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#短編小説

「詩」生きること

 六角堂の格子の隙間から  柔い春の日差しと花弁が入り来て  まだ新しい観音菩薩像に  供…

Norito Takechi
4か月前
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「詩」夏の幻影

草原の風が 二人を包み込んでいた日々 あなたは少しだけ 私に似ていた その手に触れることは …

Norito Takechi
9か月前
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「詩」春が終わる

春の光りが 私に囁く もう 終わりにいるのだと 青々とした葉を 風に靡かせ 下枝に残る花を 桜…

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「詩」誰もいない部屋

いつもと同じように ノックし 懐かしさの残る ドアノブを引き 誰もいない 部屋の扉を開く い…

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「詩」終わりのない風景

春風の 野辺にぽつりと建つ 納屋の戸は カサカサと揺れ 土の道は 陽炎の その先へと続いていく…

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「詩」十七歳の頃

窓から街を 眺めていただろうか 二流シネマのように 覚えているのは 廊下側の席の後ろ 半透…

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「詩」ジャスミン

目覚めれば 甘い香り あなたが お茶を注いでいる どれくらい 眠っていた? 時計のない部屋で あなたに 問いかける この香りもあなたも 面影だと 知りながら ~この詩を元に書いたもう一つのジャスミンもぜひ~

「詩」港の夕

立ち昇った煙が 雲になったのだろうか 古びた桟橋 出航を遂げた船の残響 私は茫然と 港に立…

40

「詩」柔らかな夜に

収穫期の 葡萄畑を 柔らかな月光が 照らす夜 あなたは 大きな樹にもたれて 恍惚を 瞳に浮かべ…

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「詩」五行詩×五

「パン屋」 精神病院の 陰に潜むパン屋 手作りの パンが並んでいる チーズの入った パイを…

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「詩」水に想う

清らかに流れる川 そっと水面を掬えば 冷水に悴む掌に 舞い落ちる雪の花 思えば 流され続けた…

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「詩」雪夜

雪夜 深遠な闇を求めて 灯りのない 公園のベンチに座り 一本の蝋燭に 炎を灯す 降る雪は …

51

「詩」粉雪の朝

一月の朝 ガラス越しのベランダで あなたは静かに 佇んでいる 音もなく 降り始めた粉雪 朽…

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「詩」再生の森

名を持たない 光だけが 差し込む 森の中で 悴む手を 私は震わせ 古い棺の 扉を開ける 朽ち果てた 亡骸の脇には 無数の虫たちが 艶めいている それぞれに皆 尊い命を抱えて 決して 重なりあうこともなく 決して 分裂することもない 美しい 魂を抱えて 幾千もの 命の灯を消し 私の掌に 降り積もる粉雪は 強く生きていけと 私に語り掛ける 死に逝くものが 胎動へ変わっていく 春にまた この森を訪ねよう 色とりどりの 花が咲くだろう だから 眠についた者たちよ 今はそのま