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笑顔のちから

 先日、ぼくの職場にある業者が訪れた。
 年末にあたり、仕事で使う機器の点検に来てくれたのだ。その時、ぼくともう一人の職員とで対応したのだが、作業に入る前に廊下を歩くながら、業者の方が、
 「来年のカレンダー持って来ましょうか?」
 と言う。
 年末ともなると、いろんな出入りの業者が挨拶などに来て、カレンダーを置いていくという習慣がある。これは日本だけのものか、世界的にもそうなのかわからないけれど、とにかくそういう習慣があるのでカレンダー自体をこれまでほとんど買うことなくても大丈夫に過ごせている、というものだ。

 しかしながら、数年前からは業者の方も経費削減や、物価高騰などのあおりから、カレンダーをくれるところも年々減ってきているのも実際である。

 なので、カレンダーをいただけるというのは最近ではとてもありがたいことなのだ。

 カレンダー、持って来ましょうか? の声にぼくであれば、ありがたいです、お願いします、とただ答えただけだろうが、一緒にいた職員は、両手を胸の前に合わせて、
 「や、うれしい~!」
 と大きな笑顔で、本当にうれしそうに答えたのだ。
 それを聞いた業者の方も、
 「じゃ、2、3個持って来ますね!」
 と。
 なるほどな~。笑顔の力というものは大したものである。
 「や、うれしいわ~、部屋が何個もあるからカレンダーはいくつあってもうれしいんですよ~」

 このような、些細なことでも関係性と言うものは作れるのだろうな、と感じたひと幕だった。

 やはり、仏頂面よりも笑顔がいい。
 もちろん機嫌が悪かったり、嫌なことがあったりしたら自然と眉間にしわがいった怖い顔になってしまうのも仕方がない。
 でも、仏頂面をしていていいことなんてめったにない。
 たまには、クールな表情が魅力的な人もいるだろうけれど、それが魅力的に感じるのは、そのクールな表情の中に時折のぞく感情のかけらを見ることがあるからなのだろう、と思う。

 人と接するとき、買い物をするときや食事をするときでも、笑顔というものはなかなかに大きな力を発揮してくれるものだ。

 他人だけでなく、もちろん家族の間でも笑顔は大切。 
 使い古された言葉だけれど、笑顔は人と人との摩擦をなめらかにしてくれる、潤滑油のようなものだ。
 



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