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「詩」誰もいない部屋

いつもと同じように ノックし
懐かしさの残る ドアノブを引き
誰もいない 部屋の扉を開く

いつかの部屋が そこにはあり
いるはずのない あなたがいる

あなたは あの日のままに微笑み
あの日のままの 春の風が
あの日のままに あなたの
その柔らかな 髪を揺らす

テーブルの上には かつての
二人の姿が 木彫の
写真立ての中に 飾られている

あなたの肩に触れる 二人の影が消える
部屋は初夏へと 光の色を変えていく


※小詩集〜春〜より


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