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男のナイーブな所

「うわ、クッサい」
「うわ、まぶしい」
「うわ、ドラム缶」

男というのは年齢を重ねると共に
イケオジとなるか
オッサンとなるか
生物的クラスチェンジを迫られる。

何も考えずにぼーっと過ごしていたら
オジサン路線は確定的である。

髪の毛がハリケーン通過のように散り
おしぼりでワキの下を拭くようになり
ついでにお腹もポッコリ主張を始めて
枕には「お父さん」の匂いが染み付く。

まごうことなきニッポンのオジサン誕生だ。

気をつけろ!
オジサンは背後に忍び寄っている!
無論、私の背後にも…ギャアアアア!(SE)

・・・

「夫くん、くさーい」

血が凍った。
クサイ?私が?え、マジで?
なんてこった、私もとうとう岐路に立ったか。
オジサンに全力で抗い
イケオジに全力で近づこうとする時が。

「なーんてね、別にクサくないよ」

血が解凍された。
あぶないあぶない
ショックで大動脈瘤が生成されるところだった。
嫁よ、言っていいことと悪いことがあるのだぞ…

男というのは体は頑丈だけど心は脆い。
「クサイ」とか「ハゲ」とか「デブ」とか
そんな言葉を正面から喰らったら立ち直れない。

ましてや
愛するパートナーから浴びせられた時には
出家して身も心もリセットしたくなってしまう。

ここだけの話、ウチの嫁様は妙なへきがある。
基本的に私と距離が近くて
パーソナルスペースもなんのその
べったりゼロ距離まで近づいて(くっついて)から
クンカクンカと匂いを嗅ぐ癖があるのだ。
よくわからないけど落ち着くらしい。犬なのか。

「ああ、でもねえ、クサイときもあるよ~」

匂いを嗅ぐたびに感想を言ってくれるのだけど
これが正直すぎて内心ヒヤヒヤものだ。
やっぱり汗をかきやすい時期はヤバいらしい。
気を付けますシャワーを浴びます。

そんなこんなで最近もクンカクンカされてたら
嫁様は驚くべきことを言い放った。

「あのねえ、夫くんがクサくなくても
クサイって言うとき、結構あるよ」

・・・なぜ?

「夫くんがクサイって言われるとさ
めっちゃ取り乱すじゃない。面白くて」

ケラケラ笑う嫁様を見て
嬉しいのか悲しいのか、怒ったほうがいいのか
感情が激しく乱されてしまった。
たぶん嫁様以外がこんなこと言ったら
ムカッと怒ってしまうような気がする。

でも悪気がないのがよーく伝わるので
怒るというよりむず痒い気持ちになる。
今日も夫婦は面白い。
そしてたぶん私はまだクサくない。うん。

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