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幸せな青い鳥

その鳥は、「幸せの青い鳥」と呼ばれていた。

その鳥を手元に置いておくと、
いつまでも変わらない幸福が味わえる、と言われた。

人々は、青い鳥の幸運な飼い主をうらやんだ。

飼い主は、青い鳥を大切に、可愛がった。


青い鳥は、幸せだった。

飼い主からは、とても重宝され、
何ひとつ不自由なく与えられた。

鳥かごの中にいれば、
何もかもが大丈夫だと思えて、安心できた。

青い鳥は、飼い主のことが大好きだった。

いつも、飼い主のために、歌っていた。



数年がすぎたある時、青い鳥は思った。

「鳥かごの外を見てみたい」


最初は、そんなことを願ってはいけないと思った。

ご主人様のために、ボクは、ここにいなければいけない。

ここにいれば安全で幸せなのだから、我慢しよう。

そんな風に、自分を戒めた。


でも、その願いは、
青い鳥の考えとは反対に、
日に日に大きくなっていった。

美しい日の光や、そよぐ風を感じるたびに、
外の世界のことを、うっとりと想像した。

あの虹の根元へ行ってみたい。

あの木立と戯れられたら、どんなに楽しいだろう......。



そして、ついに、
青い鳥は飛び出した。

誰かを幸せにすることではなく、
自分自身を幸せにすることを求めて。



外の世界は、想像以上に過酷だった。

鳥かご育ちの青い鳥を、いくつもの困難が襲った。

野生動物に狙われ、嵐の雨に打たれ、
ささくれ立った植物のトゲにやられた。

虹に近づこうとすればするほど、それは遠ざかり、
自分でごはんを見つけることの難しさも思い知った。



そうして、美しかった青い鳥は、
いつしか見る影も無いほど変わり果てて、
ボロボロになってしまった。

疲れ果てた青い鳥の命は、消えようとしていた。

薄れていく意識の中で、青い鳥は、
最後にこう思った。


「外の世界を知れて、良かった」



勇気を出して、外に飛び出したこと。

結果が全てではない、ということ。


それは、青い鳥が初めて知る、
心からの喜びだった。



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