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Photo by
osakanabunko
「詩」小詩集~春~
~終わりのない風景~
春風の 野辺にぽつりと建つ
納屋の戸は カサカサと揺れ
土の道は 陽炎の その先へと続いていく
山や野は 葉や花の 色に飾られ
陽射しが 風が それらを躍動させている
全ては ただ在るだけ
私はいる 今日もここに
~誰もいない部屋~
いつもと同じように ノックし
懐かしさの残る ドアノブを引き
誰もいない 部屋の扉を開く
いつかの部屋が そこにはあり
いるはずのない あなたがいる
あなたは あの日のままに微笑み
あの日のままの 春の風が
あの日のままに あなたの
その柔らかな 髪を揺らす
テーブルの上には かつての
二人の姿が 木彫の
写真立ての中に 飾られている
あなたの肩に触れる 二人の影が消える
部屋は初夏へと 光の色を変えていく
~春が終わる~
春の光りが 私に囁く
もう 終わりにいるのだと
青々とした葉を 風に靡かせ
下枝に残る花を 桜は密かに包み隠す
私は そっと手を伸ばす
火照った空が 私を通り過ぎる
私は藤の花の 咲く宿の庭で
誰も訪れる 者のない宿の庭で
せめて春の雨が 花を散らす雨が
少しでも 柔らかに降ることを願う
空が鎮まっていく 雲が撒かれていく
私は春の 光から解き放たれていく
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