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Collective Intelligence Special Session ~間違いだらけの睡眠都市伝説…正しい睡眠を知る~ #1

Collective Intelligence 『Special Session』 とは

通常回で知見の共有をいただいた方から、さらに知見の深掘りを行う会です。過去の参加者であれば誰でも参加できる特別な50分のナレッジシェアセッションです。

今回は”睡眠”について、記事が長くなってしまいましたので、複数回に分けてnoteでお届けします。


Collective Intelligence Salonについてはこちら。
https://note.com/collective/n/n4b4a6d559ace


進行:Kさん
コロナ前後の近況についてナレッジシェアするCollective intelligenceのスピンオフ会の第二弾として、今日は「睡眠」をテーマにディスカッションします。睡眠について、私たちが知っていること、知らないこと、知ってるようで知らないこと(誤解していること)について専門家を交えて情報共有する場として今回のセッションを組ませていただきました。

今日のセッションは3つのテーマを設けてみました。
最初は『間違いだらけの睡眠都市伝説』と題して、ちょっとキャッチーな言葉ですね。
ここでは「睡眠に対しての誤解」がこんなにあるんだよと、睡眠博士のS先生からご紹介いただこうと思っています。
二つ目は、昨今のコロナを背景に社会情勢が変わり影響を受けていると思います。そこで睡眠にも知られざる変化がでている、という話を紹介していただごうと思っています。
三つ目は、「より良い睡眠を」というテーマで、私たち個人がそれぞれより良い睡眠に向かって何ができるのか?何をしたらいいのか?何をしたらダメなのか?みたいなところをご紹介いただきたいと思っています。
最後は簡単に質疑応答ができるような形を取らせていただきたいと思っています。

『間違いだらけの睡眠都市伝説』


進行:Kさん: 一番最初は『間違いだらけの睡眠都市伝説』です。ゴールデンタイムとかいろんな言葉が飛び交っていると思います。これらについて睡眠の専門家視点から、「これは全然違う」「これは惜しいけど外している」など、世間の間違った理解に対すて啓発を兼ねてS先生に解説していただきたいと思います。それではS先生にバトンを渡します、よろしくお願いします。


睡眠のゴールデンタイムの真実

S先生: 皆さんにも耳馴染みのある「睡眠の常識」って色々とあると思います。例えば、「早起きは体にいい」「ゴールデンタイム」などなどです。睡眠のゴールデンタイムが午後10時から午前2時であると本当と思ってる方どれくらいいらっしゃいます?、...ありがとうございます。
さて皆さん、午後10時から午前2時にしっかり寝ていなさいって...時間的に結構早くないですか?午後10時に寝ていられますか?という問題です。
結論からいってしまえばゴールデンタイムたるものは存在しません。その裏付けがこちらです。


ゴールデンタイムの根拠とは?

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Van et al: Modulation of glucose regulation and insulin secretion by circadian rhythmicity and sleep. J Clin Incest. 88: 934-942, 1991.


1991年の論文を紹介します。この実験で何をやったかというと、20代男性8名を被験者として18時から翌々日18時すぎまでの48時間余り、20分に1回採血をして生化学検査をタイムコースで実施するという実験を実施しています。
グラフの読み方については、縦軸が成長ホルモンの量を示していて、横軸が時刻を表しています。はじめに実験を18時に開始しています。22時過ぎのところからノクターナルスリープと書いてありますが、平たく言えば寝かせたということです。その結果、この被験者は大体22時から2時の間に集中して成長ホルモンが出ていました。そして、この実験には続きがあり、さらにノクターナルスリーブデプリベーションって書いてあるところが、『断眠』すなわち寝ないようにした時間となります。この断眠時には成長ホルモンが全く出ていないことが示されています。

睡眠のゴールデンタイムは日本のマスコミが作り出した都市伝説

面白いことにこの話には続きあります。日本のマスコミが、はじめの22時から2時の成長ホルモンの分泌具合から「成長ホルモンが分泌される時間は22時から2時だ」と表現したんです。しかしながら、断眠後のデイタイムリカバリースリープの時間帯(徹夜した分、翌日昼10時から改めて眠った時間)にも成長ホルモンが分泌されていました。簡単に言えば、22時から2時以外でも、たとえお昼の時間であっても眠ることで成長ホルモンは分泌されるということです。これから言えることとしては、22時から2時がゴールデンタイムであるというのは日本のマスコミが発信し広く知られる結果となり、都市伝説となってしまいました。実際には成長ホルモンは、睡眠時の最初の熟睡時に分泌されるホルモンであり、分泌される時間は22時から2時で固定されているわけではないということです。したがって、生活的には22時から2時の間に寝ていなければならないということは全く根拠のないお話です。
というわけで、「ゴールデンタイム」は都市伝説であったいうことがお分かりいただけたでしょうか?


進行 Kさん: ありがとうございます。これは言い換えると22時から2時に寝ていないと美容に悪いっていうお話も都市伝説で気にかける必要はなさそうであるということですね。

S先生: はい、その通りです。よく外来などでも聞かれるんです。「私、22時に寝てないからきっと肌が荒れたんです」って、それも原因は別になるということです。睡眠が不十分だと肌環境は悪化しますので、22時か2時の睡眠に限らずとも、眠るのが遅すぎて十分な時間寝てないとか、熟睡していないって環境があれば成長ホルモンも分泌されにくいと思います。しかし、時間帯自体はあまり関係がないといっていいと思います。

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まだまだ睡眠についてのお話は続きますので、次回も乞うご期待。


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