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「詩」童話~門番~

宇宙の果てにある小さな星には
宇宙の外側へ抜けられる
不思議な扉がありました

その扉の前には一人の門番がいて
古い歌を口ずさみながら
人生ゲームをしていました
もうずっと長い間
ルーレットを回し続けていたので
車はたくさんの家族で溢れていました

ある日風に乗って
一人の少年がやって来ました
そして風が止むと
ルーレットはぴたりと4で止まり
門番はたちまち
キレイな銀色のスプーンに変わってしまいました
少年は驚きもせずそのスプーンを拾い
扉をゆっくりと開けました

扉の中は大きな箱庭でした
壁にはたくさんの星たちが
銀色のオリーブのように輝き
砂浜にはたくさんのチューリップが
円柱のガラスケースの中で咲いていました

一匹の象が海の中で月光に包まれ
気持ちよさそうに水浴びをしていました
少年は握りしめていた銀色のスプーンで海水を掬い
ゆっくりと口の中へ流し込みました

すると少年の心臓が
生クリームのように溶け始めました
少年が最後に思い出したのは
夕暮れに染まる橋の上を
列車が渡っていく風景でした

少年は苦しみもなく
門番へと生まれ変わりました
気が付くと門番になった少年は
不思議な扉の前にいました

宇宙の果てにある小さな星には
宇宙の外側へ抜けられる
不思議な扉があります
その扉の前には一人の門番がいて
古い歌を口ずさみながら
今日もルーレットを回し続けています

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