見出し画像

空き家問題より深刻? 誰も相続しない土地の行方は〜400年の歴史を守る70代ご夫婦のストーリーから

ひょんなきっかけで知り合った70代のご夫婦。
お話を伺っていたら、戦国時代の末期からこの地で暮らしてきたということでした。つまり、400年以上もこの地に住み続けている。しかし、今その地を受け継ぐ人がいないというのです。

お子さんがいないわけではありません。でも、全員が「相続したくない」と言っているということなのです。

大きな家屋と、それが更に何棟も建てられそうな広々とした土地。少し離れた所には田畑がいくつかあり、さらに山林もある。庭の手入れだけでも大変そうなのに、田畑や山林の管理も加わるとなると……。

管理するだけでも頭が痛いのに、固定資産税まで払わなければならないのは馬鹿らしい、とい考えになるのも無理はありません。僕も、もしその立場になれば、やっぱり「なんの罰ゲームか」と思ってしまいそうです。

不動産屋には売却の相談したこともあるそうですが、二足三文だったそうです。じゃあ、自治体に寄付しようにもハードルが高そうです。
ご自身も高齢になってきており、いつまで管理できるか分からない状況で、半ば途方に暮れているようです。
(一方で、花を育てたりをして、楽しんでもおられるんですが)

実は、こんな話は至る所で耳にしてきました。その度に、僕は途方に暮れます。移住を支援する立場ですが、これではちょっとやそっとの移住者が来ても暖簾に腕押しではないかと、つい考えてしまいます。

移住者を迎えられたとしても、これほどの土地を扱える人ばかりではありません。むしろ、扱いきれない人のほうが多いかもしれません。現実的には、母屋とその周辺だけが管理・活用できるのが精一杯ということになりそうです。

ここからは私見ですが、いずれ、相続されずに宙ぶらりんになる土地が増えるのではないでしょうか。
今年度から相続登記の義務化が決まりましたが、登記簿を書き換えるだけでも相当な金額がかかります。それが足かせとなっている部分も多いでしょう。相続登記がされてこなかったことで事態が複雑化しているのは分かりますが、さらに事態を複雑にしている面もありそうです。

個人的には、人間が開発した土地が自然に返されるだけだと考えれば、悪いことではないと言えます。しかし、人間が築いた現代の社会システムにとっては多大な負荷がかかることが予想されます。
現代は個人の所有の概念が強いので、それを緩めて、せめて、コミュニティや地域が所有する形に変えられたら良いのではないかと考えています。

いずれにせよ、僕は、たとえ小さな一歩でも、自分のなすべきこと、やりたいことに徹するだけではあるのですが。