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”チベット愛”がテーマの歴史小説  【ワタシの short review】

チベットで生まれ、早期からイギリス式の教育を受けるためにインドへ渡り、そして医学を学ぶためにイギリスの大学へと留学した作者。そんな作者が英語で記した今作品について、私の率直な感想は、「他国を知り、そこで自国がどう扱われているのかを肌で感じ、故郷への意識(アイデンティティ)が増殖していって、他国のそんな誤解や逆に多くの国で知られていない自国で起きている他国からの侵略を別々の問題にせず、大きな1つのチベットの歴史のテーマのもとへ集結させて、チベットの本当の姿、チベット人の生きざま、他国の干渉やバカげた妄想の現実を鮮明に映し出すことに成功した作品である」。

小説はフィクションであるのだが、作品の中の事実を"フィクションだからねぇ"として疑ってはならない。フィクションだからこそ複雑な絡み合い、整理整頓の効かない世界を1つの作品の中で完結させることができる。ただ、それは作者自身が作品を仕上げる間に設定した”ある限定された意図的な世界”ではあるのだろうが。いずれにせよ、この作品でチベットの歴史やチベット仏教の哲学、信心深く寛容で論理的思考に優れた僧侶たち、卑劣さや野蛮さ、崇高さ、献身ぶりといったチベット人たちの10人10色な性格、20世紀半ばに起こったチベットが侵略された出来事裏の一部始終、一方で仏教国チベットでキリスト教の布教活動に命を懸けた西洋人の存在など、チベットについて乏しすぎた自分の知見にある程度の生身の歴史的スケールを加えるには十分足る作品であると思う。

是非多くの方に一度、読んでいただきたい作品である。


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