頼ったらいいんだなぁって、ようやく思えた
約1ヶ月半前、私は右腕を痛めてしまい、あまりの激痛で、日常生活も普段のようにはできなくなった。
原因は、娘を家から連れ出す時の抱っこだ。
その日も、生活介護施設から肢体不自由の娘を連れ帰り、いつものように抱っこで娘を車から降ろした。
駐車場から階段を上って家まで行くとき、ピキッという痛みが腕に走った。
右肩の少し下、ちょうど上腕二頭筋の付け根あたり。
「やばいかな、娘を落としてしまうかな。」と思って、さらに腕を引き上げて、全身に力を入れて抱え込み、なんとかリビングのベッドへ娘を寝かせることができた。
それからズキズキと違和感があり、翌朝には、お箸を使うだけでも激痛が走るくらいに、腕を動かせなくなってしまった。
数日すれば治るだろうと思って、なるべく右腕に負荷をかけないようにしながら、最低限の身の回りのことや娘の介護は、必死でこなした。
1週間ほどで、右手も普段通りの作業ができるほどに回復したが、娘を抱き上げることだけは、やっぱりできない。
当然、生活介護施設に連れ出せず、気付けば1ヶ月ほど家に籠もる生活になってしまった。
退屈な毎日に、娘の睡眠リズムは崩れ、表情も曇り始めていた。
私も気持ちが晴れず、ネガティブな思考に陥るような日がずっと続いた。
そんな時、いつもお世話になっている訪問看護師さんから、送迎の時、ヘルパーさんに手伝ってもらうことを勧められた。
しかし以前にも書いたように、私はそれを負担に感じてしまうタイプで、どうしても受け入れられない。
出かけられるかどうかは、直前までわからないし、いつも時間通りにはいかない。
そのくらい、娘の体調は微妙だ。
それなのに、朝から誰かに来てもらったり、待たれたりすることは、考えただけでもしんどい。
しかも、30kgの娘を抱いて何段もの階段を降りて車に乗せるのは、女性では厳しいと思う。(同性介助が基本なので、女性が来てくれると思い込んでいました)
そんな「無理」の理由をツラツラと並べて、私は看護師さんの提案をやんわりと断った。
「腕が治ったとしても、またお母さんが無理して身体を壊したら、ゆうちゃんを家でも看れなくなってしまうよ。」
長い付き合いの看護師さんだから、私の性格も気持ちも、よくわかってくれている。
それでも、このままではいけないから何とかしてあげたい、という本気の想いが、看護師さんの強い口調と泣きそうな表情からも伝わる。
理屈ばかりを並べている自分が、嫌でたまらなかった。
そんな引きこもりだった先月、勤労感謝の日は夫が休みだったので、夫に抱っこしてもらい、久しぶりに娘を施設へ連れて行った。
娘がとても嬉しそうで、施設でも、帰ってきたからも、彼女はずっとご機嫌だった。
程よい疲れで、娘は夜もちゃんと寝てくれた。
親のせいで、娘が大好きな場所へ行けないのは、やっぱりダメだな、と心から反省した。
悩んだ末、思い切って相談支援専門員さんに現状を相談すると、男性のヘルパーさんを探していただけることになった。
ありがたいことに、「送り出すとき」と「迎え入れるとき」、娘を抱っこしてくださる男性のヘルパーさんが見つかった。
でも正直、心の中にはまだ迷いがあった。
もしもヘルパーさんを利用することで私の気持ちがしんどくなったら、施設をやめることも覚悟していた。
契約のために我が家へ来たヘルパーさんは、大柄で優しそうなお兄さんだった。「くまのプーさんみたいな人だなぁ。」と思って、なんだか安心した。
実際にリビングで娘を抱っこしてもらうと、楽々と、上手に包み込むように抱っこをしてくださった。
ヨレヨレのくだびれた母に危なっかしく抱っこされるより、若いお兄さんにゆったりとお姫様抱っこされるほうが、年頃の娘も嬉しそうだ。
「娘さん、そんな、重くないですよ。」
とヘルパー兄さんは笑い、
「お母さんの負担にならないように、出かける準備をしている間は車で待っていますから。多少の時間のズレは気にしないでくださいね。それに、急なキャンセルも大丈夫ですから。」
とも言われて、少しほっとした。
行政側の事務手続きが済み、実際にヘルパーさんを利用する日が来た。
朝からそわそわ。
気が引き締まり、思った以上に早く朝の準備ができた。
ヘルパー兄さんに、初めて娘を抱っこで車へ連れて行っていただくと、私より何倍も安定して、とても慎重に上手に運んでもらえた。
やっと、心からホッとした。
しかも、施設に持って行く重い荷物まで運んでもらい、私の負担は激減した。
ヘルパーさんは、私の希望通り、必要以上に長居せず、5分ほどの滞在で帰って行かれる。
それに彼は、常に穏やかな佇まいで、一緒にいても、待ってもらっていても、全く圧がない。
中身まで「くまのプーさん」だ。
だから、私が気を遣うことは何にもない。
あらら、めちゃくちゃ楽ちんやん!
何を頑なに、嫌だとか無理だとか、私はずっと思っていたんだろう。
もっと素直に、頼ることを受け入れていたら良かったんじゃないかな。
自分しかできないとか、自分がやらなきゃいけないとか、ではなく、頼ることで、もっともっと、私も娘も世界が広がる。
そんなことを、今更ながら実感した。
ヘルパーさんの利用を始めた話を聞いた看護師さんは、「よかった、ほんとによかった。」と、涙目になっていた。
看護師さんが心から心配してくださっていたことが伝わってきて、ありがたいなぁと、感謝でいっぱいになった。
こんな優しさに触れた時、noteで出会えた大切な人たちがいつも重なる。
我が家の暮らしは、そんな、親身になってくれるあたたかい人たちの気持ちで守られている、そのことを忘れてはいけない、と思う。
今の暮らしを守るためにも、これからは「頼ること」をもう少し柔軟に受け入れていきたい。
上腕二頭筋の痛みが治っても、くまのプー兄さんに、これからも送迎を助けてもらおうと思っています。
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