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ちょっとした贅沢

一年に一度、行く喫茶店がある。
どうして一年に一度かというと、毎年受ける人間ドックを受ける場所の近くに、その喫茶店があるからだ。
広くて、店内のデザインやレイアウトどこか北欧が風というか、とても雰囲気がよくて居心地がいい。そこも気に入っているのだが、それと同様にその店の出すモーニングがとてもおいしいのだ。
人間ドックでもらえる食事券では、二種類のモーニングセットから選ぶことができるようになっていて、メニューは「サンドイッチセット」と「トーストセット」だ。
毎年、そのどちらかを注文しているのだけれど、今回は少し思うところあって、ちょっとだけ贅沢がしたくなったのだ。
聞いてみると、料金をプラスすれば、別のモーニングも注文できるということだったので、今回は、甘くておいしそうな「フレンチトーストセット」を注文する事にした。
カウンターの向こうで、店員さんがコーヒーを淹れ、料理を作っている。
趣味のいいジャズが店内に流れている。
こんな空間にいると、時間が少しだけブレーキをかけて、ゆっくりになったように思えてくる。

しばらくして、フレンチトーストセットが運ばれてきた。
コーヒーとフルーツ、小さなサラダと、それからフレンチトーストだ。ボリュームも十分で、幸せな気分になる。


ぼくがはじめてフレンチトーストの存在を知ったのは、1980年公開の映画「クレイマークレイマー」の中で、ダスティン・ホフマンが子どものために、フライパンでパンを苦労しながら作っているのを観たときだ。その時は、フライパンでパンを焼くなんておかしいんじゃないか、とおかしかったのだけれど、その後になってそれがフレンチトーストだったのだな、と知ることになった。

映画の中では、確かうまく焼けなかったように記憶しているけれど、やはり甘~いフレンチトーストという存在は、ぼくの中でどこか特別な存在になっている気がする。幸せの象徴のような。

出てきたプレートを見ると、食べる前にメイプルシロップをかけるタイプみたいだ。ふわふわでしっとりとしたパンの上に、メイプルシロップをたっぷりかけていただいた。ほんとにたっぷりだったので、とてもうれしくて、気持ちが和らいだ。

甘くておいしいトーストを口にするたび、心の中の何かがほどけていくような気がすた(ちょっと大げさかな)。

実のところ、仕事での大きめのストレスをかかえて、気持ちが少し落ち気味だったのだけれど、フレンチトーストを食べ終えたらどこか前向きになれた気がした。

美味しいものの力はすごい。

帰り際には、いつも迷って買うことのなかったコーヒー豆(この店のオリジナルブレンド)を、200グラム買うことにした。

前向きな気分を、いくらかでも持って帰れるかもしれない、という気持ちが働いたのかもしれないな。

読んでいただいて、とてもうれしいです!