行う形態です。
委託部分が絞られるため委託料が節約できて経済的といえる反面、クレーム対応などもオーナーが受けることになるので苦労や手間がかかります。

「ほとんどすべて委託」は、専門的・法律的な業務のほか、家賃収納やクレーム対応なども含め、ほとんどすべての業務を委託する形態です。
オーナーは、業務のほとんどすべてを管理会社に任せているため、苦労が少なく安心して管理ができます。しかし、それなりの委託料がかかるため経済的とはいえないのがデメリットです。

「サブリース」は、物件の部屋または棟を管理会社が一括して借り上げ、それを入居者に貸し出すという転貸借の形態です。この場合、管理会社はオーナーに、当初設定家賃の80~90%の保証家賃を支払います。保証家賃は空室や家賃滞納の状態でも支払われるためオーナーにとって安心できる反面、後述するような数々の問題も抱えています。

大手の管理会社では、委託内容を何種類かにパターン化し、そのなかからオーナーがコースを選択しているケースが多くなります。

 1-2 サブリースの利用と問題点

「30年一括借り上げ」などの宣伝文句が代表的ですが、空室状態になった場合や入居者が滞納した場合にも一定額の家賃が保証されることから、オーナーにとっては一見安心して賃貸経営ができる契約形態にみえますが、注意点を知る必要があります。

契約途中で保証額が下げられる
サブリース契約で問題となるのは、数年ごとに保証家賃額が見直されることです。物件は、一定の築年数が経過すれば資産価値が低下して家賃額もそれに応じて下がることは自然の成り行きです。ところがサブリースの保証額見直しでは、そのような世間相場を越えて下げられてしまうケースもあります。

突然の解約もありうる
また、入居者募集用の期間として家賃保証がされない免責期間(通常1~3月間程度)が設定されている場合、その間はオーナーに保証家賃が支払われなくなります。
さらに、対象物件が安定的に収益を生み出さないと判断された場合は、契約期間の満了を待たずに解約されてしまうことなども問題視されています。
サブリース契約を締結する場合、業者側に将来の保証家賃の減額について書面に明記し、説明することが義務づけられています。しかし、トラブルに発展する事例では、オーナーの理解不足や思い込み、または、業者の説明不足が原因であるケースが多くなります。
サブリース契約を検討している方は、事前にそのリスクを十分に把握し、将来被るかもしれないデメリットについて十分に理解しておく必要があります。

 1-3 どの管理形態を選べばいいの?

一部委託、ほとんどすべて委託、サブリースの管理形態のいずれを選ぶかは、「管理対象物件の数」「貸主であるオーナーの稼働可能時間」「入居者の経済的な富裕度」などの事情で異なります。
たとえば「管理戸数が多い」、または「管理業務に専念できる時間が少ない」貸主は、委託範囲を広くとらなければ対応が困難な場合も考えられます。

また、低所得の入居者を想定して低い家賃を設定している物件では、家賃滞納の危険が増えるため、督促事務も多くなる可能性があります。
投資用物件の賃貸管理は、長期にわたり継続して行うものです。そのため、全体収支の中で可能なかぎり効率性・経済性・安定性を追及することが求められます。

上手に賃貸経営を進めるためには、「貸主側が自ら対処できる分野」「貸主が対応するよりも専門家の手に委ねる方が効率的と考えられる分野」について見極めることが大切です。

2 賃貸管理業務の内容と貸主対応の可否

ここでは、実際の賃貸管理業務について、個別の内容と貸主対応の可否について説明します。

 2-1 入居者募集業務

まずは「入居準備募」や「入居者募集・契約業務」のポイントについて見ていきましょう。
入居者募集業務の内容と貸主対応の可否
業務:貸主の対応
入居準備(リフォーム、老朽化・故障した設備の交換や修繕):△(現地確認・修繕範囲決定)
入居者募集:✕
入居契約(敷金・礼金等の授受を含む):✕
(注)○印=対応可能、△印=一部対応可能、✕印=対応困難

