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「詩」五行詩×五

「パン屋」

精神病院の 陰に潜むパン屋
手作りの パンが並んでいる
チーズの入った パイを買い
紙袋を抱えて バイクで家へ
優しい甘さに 珈琲を添える


「工事現場」

重機から 白い煙が空へ昇る
アスファルトが バキバキと
捲られていき 現れる茶の土
私を導く 年老いた警備員に
一礼し 活気の場から離れる


「沈没船」

海底で眠りにつく 沈没船は
もう浮上する 時を待たない
運命も 太陽の光も届かない
重い沈黙のような 海底では
奥深い闇が 全てを包み込む 


「庭」

新しい陽射し 果実を食む鳥
少しずつ散っていく 山茶花
庭の門を 潜り来る者はなく
境界の概念を 知らぬ命だけ
溢れている 輝かしい昼の庭


「秋と冬の狭間で」

あなたは笑っていた いつも
秋の金色の 陽射しのように 
今 私の見上げる空にはただ
分厚い 冬の雲だけが浮かび
落ちるものは 古びた涙だけ


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