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「憲法?そんなの関係ねー」という君へ

こんにちは!皆さん、ゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしょうか。

さて、ゴールデンウィークを構成する休日の1つである今日、5月3日がなんの日だか、皆さんはご存じですか?

 今日は憲法記念日です。74年前の今日、「日本国憲法」が施行されました。昨年の今日は「憲法の基本のき」と題して、そもそも憲法ってなんだっけ?という話を書きました。「憲法ってなんだっけー??」という人はぜひ、こちらを読んでください!


 今年は「憲法?そんなの私に関係ねー。」と思っている方に、ぜひ知ってほしい憲法の話を書こうと思います。

 憲法は私たちの生活からは少し離れた話に思われがちかもしれません。しかし、よくよく読んでみると、私たちの生活が憲法で保障された権利の上に成り立っていることがわかります。皆さんは自分の権利が守られていない!と感じた事があまりないかもしれません。私もあまりありません。でもそれは当たり前の事ではなくて、実は憲法で様々な人権が保障されているからかもしれません。

 少しややこしい話を書きます。読むのがめんどくさい!という方は、ぜひ、「君は君であるだけで尊重されるよ!」というくそくさい台詞が書いてあるところまで読み飛ばしてください。「気持ち悪いからやだ・・・」なんてどうか言わないで・・・・。

 憲法は「国家の基本法」と「国家権力を制限して国民の権利を守るための法」という2つの性質を持っています。特に近代憲法は2つ目の性質を重要視して作られたものです。「憲法を制定することによって国家権力に縛りをかける」という考え方を、「立憲主義」と呼びます。

 日本では今、憲法を改正しよう!という意見も多くあります。その中には憲法の「国家の基本法」としての役割を重視して、もっと国の在り方について憲法に書き込もう!という意見も多く聞かれます。また安全保障分野に関しても、現行憲法に問題があるのでは?という意見もあります。

 今回の記事ではこれらの論点には触れず、主に人権について定めた条文について考えていきます。主に現行憲法について考えていきますが、「この憲法はこんなに素晴らしいから絶対変えちゃいけないよ!」という立場をとるものではありません。これからの憲法をどうしていくかは、私たち一人一人が考えていかなくてはいけないことです。そのためにも、まずは今の憲法について知らなくてはいけないですよね?

目的の人権、手段の統治機構

 日本国憲法は大きく分けて人権にかかわる条項と、統治機構に関する条項に分かれています。全体は11の章と103条の条文で構成されています。

 一章は天皇について、二章は戦争の放棄を定めたもので、どちらも大切なものですが、少し異質だといえるかもしれません。日本国憲法特有のものであるこれらの章は、この憲法が第二次世界大戦と、戦前の社会の反省の上に立って制定されたものである、という事が現れている箇所と考えることができます。しかし、これらの論点については複雑な議論がありますので、今回は深堀するのは避けておきましょう。詳しく知りたい人はぜひ調べてみてください。

 さて、第三章がいよいよ「国民の権利及び義務」に関して定めた章です。第四章以下は、三章に書かれている権利を守るために、国家権力を担う「国会、内閣、裁判所」の在り方について定めたものがメインになります。

 憲法を制定する目的として「人権の保障」があり、その目的を達成する手段として「統治機構」に関する規定がある、というイメージです。

君は”君である”ということだけで、大切にされるよ!

 日本国憲法第13条は「すべて国民は、個人として尊重される」と規定しています。簡単に言えば「君は”君である”というだけで、大切にされるよ!」という事です。

 めちゃくちゃくさい台詞みたいですね(笑)。でも、憲法は拘束力を持った立派な法です。その憲法さんは、実はこんなくさい台詞を言っているのです。

 続いて憲法は「生命、自由、及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」としています。この「公共の福祉に反しない限り」というのが少々曲者なのですが、これについては以前の記事で書いたのでそれを引用します。

 公共の福祉をどのように解釈するかには議論がありますが、基本的には「他の人権を害しない限り」と解釈されます。公共の福祉を「社会公共の利益」ととる考え方もあるようですが、日本国憲法には「すべて国民は個人として尊重される」と書かれており、公共の福祉を社会公共の利益ととらえてしまうと、個人よりも社会全体が大事、ということになり、「個人の尊重」の考え方と相いれないことから「他の人の人権を害しない限り」ととらえるのが一般的です。

差別はNG!!

