「詩」サボテンの花

サボテンが 花を咲かせた
「夏にはよくあることですよ」
主治医は 柔和な口調でそう言った
サボテンに付き添って 病院に行くのは
生まれて 初めてだった

待合室には 裏返しになった何匹もの
蝉たちが 診察を待っていた
「これからは静かな季節が来ますね」
一匹の蝉が 小さな声でそう鳴いた
「でもとても寂しくなります」
そう言葉を返した時 蝉はもう鳴かなかった

家に帰り サボテンを窓辺に飾った
金色の陽を浴びる サボテンの花を眺めていると
何故だか無性に レモンのかき氷が欲しくなった