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シナリオ集『愛の不時着 完全版 (上・下)』~文字ならではの情感を伝える一冊~

【概要】
パク・ジウンのオリジナル脚本を、韓国語訳者の第一人者が翻訳した、この本でしか読めない「愛の不時着 完全版」! 感動のドラマを完全翻訳で再現、ドラマの裏側に迫ります。
https://tkj.jp/book/?cd=TD011138

『愛の不時着』のシナリオ集には、「完全版」と書名に入っています。
何が完全版なのでしょうか?

この本の中には、
「本著はドラマ『愛の不時着』のシナリオの最終稿を訳したものです」
とあります。

けれど、おそらくは実際現場で使用された最終稿ではなくて、そこから実際の映像とある程度照らし合わせて、このシナリオ集は作られたのでしょう。
ト書きやセリフ内にある「()」の動作が、かなりきめ細かく書かれています。
こうすることにより、シナリオを読み慣れていない人でも、容易にシーンを想像することが出来ますね。

上巻は「北朝鮮」編です。
セリが北朝鮮に不時着して、韓国に戻るまでのドラマです。

シナリオが手元にあると、ヒョンビンやソン・イェジンがどういう意図で演技をしているのか丸分かりになります。

例えば、1話目のヒョンビン演じるジョンヒョクが、セリをかばって門の内側に入るシーン──。

その誰かの胸に抱かれるようにして門の内側にもたれて立っているセリ。
十年寿命が縮まったような思いだったが、気を取り直し、誰?と見上げると、門の石柱の上でかすかにチカチカ明かりが消えたりしていたランプ、するとピカッ! 小さな明かりが憑く。
その明かりの下に立ち、セリを見下ろしている彼はまさにあの軍人、ジョンヒョクである!!!

ボーイ・ミーツ・ガールの定番といえば定番ではありますが、一瞬でセリの絶望的な状況が、ジョンヒョクによって救われます。
映像でも、ソン・イェジンの表情の演技が見事でした。

下巻は「韓国」編です。
「北朝鮮」編とは逆に、ヒョンビンが韓国に来て、北朝鮮に戻るまでのドラマです。
全体的な構成としても面白い作りになっていますが、韓国編の方がドラマとしては明るいかなという印象です。
特に第5中隊のチスが、韓国という先進国に迷い込んでしまった感じで面白おかしく行動します🤣

とはいえ、『愛の不時着』の根幹はメロドラマです。
情感たっぷりのセリフが満載です。

例えば、ジョンヒョクとセリの別れのシーン──

ジョンヒョク「(喉が詰まる)心から……、待って祈れば……、会いたい人に会えるかって聞きましたね? きっと会えます。(涙がこぼれる)」
セリ(泣きながらうなずく)
ジョンヒョク「愛してます」
セリ「(泣きながら)愛してます。愛してる……」

文字で読むと、ドラマの字幕や吹き替えとはまた違った感慨深さがあります。

ここのシーンは電車の中でシナリオ集を読んでいたので、涙腺が崩壊しまくりそうで大変でした。
映像ではなく文字だと、『愛の不時着』特有の情感はどうなってしまうのだろう~?と危惧していたのですが、全くの杞憂でしたね。
「完全版」と銘打たれているだけあって、とても良いシナリオ集でした!


▼作品世界に浸れる「愛の不時着展」 初日レポート

▼【番外編】『愛の不時着』にハマったおじさん2人の感想(コンテンツビジネス・ラボ)


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