いつかオイスターバーで泣く日
オイスターバーで泣いてしまう自信がある。
私の一日は、朝6時にスタートする。双子の娘たちが起床する前に、雑務をこなしておきたい。
その日のタスクを確認してから、お化粧とヘアアレンジを済ませる。外出の予定がある日もない日も、身支度は整えておきたい派。いろいろな音声配信を聞きながら、朝食の用意もする。余裕があればエッセイや短編小説を一篇、読む。
夜は、娘たちといっしょに雑魚寝スタイルを取っている。家を建てて3年半。寝室にある私専用のベッドで眠ったことはまだない。
6歳にして甘えん坊な一面を残す娘たちは、自分たちのベッドを買ってもらう日を楽しみにしながらも「まだママと寝るからね!」と言っている。彼女たちはたまに夜中に起きてくることがあって、そのときに私がいないと大騒ぎだ。
だから、私にとって、夜の外出は当分無理だと言っていい。
小学生になったらそれぞれ私とは別に寝てもらう計画だけれど、果たしてうまくいくかどうか。娘たちだけで就寝するスタイルが定着しても、目が覚めたときに私がいなかったらまたワーワーと騒ぎそうな気がする。
そういうことを考えている最近、なぜかオイスターバーに行きたくて仕方がない。
牡蠣は私の大好きな食べ物だ。豊かに膨らんだ身を口に含むことを考えただけで、ほうっとため息が出そう。あの滋味あふれる風味と磯の香り。たまらないんだなあ。
オイスターバーに行くなら、絶対に夜がいい。大人だけで会話を楽しみながら、食べごろの牡蠣に舌鼓を打つのだ。
今はまだ難しいだろうと、諦め気味。でも、遠くない将来、オイスターバー計画は実現すると見込んでいる。
もう少ししたら、娘たちも一人で問題なく眠れるようになるんじゃないか。「ママ、夜にお出かけしてもいいよ。パパがいるから大丈夫」なんて、言ってくれることがあるかもしれない。
そうなったら、私は「あの子たちは、私がいなくちゃダメなのよ」という考えが幻想みたいなものだったと気づくに違いない。子どもはすぐ大人びて、親なんていなくても平気になっていく。母親が出かけていたって、どうってことないと思う夜がくる。
「私がいなくちゃ」はたぶん、期間限定の幸せ。夜のオイスターバーで、ふるふると身を揺らす牡蠣にかぶりついたとき、きっと私は泣いてしまう。
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