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鬼が藤の花を嫌う理由を歴史から読み解く【鬼滅の刃考察】

「鬼滅の刃」において「鬼が藤の花を嫌う理由」は作中で描かれておらず、現時点では考察するしか無いので自分なりに調べることにした。

藤の花

藤は葡萄のように垂れる紫色の花で5月がピーク。

【藤について】
・ 日光が好きな陽生植物
・ 紫の藤の花言葉は「優しさ」「歓迎」「決して離れない」「恋に酔う」「忠実」など
・ 上品で可憐な姿から平安時代から貴族に愛された
・ また和歌などで美しい女性の例えとして頻繁に用いられた
・ 藤には毒がある。生で食べると頭痛や失神まで症状は様々、加熱すれば食べる事が可能
・ スピリチュアル的な観点で見ると霊力が高く、魔除けや厄除として効果を発揮
・ ツルがしっかりと長く伸びるため長寿や家運繁栄の意味を持つ
・ 語呂合わせで「不死」とされて縁起のよい花であるとされる一方、「不治の病」も連想させるため病人に藤の花を贈るのは縁起の悪い花という一面もある

藤の花のイメージはしのぶやカナヲのように美人で可憐な女性だ。

藤と鬼の共通点は程遠いものもあるし、鬼にとっては羨望の意味もあるが、そもそも鬼の藤の花嫌いの元となる伝説はこれと言ったものは見つからなかった。

鬼に「優しさ」なんて1mmも感じないし、童磨のように女好きの鬼はいるものの、鬼は老若男女関係なく人を食べる。だが死を極端に恐れる全ての鬼にとって「不死」は羨ましいはずだ。

私が「鬼が藤の花を嫌う理由」に疑問を抱いているのは、藤の花と鬼の性質で矛盾が生じているからだ。

・死を恐れる鬼にとって「不死」には肖りたいはず
・日光を好む花は藤以外にひまわり、薔薇、朝顔など多数あるので「日光が好きな花が弱点」というならば特別藤でなくても良い
・「藤は魔除の花だから鬼が寄り付かない」という設定だけでは弱すぎる

藤の花そのものと鬼の関連性は非常に低い。だとすれば日本の歴史から読み解けば何か分かるかもしれないと思った。

「鬼の藤嫌いは創作では?」という意見もネットで見られたが、作者の吾峠先生がただ綺麗だからと単純な理由で藤の花を採用するとは思えないのだ。

鬼舞辻無惨と産屋敷一家

主に鬼舞辻無惨の話になるのでまずは無惨について。

鬼の祖先である鬼舞辻夢無惨が生まれたのは平安時代(794〜1192年)。鬼殺隊の産屋敷一家と鬼舞辻無惨は同じ血筋である。

無惨は貴族であったが生まれつき体が弱く、開発中の新薬を投与しても病状は悪化、腹が立った無惨は担当医を殺してしまった。薬の効果が出始めたのは医者殺害後、体は強靭な鬼に、人間の肉を食べることにより生き延び不死の身体を手に入れた。だが無惨の鬼化は狙いではなく医療ミスだそうだ。

同時に無惨が鬼になったせいで、同じ血筋の産屋敷家の人々は短命の呪いにかかってしまった。

考察だが、産屋敷家の短命の呪いは無惨が本来の自分と同じように短い命で生涯を終えさせるためというより手段を選ばない無惨は鬼になって青い彼岸花の存在を知るまで何らかの方法(血鬼術の前身となるもの?)で同じ血筋の産屋敷家の人間から前借りで生命を吸い取り、次第に無惨は自身を不死の身体へと完成させた。そのせいで産屋敷家代々の短命の呪いは無惨が無意識のうち”呪い”となったと考える事も出来る。

藤原家の家紋

平安時代の貴族といえば「藤原家」

藤原家の家紋は藤の花がモチーフとなっており、由来は苗字に”藤”の漢字が入っているからだけではなく、藤の花が長寿で繁殖力が強く「家運繁盛」の意味も込められているそうだ。

藤原家はこの通り繁盛、江戸の武士たちもあやかり藤の家紋を愛用していたそうだ。また現代では佐藤、斎藤、藤原など「藤」の漢字が付く苗字が多数存在している。

ちなみに藤の花をモチーフにした家紋は大きく分けて2種類あり、当初は「下り藤」が主流だったが、語呂合わせで家運が”下がる”ことを嫌った家があったため、後に「上り藤」の家紋が新しく生まれたそうだ。

