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総執筆本数1000以上!脚本家・石森史郎先生による創作のヒント

映画・テレビの脚本数が、軽く1,000本以上を越える脚本家の石森史郎先生。
劇場版『銀河鉄道999』(1979年度の邦画興行収入第1位)、『約束』『旅の重さ』(毎日映画コンクール脚本賞)や盟友・大林宣彦監督との『青春デンデケデケデケ』(日本アカデミー賞優秀脚本賞)など多くの語り継がれる作品を手掛けられてきました。

また石森先生は映像作品だけでなく、著作物も多いです。
その中には、1985年に出版された『シナリオへの道 創作者の条件と表現の技法』もあります。

既に絶版になってしまっておりますが、この中からピックアップして創作のヒントなどをご紹介いたします。

心構え

「<ドラマを逃げずに描ききるように>これはわが師八木保太郎先生の教えでもありました。<どうしてこいつの脚本はドラマを逃げてばかりいるんだ。こんなものは脚本ではない。プロットにもなっていない!>先生のこの言葉はきびしく身に沁みています」

「判ったふりをして、<シナリオもどき>を書いている習作修行では困ります。憧憬で書くのではなくて、脚本(シナリオ)でしか自分の描きたいものは書けないのだという腰の座った姿勢をとり続けることが肝要です」

「自分の欠点を知って、欠点が露呈しないようにこまやかに神経を配って書く……これでいいものが書けないとしたらまだまだ努力が足りないと思ってください。努力も才能のうちですから」

「シナリオの一行目から創作家の素質や感性……また、若い気負いを、多少キザでもいいんです、ためらくことなく書く文字のひとつひとつにこめて発散させること……習作時代は何をやってもいいのです」

「聞けば教えて貰えるという甘えの精神でシナリオを書こうと考えるのは怠慢というよりも、創作する基礎がなっていないから、あえて言わせて頂ければ、こういう素質のひとは創作者としてダメだ、の判定を下さざるをえません」

「書けないからスランプになるのではなく、書かないからスランプになるのです。創作活動をしてお金を頂いて生活している我々は贅沢な生き方をしていると思います。それなのにスランプなんていうのはもっと贅沢がしたいと言っているのと同じではないでしょうか」

「オレの一言で、と脅迫めいた発言で新人を脅す作家には大した人物、実力者はいないと考えていいでしょう。この世界は個人の実力だけで通用するのです」

「木の根っ子にぶつかる兎を待ってその前に座り込んでチャンスの到来に望みを賭けて虚しく一生を終えてしまった愚者の物語がありますが、チャンスというものは待っていても訪れてくれるものではなく、積極的に作らなければならないのです」

「創作は自己の原体験や追体験によって生み出されるものです。それなのに忘れてしまったという性格、忘れてしまって平気でいられる性格では創作は無理です。たとえ、積み木遊びをした経験がなくても想像が出来る可能性を持っているのが人間です」

ドラマとは

「自分ではドラマを書いているのに、<ドラマになっていない>……幾ら書いてもそのように言われたり、<どうしてドラマにして書かないのだ>と叱られても迷うばかりで、目の前が真っ暗になって泣きたくなってしまう程でした」

「お金に困っている娘が母親に泣きついて借金を申し込み、ことわられて半ば諦めている処に母親がそのお金を持って来てくれる……という設定ドラマを書こうとした場合、娘を訪れた母親がハイとお金を渡してしまってはドラマにはなりません」

「ドラマ全体の大きな主題、それを細かに噛み砕いてこまやかなディテールで人間葛藤を描いたものが各それぞれのシーンです」

「長いシーンの中でテーマを言いきろうと考えず、短い幾つかのシーンで積み重ねるという構成をとることで訴えたいテーマをドラマチックに見せる……テレビドラマの脚本を書く上での工夫、創作が問われてきます」

ノウハウ

「○原宿 昼さがりのギラギラした太陽の光。
こんなふうな書き出しシナリオが多いと思いますが、私はこの一行を読んだら、二行目以下は読まないことにします。何故なら、原宿に設定して、原宿という町に照りつける太陽をどうしても書きたいのなら、原宿に照りつける太陽を創作描出して欲しいのです」

「<構成>はかくあるべきだ、<シナリオ>はこう書くべきだという規制を自分自身に課すことなく奔放に思考をひろげていました。書く上で大切なのは、自分の創作のルールを自分で生み出すこと」

「あるひとつのト書きを書きました……そのト書きがあとでそれなりの意味を持つものなら書いておく必要があります。書いておいたほうがいいというだけのなんの関わりあいにもならないト書きなら<無駄>です。書く必要なし」

「ファースト・シーンのインパクトが観る者の、読む者の興味をひきます。いかに興味深い、インパクトの強い書き出しをするか──シナリオを書く場合、まずこの点にこころくばりをしなければいけないのです」

「登場人物は、ヘラヘラとセリフを言う為に出てくるのではないのです。何故、そのシーンにその人物が出て来ているのか、ギョッとするような役割を果させているのです」

「なんのためにその人物が必要なのか、人物なのだから人間の心理を把握しなければ、その人物をト書きにどう表現していいのか、どんなセリフを言わせていいのか迷ってしまいます。これは創作者が思いつきで人物を設定したことになります」

構成

「テレビドラマだから、というような態度でテレビドラマを同次元に置いて考えるのは大間違いです。十五分ドラマ、三十分ドラマ、一時間もの、また時間帯によって語り口、つまり、構成を変えて考えなければならないのです」

「どうすれば古いものを新しく見せることが出来るだろう……それは語り口であり、ドラマの切り口です。すべて構成にかかっています」

「脚本の構成は料理のプロセスに似てるなあ、と。①材料の仕込みがあって、②その材料をあれこれ使っての調理、③料理の完成──無理にこじつけを言う訳ではありませんが序破急になっているような気がします」


……以上です。
もっと絞ってご紹介しようと思ったのですが、なかなか削れませんでした😅


■「伝説の脚本家・石森史郎 オンライントークライブ」開催レポート

■劇場版『銀河鉄道999』の脚本紹介

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