はじめの第一歩(後編)
※この記事は、以下の記事(歌詞が書けない駆け出しのシンガーソングライターが、前を向くきっかけとなったお話)の後編です。
ギアチェンジ
「よし、やるか。」
腕をまくってペンを握り、ノートに想いを書き連ねはじめると、もうこっちのものだった。
あんなに悩んでいたことが嘘のようにペンが走り、ノート1ページがあっという間に自分しか読めなそうな文字で埋まった。
◇
一番好きな作業
「できた〜〜〜!」
と伸びをするのも束の間、せっかく勢いに乗ってきたのでこのままメロディを考え、その音に言葉を当てはめていく作業に移行することにした。
私はこの工程が一番好きだ。殴り書きの文章が少しずつ歌の形になっていくのが目に見えることが嬉しい。
持ち合わせている語彙が乏しいため、[楽しい 類語🔍]などとネット検索によくお世話になるのだが、ここで新たな言葉を知ったり、「この言葉、こうやって使うんだ〜!」などを知れることも何気に楽しみである。
◇
とにかく今はやってみよう
わくわくしながら試行錯誤をしていく中で、自分のはじめたてのギターの音を聴くと相変わらずの下手くそさに気分が盛り下がりそうになった。
そもそも歌自体もまだまだであるが、弾き語りとなるといつもの数倍難しい。
「く〜〜〜っ」と心が折れそうにもなったが、
「今日のベストなら良いよね。少しずつ更新していこう。」
なんて言い聞かせた。
それでもくじけそうになった時には、憧れのステージの上でスポットライトに照らされて、「あの日はじめてよかったなぁ」と微笑む姿を想像してみると、少しだけ気分が和らいだ。
「今はうまくなくても、かっこよくなくてもいい。それよりもやってみること、続けることが一番大切な時期。心のままに歌えばいいんだ。大丈夫。」
そう言い聞かせ、自分をなだめた。
◇
約半年間を振り返る
ふと、意を決してInstagramで歌の発信をはじめた去年の12月から今までの約半年間を振り返ってみると、色々なことが起きていた。
・5社のLIVE配信の事業をしている事務所にスカウトしていただく
・"歌うことがすきな人"を応援するアカウントに掲載していただく
・私の声が好きだと言ってくださったり、感動して涙が出たとメッセージをくださる方がいた
・大好きなアカペラクリエイターのとおるすさんにいいねしていただ
・RADWIMPSの野田洋次郎さんがストーリーを見にきてくださった
・友達とコラボ動画をつくった
・オンラインでLIVEに出演させていただいた
・オリジナル曲が2曲できた
去年の今頃、本当は歌が好きな気持ちがあるのに何もはじめず夢を見るばかりで、居酒屋店員として毎日15時間働いていたことと比較してみると、この半年間で起きたことはどれもミラクルと言っても過言ではなかった。
「歌好きだけど上手じゃないしなぁ...こんなの発信してばかにされたら嫌だなぁ」などと足踏みしていた自分にとっては、発信をはじめてから半年も続けられていること自体が、スーパーミラクルだ。
(2019.12)
(2020.7)
私が行動できた一番大きなきっかけは、ご自身のやりたいことで大活躍している先輩に、歌の発信をしたいけれど怖いんですよねと相談した時に、
「はじめはみんな怖いと思うし、怖くて当たり前。自分も今でも新しいことをする時には怖いよ。でも、怖くても良い。大丈夫。一緒に一歩踏み出してみようよ。」と背中を押してくれたこと。
「私にとって大尊敬するあの人も怖いんだ!」と知ると少しだけ不安が和らいで、やってみようという気持ちになれた。
◇
タイトルの由来
さて、残すはタイトルだけの段階になった。
一番はじめに思いついたたタイトルは、"タイムカプセル"。
『数年後の自分やこの歌をきっかけに頑張ろうと思ってくれたみんながここに戻ってきて、「そんなこともあったなぁ」と微笑ましく思えるような歌にしたい!』
と思った。
しかし、タイトルが歌詞とかけ離れすぎている。
「うーーーん。
一歩、
一歩踏み出せるような歌。
はじめの一歩、いやそれはお父さんが好きなボクシング漫画。
はじめの第一歩。
お!はじめの第一歩いいじゃん!!」
だるまさんが転んだのときの大きく勢いをつけて思いっきり踏み出すあれ。
踏み出したくても踏み出せない状態からこの曲をきっかけに、あんな風に飛び出せたら最高だ。
横一列に並んでいるみんながそれぞれの歩幅で進む感じも良いじゃない。決まり〜〜〜!
こうしてタイトルが決まった。
◇
そんな歌ができました。
◇
あとがき
ドタドタドタッと階段を降り、
ガラガラッとドアを開け、
「できたーーーーー!」と妹に言う。
「お!きかせてみ?」
相変わらず憎たらしい口の聞き方だ。笑
「ギター持ってくるーーー!」
と、またドタドタドタッと階段をのぼり、
ギターを持ってドタドタドタッと階段を降り、
ガラガラッとドアを開けてソファに座る。
あれ?なんか緊張するするなぁ。
「ふぅ〜〜〜。」
深呼吸をし歌いはじめる。
...
歌い進めていると、涙が出てきた。
予期せぬ状況に自分で驚く。
等身大な歌詞だけに感情がこもりすぎたようだ。自分の歌ってすごい。
歌い終わり我に帰ると、いつの間にか汗をびっしょりかいていた。
ノースリーブのぺらぺらのワンピースなのに。
こみ上げて来た安堵と恥ずかしさに耐えられなくなり、気をを紛らわせるために妹の顔を見ると、確かに瞳が潤んでいた。
おしまい
大切なお時間をいただきありがとうございました💐