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平安の鬼退治伝説「酒呑童子」

そもそも平安時代から鬼が存在していたのか?と言う点で「酒呑童子」が有名だ。

地方によったり諸説あるが、元は女性たちが次々と行方不明になる事件が多発、占い師に尋ねると大江山の鬼の仕業であることが判明。そこで藤原道長に支えていた腕のいい源頼光、渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武、藤原保昌らが女性たちを救うべく鬼に立ち向かう。彼らは鬼の家の潜入に成功し、毒入り酒を鬼に飲ませ寝静まったところ拘束、首を跳ねて始末し、京に平穏を取り戻した。

この伝説から察するに、鬼が藤の花を嫌うのは直接的な要因で藤の花がトラウマになった訳ではなく、鬼が藤の家紋である「藤原家」に殺されたことがきっかけで、藤の花そのものが嫌いになったのではないだろうか?

藤の花の家紋の家

関連しそうな作中のエピソードは炭治郎、善逸、伊之助が療養のため訪れた「藤の花の家紋の家」。

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鬼殺隊員に手厚い待遇をする理由は「鬼に殺されそうになったご先祖様を助けてくれたため、一族で鬼殺隊を無償で奉仕している」そうだ。この由来は「酒呑童子」の伝説と重なる。

おばあさんの先祖はもしかすると酒呑童子に誘拐された女性たちで、その女性たち助けるために鬼を退治したのは鬼殺隊の前身とも言えるであろう源頼光率いる武士たちだったのだろう。

ちなみに「藤の家」の家紋は「下り藤」なので由緒正しき家系。実は産屋敷家と密接な関係なのかもしれない。

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(画像は公式より)

藤原家と無惨

平安時代の藤原家がモデルと仮定し「鬼滅の刃」と重ねて話をする。

平安時代から藤が用いられた和歌や書き物が多数存在しており、当時の貴族の屋敷の庭には藤が当たり前に咲いていただろうし、貴族として生まれた無惨も馴染みの花だったはずだ。

鬼が異常に藤を嫌うのは「病弱で生まれた鬼の祖先である無惨が自分を丈夫に産まなかったことを理由に藤の花が家紋の自分の家系に憎しみを抱き、最終的に藤の花そのものを嫌うようになった。その無惨の心理的要素が無意識に鬼らに代々受け継がれているかもしれない」と考えた方が藤の花言葉や性質を無理に繋げるより自然だ。

親のみではなく「家系そのものを憎む」とサイコパス的思考が出来るのはパワハラ自己中短気DV屑野郎無惨だからだ。

まとめ

【藤の花について】
・ツルがしっかりとしていることから長寿や家運繁栄の意味を持ったり、語呂合わせの「不死」として縁起の良い花とされている
魔除や厄除の意味がある
・鬼の弱点である日光が好き
【歴史的観点】
・平安時代「酒呑童子」と呼ばれる鬼退治の伝説が存在。鬼が藤原家の武士たちに殺された
・平安時代の貴族に生まれた無惨。平安時代の貴族は藤原一家のみなので無惨は藤原家の血である。病弱に生まれ死を嫌う無惨は家系ごと憎んだため、藤の花が家紋であり貴族がこぞって愛した「藤の花」そのものを嫌うようになった

ちなみにしのぶが鬼を殺すために摂取していた藤は生で食べると危険なので火を通して天ぷらなどで食べるのが主流だそうだが、だからと言って食べすぎでも体調不良を起こす。

ということはである、しのぶは任務から日常生活まで支障が出ることを分かりながらリスクを背負って自ら毒を飲み続け、命をかけてまで姉の仇を取ろうとしたのだ。

体の細部まで藤を行き渡るようにしたそうなので、内側からは藤のエキスを抽出してドリンクやサプリにしたり、外からはお肌や髪や爪をパックして藤を浸透させたりしたのかな。

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これらは全て私の考察だ。本当は地域の人々や学者が知るような深くてニッチな話が元となっているかもしれない。だけど上辺でも歴史を読み解いて何度も見て読み返した「鬼滅の刃」も少しだけ面白くなりませんか?

藤の花はどこか向こうの世界を感じるような美しさと儚さがあって大好きです。












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