入居準備業務のポイント
入居準備では前の入居者の退居後に室内を原状回復し、設備を整えておかなくてはいけません。リフォームや設備の更新をどの程度行うかは、なかなか難しい問題です。費用をかければきれいで快適になりますが、その分支出が増えるため経営収支のバランスを考える必要があります。
入居準備のすべてを業者任せのオーナーもなかにはいますが、貸主自らが現地確認をし、管理会社と相談しながら、「リフォーム箇所の選定」「設備の交換範囲」「入居審査・入居者決定」を進めることが大切です。

入居者募集、入居契約業務のポイント
入居者の募集をするさい、賃貸住宅を広く宣伝しなくてはならないため、不動産会社のネットワークや宣伝力に頼る方法が最も効率的といえます。早期に空室を解消できる可能性が高くなります。
入居契約では、その内容に専門的かつ法律的な知識を必要とするため、業者に任せるのが適切と考えられます。
以上から、入居者募集業務ではオーナーが積極的に対応できるものはあまり多くないといえるでしょう。管理会社を信頼しつつ、迷惑にならないよう適度に関わるのが良いでしょう。

 2-2 入居管理業務

次に、「入居管理業務の内容」と「貸主が対応可能となる業務」についてみていきます。
入居管理業務の内容と貸主対応の可否
業務内容:貸主の対応
家賃収納:○
家賃滞納に対する督促:○
設備故障時の交換・修繕:○
クレーム対応:○
事故対応:✕
契約更新:✕
(注)○印=対応可能、△印=一部対応可能、✕印=対応困難

 2-3 事故対応と契約更新

賃貸管理業務で最も長い時間を占めるのが入居管理業務です。事故対応や契約更新をのぞけば、ほとんどが貸主で対応することが可能といえます。
事故対応は自然災害や犯罪などを原因とする非常事態であるため、専門業者に任せるほうが良いでしょう。また、契約更新は専門性が求められる法律行為であるため、やはり専門業者に任せたほうが安全かつ迅速に処理できるでしょう。

貸主が対応する際の注意点
家賃滞納に対する督促は貸主でも対応ですが、入居者の所得階層により対応の仕方や頻度が異なってくるので注意が必要です。さらに、設備故障時の交換・修繕、キッチン排水管の水漏れなどは連絡を受けたら即座に対応しなければならない分野であるため、サラリーマンオーナーでは、対応が難しい場合もあります。

 2-4 退居業務

「退居業務の内容」と「貸主が対応可能と考えられる業務」についてみていきます。

退居業務の内容と貸主対応の可否
業務:貸主の対応
契約の解約:✕
退居確認:△(現地確認・修繕範囲決定)
家賃・敷金の清算:○
(注)○印=対応可能、△印=一部対応可能、✕印=対応困難

契約の解約は法律行為のため、専門業者に任せたほうが無難といえます。
退居確認は、退去者とともに物件の現状を確認し、次の入居準備のため、リフォームや設備の交換・修繕の範囲を決める業務です。貸主が積極的に関与ができる分野です

また、退居時の家賃や敷金の精算も、貸主対応が可能な業務です。ただし、大手の管理会社に退居業務を委託する場合は、一括でそのなかに組み込まれるため、家賃・敷金の清算事務だけを切り離すのは難しい場合もあります

3 まとめ

賃貸管理業務について貸主であるオーナーが対応できる分野は多岐に渡り、それぞれの業務量をみると入居管理業務が比較的多くなりますが、「家賃収納」は金融機関への振り込みや自動引き落としが一般的です。したがって「滞納家賃の督促」「設備故障時の交換・修繕」「クレーム対応」について、オーナー自身がどう対処するかがポイントになるでしょう。
管理会社の委託費用は、毎月継続して発生することから少しでも減らす形が望ましいのですが、オーナーが対応できる時間や業務内容には限りがあるため、自分の置かれている状況に応じて対応可能な範囲を見極め、管理会社が持つ専門知識や組織力を上手に使い分けていくことが重要です。


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