 憲法第14条は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない」と定めています。

 「あなたは女だからこれやっちゃだめ!」「あなたは△△家の子供だから、◎◎家の子より偉いのよ!」「あなた東京都出身だからお給料アップね!」などという差別はNGだよ!という事を決めているのです。

 「あれれ?本当にこれ、守られている?」と思った方もいるかもしれません。確かに、日々の生活の中では悲しいことに、性差による差別などが依然として存在しています。

 でも、昔は更にひどかった。例えば、戦前の社会では女性に参政権が与えられていませんでした。女性は選挙に立候補できなかったばかりか、投票さえできなかったのです。

 また、「部落差別」というものも存在しました。特定の地域に住む人を「えた・ひにん」といって差別していました。住む地域を特定して引っ越しを許可しなかったり、特定の職業にしかつけないようにしたこともありました。彼らの子供と自分の子供を結婚させない、といった差別は長い間残りましたし、現在も完全には払拭されていないようです。国は「部落差別解消法」を制定し、解消に向けて取り組んでいます。

 つい最近、この憲法14条に基づいて「同性婚を認めないのは差別だ!憲法に反している!」という判決が北海道地裁ででました。このテーマについてはまた別の記事で詳しく書いてみたいと思います。

 このようにこの憲法14条を実現するための取り組みはまだまだ続いています。まだ完成していません。でも、この条文がなかったら、ここまで書いたような差別がまだ残っていたかもしれませんし、差別をなくしていく努力さえされなかったかもしれません。憲法が社会のお尻を叩いているのです。


 更にここで重要になってくるのは、憲法は国民を縛るものではなく、国を縛るものである、という点です。この憲法14条の大きな意味は、国に差別的な法律を作ったり、制度を運用したりすることを禁止し、そういった差別を解消する義務を課している点にあります。

自分で仕事、選んでいいんだよ!

 「自分が将来やる仕事は自分で選んでいいんだよ!それに住む場所も自分で決めていいんだよ!」・・・え、そりゃそうでしょ、と思った人もいるかもしれません。憲法第22条は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定してます。

 もし、この条文がなかったら、「あなた長野県生まれだからリンゴ農家にしかなっちゃだめだよ。リンゴ農家になりたくないから引っ越したい?だめだよ~、そんなこといっちゃ。許可できません!」なんていう法律ができてしまうかもしないんです。

勉強していいよ!

 「ええー、私勉強嫌いなんだけど・・・。」そう思う人もいるかもしれませんが、憲法第26条は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。」と定めています。

 実をいうと私も勉強がすごく好きな方ではありません(笑)。でも、昔は基本的な読み書きさえ勉強させてもらえない時代があったんです。よく考えてみると、この権利が保障されていなかったら、私たちが日常的に使っている文字でさえ、勉強させてもらえなかったもかもしれないんです。そうしたら、かなり困りますよね・・・。LINEでやりとりとか、不可になってしまいますもんね。

 第26条は続いて、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育はこれを無償とする。」と定めています。「義務教育だから、あんたは小学校と中学校まではいかないといけないんだよ」と親から言われたことがあるかもしれません。

 厳密にいうと、これは間違いです。子供が持っているのは「学ぶ権利」であって「義務」ではありません。義務を負っているのは親の皆さんです。まぁ、言葉遊びみたいなもので、だからと言って学校に行かなくてもいいっていう話にはなりませんが・・・・。

 将来、子供ができたら、自分たちの親がしてくれたように、自分の子供たちもちゃんと学校に通わせてあげなくてはいけませんね。

以外と身近じゃない?

 ここまで読んでくださって。ありがとうございます。以外の身近に感じられませんか?

 ほかにも憲法は、私たちの生活の基盤になる権利を守る役割を果たしています。自由に集会やっていいよ(集会・結社の自由=第21条)、考えたことを本にしたりして発表していいよ(表現の自由=第21条)、何かを考えるのは君の自由だよ(思想及び良心の自由=憲法19条)などなど・・・。

 憲法第12条は「この憲法が国民に保障する権利及び自由は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定めています。

 この記事を機会に、ぜひ皆さんも憲法について考えてみませんか?

                Colorul democracy  松浦薫

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