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【詩】Home

わたしは家なき子だった
家がなかったから

大人になってからも
帰る家をずっとずっと探していた

幼い頃 土曜の夜は映画館へ行き
暗闇のなかにいるのが幸せだった

グレタ・ガルボや
ジーン・ハーロウは
わたしの憧れの人だった

彼女たちは暗闇で
やさしくそっとなぐさめてくれた

いつしかわたしも
スクリーンの中の憧れの人に
なりたいと夢見るようになった

純白のドレスをまとい
スポットライトを浴びたときの
喜びは一生忘れない

有名になった
お金持ちになった
みんなから拍手された

うれしかった
むなしかった

虚無の彼方から
帰ってこれなくなることが
多くなった

気づいたらスポットライトの影の
部分を歩くようになった

やっぱりわたしは暗闇の中がすき
ひかりよりも熱がほしかった

明日が来るのがこわい
だから今日という日が
終わってほしくない

眠るときにまとうのはシャネルのN°5だけ
あと何回さようならを言うんだろ
わたしはやっぱり家なき子


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