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マサイ族の家にホームステイ

マサイ族の青年と仲良くなった詳細↓


「家ってほんまにこの先にあるん?」

これから僕を家に招き入れようとしてくれている友人にそんな言葉を投げかけてしまうくらいには、僕は不安だった。

行く手を遮る様に目の前に飛び出した草木を両手で掻き分けながら背中を追う。少し向こうを流れる小川のせせらぎ。湿った土の匂い。どこからともなく聞こえる小鳥のさえずり。四方八方が緑に囲まれ、ここに一人で放り出されると帰り道さえ分からないだろう。ここはまさにジャングルだ。もう40分近く歩いている。

「もうちょっと」

彼はそうとしか答えない。マサイ族のもうちょっとは当てにならない。多分隣で誰かが美味しいものを食べている時にも「もうちょっと」と手を伸ばすし続けるのだろう。

そんな事を考えていると急に目の前に道が現れた。感覚は同じだった。ごめんベン。

道の両脇には露店や小さな家が立ち並ぶ。木で作られているものもあれば土やレンガで作られたものもある。道路は舗装されておらず赤茶けた土が丸出し。ここは街で仲良くなったマサイ族の青年ベンが住む近代的なマサイ族の集落。確かに山奥の村ではなく街の近くとは言っていたが、まさかジャングルを抜けたところにあるとは思っていなかった。

「ジャンボ!(スワヒリ語でこんにちはの意)」

家に着くとベンの妹が出迎えてくれた。つぶらな目がぱっちりしていて黒い肌がきめ細かい。ベンの他の兄弟姉妹たちは皆んな結婚して同じ家にはす

敷地内に小さな母屋が3つと家畜を入れている小屋が1つ。中には牛が三頭いた。鶏は10匹ほどの鶏がお馴染みの鳴き声を上げながら庭を走り回っている。

マサイ族は一夫多妻制で、3人〜4人は奥さんがいるのが当たり前。奥さん達の母屋と旦那の母屋が分けられて別々に生活しているらしい。ベンの家にも奥さんが何人か居て、子供の数は両手を使って数えていたら指が足りなくなった。

招き入れてくれた部屋の椅子に座り、ベンに教えてもらったいくつかのマサイ語で挨拶をする。少し離れた母屋の角からこちらを覗いて様子を伺っていた子供達も、「ジャンボ!」と手招きをすると、徒競走でピストルが鳴った瞬間のように一斉にこちらに向かって走り出した。

晩飯の、バナナを煮込んでサツマイモの様な味のするシチュー料理をご馳走になり、子供達と頭を叩き合って遊んでいると、ふと自分がどこにいるのか分らなくなった。日本から遠く離れた6時間も時差がある地にいる実感が湧かない。こういう感覚になる事はたまにある。

まあいいか。不思議な感覚のままベンの妹が用意してくれた熱々のミルクティーに息を吹きかけ、溢れないようにゆっくりと口に運ぶ。




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