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「詩」愛の詩(うた)

穏やかに見える海も
その底は深く
神々しく冴える満月の光さへ
深海の花園を照らす事は出来ない

私は知っている
満月の夜あなたは一人
恍惚な瞳を浮かべ
時に硝子に血を滲ませながら
砂浜を彷徨っている事を

あぁ!燈台守の私には
光を投げる事しか出来ない
ただあなたのために
帰り道を照らし続けよう

あなたが苦しみに耐えかね
悲しみに満ちた悲鳴を上げる時
私はシンフォニーを聴くように
そっと耳を傾けるだろう
そして夜空に幾千もの言葉を放ち
あなたのために神話を灯そう

あぁ!もしも許されて
あなたを強く抱きしめられたら
私はその肉や骨を砕き
美しく柔らかな魂に
そっと口づけるだろう

そして私は
あなたの父になるだろう
あなたの母になるだろう
あなたの影になるだろう

漆黒に染まる海を
いつしかあなたは自由に泳ぎ
深海の花園に辿り着く時
そこに私はいられないのだ

私は名もなき燈台守
あなたを見守る事が私の使命

今宵はなんと風が優しいのだろう
せめて私はリュートを奏で
叶わぬ愛の詩を詠い続けよう

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