「岡村詩野音楽ライター講座」受講記~音楽批評を通して、新しい自分と出会う
2016年にSpotifyが日本でローンチしてから、音楽が再び僕に戻ってきました。
レコファンでバイトしたり、20代前半が自分の中で最も音楽を聞いていた時期ですが、就職してからはだんだんと疎遠になってきました。
もちろん気になるアーティストのCDは必ず買ったりしておりましたが、かつてのように月に10万円ぐらい使ってCDをドカ買いすることはなくなりました。
紙の音楽メディアが衰退したのも、この頃だったと思います。
ところが!
Spotifyとの出会いで、音楽生活が一変しました。
月額980円で無限の音楽が簡単に手に入ります。おまけに場所も取らない!
もはや生活の一部になり、2020年は111,424分も聴きました。日にちにすると、77日分です。
ただ、インプットするだけだと、少しもったいなくも感じていました。元来の貧乏性(?)である僕は、何かしらアウトプットしていくと膨大なインプット時間も更に有効に使えるのでは? とボンヤリ考えていました。
そんなある日、音楽ライター岡村詩野さんが、ライター講座を行っていることを知りました。
きっかけは何だったかは憶えておりません。仕事の合間にネットを巡回していたときに見つけたのでしょう。
それだけ小さなきっかけだったのです。
開催情報をみると、「2021年以降に通用する文章力と企画力」が今回の講座のテーマとのことです。
文章力はもちろん、企画力という点にも強く興味を惹かれました。
企画力は他のコンテンツ企画などに応用できそうです。
日程的にも問題なし!
全5回をZoomで展開ということで、参加のハードルも低い!
……という訳で、気軽な気持ちで申し込みました。
事前課題は「自分が特集したいアーティスト」です。
ここで少し悩みました。
オトトイさんが運営している講座なので、参加者の多くは、邦楽ロックが多いのかな?
みんなで議論するのであれば、邦楽のロックアーティストをピックアップすべきだろうか?
もしくは、アイドルとか? いや、アイドルはアーティストとは言えないのではないか……。
一旦、邦楽から離れてみよう。洋楽でも、あんまりマニアック過ぎるのは悪目立ちするかも?
講師の岡村さんは、インディーロックにも精通されているから、そっち方面か? けれど、生半可な原稿を出すとボコボコにされそうで怖い……と余計な心配も含めて、少し悩んでしまいました。
ただ、あまり奇をてらってもしょうがないかな、と思いまして、一昨年最もSpotifyで聴いたアーティストであるブリング・ミー・ザ・ホライズンをチョイスしました。
500字の軽い論考文を出して、講座の初回を迎えます。
詳しい講座内容は割愛しますが、岡村さんの本質をついた指摘に、最初から汲々となります。
気負い過ぎた文章だったため、非常に伝わりにくくなってしまっていたのです。基本的な「日本語力」にも通じる問題だと思ったので、これは本気で文章の書き方自体についても取り組まないとヤバいぞ、と感じました。
そこで、『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』という非常に手っ取り早く文章術が身に付けられそうな本があったので、買って勉強してみました。
何はともあれ、「文章をシンプルに」することが最も肝要ですね。
さて論考文を書き直して、講座の2回目です。
文章自体もだいぶシンプルになったので、これならばOKだろうと思っていたら、少し引っかかるところも出てきました。
「文章術のベストセラー100冊」の本には、「文章に余白を取って読みやすくしよう」といったことを書かれてあったので、改行も多めにしたら、逆に読みにくくなってしまったのです。
noteのようなブログメディアだと、文章を斜めに読むようなところもあるので、余白は多めの方が良いのでしょう。
けれど、論考のようなロジックをきっちり立てながら展開する文章には合いません。読んでいて思考が途中で飛んでしまうのです。
という訳で、文章のスタイルも全面的に見直していきました。
講座の方も3回目、4回目と続いていきます。
なお、あくまでも僕の体感ですが、受講3回目で受講料の元が取れました。
更に4回目では、利益が出てしまった感じもします。大変お得な講座です。(注:僕はオトトイさんの回し者ではないです!)
何しろ講師歴も長い岡村さんの熱意あふれる指摘が、とてつもなく的確なのです。
また、受講生側からの様々な質問に対しても、キレッキレッの答えが返ってきて逐一、心底納得です。
『呪術廻戦』の五条先生のような方だなとも思いました。
ライター・評論家としても「特級」ですが、講師としても「特級」の方です。
なお、岡村さんには僕が書いている文章が、少し古い感じすると見抜かれてしまいました。
確かに、僕が音楽メディアについて最も触れていたのは、20代前半です。かなり昔になります。そうしたことも、書いた文章だけで読み解かれたのでしょう。洞察力に驚きです。
ただ逆に考えると、うまく生かしていければ、そこが強みになるかもしれません。
オジサンは若者時代を経験しています。
しかし、オジサン時代を経験している若者はいません。
年齢を重ねていることが、自分にとって貴重な「資産」にもなるはずです。
ベックの初来日ライブにも行っておりますし、新宿時代のリキッド・ルームで行われたメアリー・J・ブライジのライブには2夜連続で足を運びました。
※このメアリー・J・ブライジのライブには、ゴスペラーズの黒沢さんも行かれたようですね。
講座の中で、岡村さんはWikipediaに載っているような文章ではダメ。自分のオリジナリティを出して行こうと説かれていました。
経験を資産にして、表現する。
表現方法自体を頑張ってアップデートしていけば、自分だけの文章が書けるようになるはずです。
5回目の最終回には、ライターの小熊俊哉さんと天野龍太郎さんが登壇されました。
話題は多岐に渡りましたが、特に印象深かったのは「取材の大切さ」です。さらっと読んでしまうネットの記事であっても、徹底的に調べ尽くしてから書くことは基本ですね。
ライティングのみならず、何事に対しても共通する姿勢です。
「気付き」の多いお話しばかりでしたが、ここでハプニングが起きます。
講座の最終回にも関わらず、トークが大いに盛り上がり、受講生が執筆した課題の講評時間がなくなってしまったのです。
そこで5回目はトークの回として、急遽、別日に補講の時間を設定することになりました。
「いたれりつくせり」とは、このことですね。
また補講といっていも、正規の講座回と同じレベルの「濃さ」がありました。提出された課題に対し、岡村さんから一つ一つ丁寧な講評を頂きました。
講座は、全5回で終わりだと思っていたので、少し得をした印象です。
また全ての回を受講して感じたことは、「情熱」が一番大事。けれど、「情熱」を伝える「技術」も同じぐらい大切というポイントです。
マイナーなアーティストはもちろん、既に語り尽くされたメジャーなアーティストであっても、新鮮な切り口を見つけられれば価値ある記事になります。
講座の中で、幾つかの方法論を身に付けることができましたので、何か書き物をするときは、意識してやっていこうと思います。
あと、参加者の皆さんからも大いに刺激を受けました。
素晴らしい感性と表現力に裏打ちされた論考文は、僕のお手本にもなりました。知らない音楽とも出会えましたし。
ポピュラー音楽の批評界は、明るい将来がありますね。
しかしまあ、本当に「岡村詩野音楽ライター講座」は、可能性に満ち満ちた講座でした。「自分はこんなことを考えていたのか!?」といった感じで、自分の中での再発見もありました。
また機会があれば、ぜひ受講しようと思います!
※「岡村詩野音楽ライター講座(2021年5月期)」講座生によるZINEもあります
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?