翼、銀杏の葉のごとくあれ
4月の異動で職場が変わった。
1年で新たな職場になり、環境も勤務時間もガラリと変わった。
去年も異動で新しいことを覚えたのだが、また今年も新たなことを覚え、そして新たな人間関係をふたたび築いていかなくてはならない。
これだけ頻繁に環境が変えられると、頭も体もついていかない。
何とかしてくれと、そう訴えたいが、どうなるものでもない。
時すでに遅しである。
しかも、新たな部署は人手不足ときている。どういうわけか、4月になり人が減らされ、かつメンバーがごっそり入れ替わったのだ。
そんなわけで、てんやわんやの職場なので、とにかく頑張るしかない、という状況なのだ。
とはいえ新しい職場では右も左もわからない状態で、何かひとつするにも時間がかかってしまう。例えば文房具がどこにしまってあるのかでさえ、誰かに聞かなくてはわからない始末なのだ。
まるで、翼をもがれた鳥のような感じである。
自由に飛び回ることもできず、今は低いところで、よたよたと行ったり来たりを繰り返すばかりだ。
はたして、再び翼を生やし羽ばたくことはできるのだろうか?
職場の窓からは、大きく成長した銀杏並木が見える。その銀杏は毎年冬になると、枝をバッサリと切り落とされてしまう。しかし、秋までにはその枝ぶりを毎年立派に蘇らせるのだ。
この春も、切られた枝のその先からはすでに新たな枝が生えだし、柔らかそうな若葉が萌えいで始めている。その新たな枝葉は、強い生命力に支えられながら再び空に向かって盛大にのび広がっていき、やがて秋にはきっと、その葉を見事な秋色に色づかせるのだろう。
翼をもがれたような今のぼくであるが、その銀杏のように再び翼を復活させることができるだろうか。
自分自身の中にあるその生命力を、今は信じるしかないのである。
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