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【ネタばれなし】映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』の感想

シアター・イメージフォーラムにて、ようやく映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』を観てきました。
類似する作品には、『地獄の黙示録』『蝿の王』『闇の奥』などが挙げられていて、観る前からこの作品は自分好みなはず!と期待値が膨らんでおりました。

【あらすじ】
世間から隔絶された山岳地帯で暮らす8人の兵士たち。ゲリラ組織の一員である彼らのコードネームは“モノス”(猿)。「組織」の指示のもと、人質であるアメリカ人女性の監視と世話を担っている。ある日、「組織」から預かった大切な乳牛を仲間の一人が誤って撃ち殺してしまったことから不穏な空気が漂い始める。ほどなくして「敵」の襲撃を受けた彼らはジャングルの奥地へ身を隠すことに。仲間の死、裏切り、人質の逃走…。極限の状況下、”モノス”の狂気が暴走しはじめる。

http://www.zaziefilms.com/monos/

前半の舞台は、雲が足元に見える高い山々に囲まれた山岳です。非常に美しい光景で、ポストカードにもなりそうな雰囲気もあります。環境ビデオとして、風景の映像だけでも価値がありそうです。
しかし、ここには新米ゲリラの少年・少女たち……通称モノス(猿)がいました。
彼らは、お互いを「ランボー」「レディ」「ウルフ」といった、ニックネームで呼び合っています。上官がゲリラとして育て上げるため、名前を捨てさせたのかもしれません。年端も行かぬモノスが、銃を楽しみのために乱射したりする光景は背筋が凍ります。

風景は天国のようでも、時折、無邪気な地獄が垣間見えます。

彼らの任務は、ゲリラの人質となっているアメリカ人女性の監視です。映画を観る前は、ひどいことされるんだろうなぁ~と戦々恐々していたのですが、あにはからんや。人質は丁重に扱われます。上官の命令は絶対なのでしょう。人質を傷付けたら、価値が失われますし。
モノスも、年上の人質を敬愛するような面も見せたりします。

──ところが。
事態が動き始めます。

敵もいない楽園であった山岳が攻撃されてしまうのです。
ゲリラ側の勝利に終わりますが、人質と共にジャングルへ移動します。

ご存知の通りジャングルは、身を隠せるものの宝庫です。
そして、モノスと人質の関係も……。

ここからは、実際に映画をご覧になってほしいです。
ナチュラルにネタばれになってしまいそうなので😅

あと、映画を観ながら『地獄の黙示録』との対比を考えたりもしていました。

決定的に異なる点は、カーツ大佐のような「中心」が不在なのです。

カリスマがゲリラを率いる関係性ではなく、名もない少年・少女のゲリラ兵たちは、アメーバーのような人間関係です。くっついたり離れたり。かなり混沌としています。
行きあたりばったりのように見えるのは、自分が映画の観客という客観的な存在だからでしょう。当事者は必死に生きています。

俯瞰して考えると、自分もモノス(猿)と言われている彼らと同じなのかもしれません。
「安全地帯」にいた観客の自分と、モノスが重なりあった瞬間が何度もあり、ゾクッとするような怖さがありました。



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