投票に行かない理由
選挙が近づくと思い出す話がある。
私の知人とその娘のことだ。
ある選挙の日、彼女はお嬢さんと一緒に投票所に出向いた。
娘の方が選挙に行く年齢なので、大人なふたり。
お嬢さんは20代後半、知人は60代。
ふたりで投票に行ったのは初めてだった。
近くの中学校。ちょっとした散歩にもなる。
投票を終えての帰り道、ふとお嬢さんが言った。
「ようやく、選挙に行けた。ずっと行くの嫌だったんだ。
いじめられてたの、思い出すからさ」
そう、投票所は、彼女が卒業した中学校だったのだ。
知人は驚いた。
成人しても、娘が選挙に行きたがらないことには気づいていた。
ただ、その理由が
「投票所である中学校に行きたくないから」だとは思ってもいなかったし、
娘が中学生時代にいじめにあっていたとは、全く知らなかったからだ。
娘が中学校を卒業してから再び訪れるまで
卒業してから、10年以上の月日が流れていた。
20代の前半では、いじめの記憶が生々しすぎて足を踏み入れる気にもなれなかったのかもしれない。
娘がいじめられていたことを知らなかった ー
知人もそれなりにショックだったようだ。
いじめの経験を乗り越えたとはいえ
当時娘の苦しみに気づいてやれなかった、助けてあげられなかった罪悪感や悲しみは想像に難くない。
二人が互いにそのことを語れるようになったのはよかった、とは思うけれどね。
その後、お嬢さんは結婚し、独立して家を離れた。
投票するために、いじめにあっていた、出身校へと出向く必要はなくなった。
そして、今は、当時と違って期日前投票という制度がある。
すばらしい。
選挙のたびに、若者の投票率の低さが取り上げられる。
彼女のようなケースは、めずらしいかもしれない。
ただ
選挙よりも楽しいことがある
誰に投票していいのかわからない
投票したところで、何も変わらない…
それだけなのだろうか。
若い人たちの投票率の低さの理由は
なにかもっと違うところにあるのかもしれないと、ふと思う。
普段本人たちですら気づいていないところに。
今日も読んでくださってありがとうございます。
自分にやさしくお過ごしください。
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