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酸味の壁

ふだんお店で接客していて、気づいたこと。
それは、お客さんの好みのコーヒーに以下のような傾向があるということ。

昔からコーヒーに馴染みがあり、よく飲んできた中高齢層の方は、深煎りを好み、砂糖とミルクをいれて飲む方が多い。つまりコーヒーというのは苦い飲みもので、それを砂糖とミルクでマイルドにして飲む、というコーヒー文化が根付いているのかもしれない。(わたしはちがうという方、すいません)

一方、ずっとコーヒーが嫌いだったという、比較的若い世代の方。その理由はコーヒーの苦味が好きではなかったから。でも最近、浅煎りや中煎りのコーヒーなど、苦味の少ないコーヒーを知って飲むようになったという。

さらに、世代を問わずもっともよく聞かれる声として「酸味が苦手なので、酸味の少ないコーヒーがいいです」という方。感覚的には7割くらいの方がそんな嗜好をもっている気がする。

この「酸味」という言葉。少しやっかいだな、と思う。

酸味と聞くと、梅干しや柑橘類のように、口をすぼめたくなるような味覚を想像するのかもしれない。それで、酸っぱそうだから「酸味の少ないコーヒーがいい」となってしまう。

たしかに浅煎りのコーヒーであればあるほど、酸っぱさを感じる。
ただ、豆が酸化して酸っぱいのは別として、コーヒー本来の酸味とは、口のなかを刺激するような酸味とは違う。

ワインでいうテロワールのように、コーヒーの酸味は産地の気候や土壌が育んだ、豆の個性が楽しめる味覚のひとつだ。そのフレーバーはりんごやオレンジなど、果実の風味によく例えられる。

コーヒーの味覚において酸味は大切な要素で、よくコーヒー業界で「明るい酸味」といったりするけれど、ちょっと分かりづらい表現ではないかという気がする。

だから、お客さんにコーヒーの味の説明をするときは、できるだけ「酸味」という言葉を単体では使わずに「どんな酸味なのか」を伝えるようにしている。

「青りんごのような酸味」や「グレープフルーツのような酸味」。
こういう言葉でフレーバーを伝えると、お客さんは「へぇ」と興味をもってもらえる。

コーヒーのフレーバーをお客さんに伝えることは、コーヒー屋として当然かもしれないけれど、酸味を避けたい人に酸味の価値を伝えるのは、なかなか難しい。

お客さんに「酸味の少ないコーヒーをください」といわれたら、酸味の少ないコーヒーをお出しするのは当然のこと。だけど、どんなに新しい農園のコーヒー豆が入荷しても「酸味があるからこの方の好みではない」とお店側が勝手に決めつけて紹介しないとしたら、どうだろう。

好みの味というものは、そんなにも固定化されたものなのだろうか。いつものコーヒーとは違うコーヒーを紹介し、お客さんの好みの幅を広げることも、コーヒー屋にできることではないだろうか。

実際、酸味が苦手というお客さんに、やさしい酸味のあるコーヒーをご提供すると「美味しかったです」と言う方が多い。
だから、酸味のあるコーヒーも試してほしいなと思っています。

「那須コーヒーパルキ」
☆コーヒー豆の販売とコーヒースタンドのお店☆
栃木県那須郡那須町豊原丙4140−7(※住所では正確な場所が出ません。Googlemap「那須コーヒーパルキ」と検索してください)
営業日:日・月・火
営業時間:10時〜17時

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